2021.09.30

【建設でがんばるヒント 第2回】現場の問題を0(ゼロ)にするコミュニケーション技術 その2 建設技術コンサルタントとして活躍する降籏達生さん。主宰するメールマガジン「がんばれ建設~建設業専門の業績アップの秘策~」でも健筆をふるわれています。本連載では、降籏さんに建設業界で生き生きと働くためのヒントをご教示いただきます。第2回も初回に引き続き、現場で役立つコミュニケーション技術についてです。

文:降籏達生(ハタ コンサルタント株式会社社長)

【建設でがんばるヒント 第2回】現場の問題を0(ゼロ)にするコミュニケーション技術 その2

今回は「ライティング」と「プレゼンテーション」について解説

建設業の工事現場では、顧客、協力会社、近隣住民とのスムーズなコミュニケーションが欠かせない。コミュニケーションがスムーズに進まないと現場が円滑に進まず、問題が発生して赤字となったり、工期遅延となってしまう。


今回は、建設工事現場で必要な現場コミュニケーション5つのポイントのうち、ライティング(文章力)、プレゼンテーション(表現力)について解説しよう。

■建設工事現場で必要な現場コミュニケーション5つのポイント

  1. アプローチ 親密力(相手に近づく力)
  2. リサーチ 調査力(相手の話を聞く力)
  3. ライティング 文章力(分かりやすく明解な文章を書く力)
  4. プレゼンテーション 表現力(相手の心をつかんで話す力)
  5. クロージング 交渉力(相手のノーをイエスに変える力)

3.ライティング 文章力


ライティングとは文章力のことである。誰が読んでも分かりやすく、意味を取り違えられることのない文章を書くことが重要である。特に報告書や提案書など、その書類が担当者から上位の方に回付されるような場合、口頭による追加説明ができない。そのため、相手が誤解しないように、また相手の心をつかむ文章で書く必要がある。


文章力を高めるためには読書が最も効果的だ。毎月1冊の本を読むだけで、文章力を高めることができる。また読書の後、内容を要約したり感想文にまとめることで、書く力がさらに高まる。


良い文章にたくさん触れる(インプット)ことで、自分の書いた文章(アウトプット)の分かりにくい点、取り違えられそうな点を見つけることができる。そのことで推敲(すいこう)する能力が高まる。つまりインプットとアウトプットを繰り返すことが重要だ。


技術者が、技術報告書や技術提案書を作成するためには、「理科系の作文技術」 (木下是雄著、中央公論新社発行)を熟読することをお勧めする。

文章力は本を読んで要約や感想を書くと高まる文章力は本を読んで要約や感想を書くと高まる

4.プレゼンテーション 表現力


プレゼンテーションとは話す力のことである。特に相手の心をつかむ話し方をする必要がある。施工管理技術者は朝礼、地元説明会、報告会、施工検討会など人前で話す機会が多い。プレゼンテーションで相手の心をつかむことができなければ地元の方から反発があったり、工法が採用されなかったり、協力会社への指示が伝わらなかったりしてしまう。


プレゼンテーションで重要なのは、台本を作ることだ。台本の構成はPREPLP法がよい。

■PREPLP法

  • Point(結論)......「ポイントは~だ」
  • Reason(理由)......「なぜならば~」
  • Example(例)......「たとえば~」
  • Passion(情熱)......「私はずっと~だと思ってきた」
  • Letʼs(誘い)......「~しましょう」
  • Please(お願い)......「どうぞ~してください」


まずプレゼンテーションをする内容のポイントを話す(P)。例えば、ポイントは3つあるなどと話すとよいだろう。次にそのポイントを選んだ理由を話す(R)。さらにそのポイントを活用した具体的な事例を話すのだ(E)。その後、自分の思いを熱く語る(P)。そして相手へのお誘いを語り(L)、最後にお願いしたいことを話すのである(P)。


具体例を紹介しよう。例えば、地元説明会であれば次のような台本がよいだろう。


(P)今回の工事の特徴は3つあります。1つ目に超低騒音型機械を使うことで騒音を低く抑えます。2つ目にダンプトラックの速度を時速20km以下に抑えることで振動を防止します。3つ目に散水車を1日3回、周辺の道路を走らせることで粉塵を防止します。

(R)これらの3つのことを行う理由は、近隣の皆さんにご迷惑をおかけしないこと、無事故で現場を完了すること、そして何より今後、交通事故が起こらないために早期に道路工事を完成させることです。

(E)私は昨年、隣街にて同様の工事を行いました。今回と同様に3つのポイントに留意して行いました。その結果、近隣住民からのクレームはありませんでした。さらに竣工時に「道路が広くなり、安心して通行することができるようになりました」と感謝状までいただくことができました。

(P)それ以来私は、地元の方々の気持ちを考えた工事をすることこそが、建設技術者の使命であると考えるようになりました。

(L)私が本工事の責任者として交通事故のない道路を造るために、どのような工事の進め方が良いのか、一緒に考えて参りましょう。

(P)どうぞ、どんな小さなことでもお気軽にご要望をお聞かせいただきますよう、よろしくお願いします。

PREPLP法で心をつかむPREPLP法で心をつかむ


続いて、伝え方である。次の3つに留意したい。


1.手の位置は胸の前
手振り、身振りを含めて話すとダイナミックに伝わる。特に手は、胸の前に置き、話す内容を形容する手振り、身振りで伝えることで聴き手の視線を集めることができる。後ろ手を組んだり、腰に手を置くと、威張ったように見えてよくない。


2.雑音をなくす
つい「あの」「ええ」と話してしまうことが多いが、これは雑音である。次に何を話そうかと悩んでいる時に出がちだ。雑音をなくすためには、口を閉じて考えるようにしよう。また、「朝礼の方(ほう)行います」「道路延長は100mになります」はアルバイトが使いがちなバイト敬語であり、「朝礼を行います」「道路延長は100mです」と言い切りたい。


語尾によけいな言葉をつけるのも雑音だ。「安全な作業をしたいと思います」「説明をさせていただきます」などのムダな言葉は使わず「安全な作業を行います」「説明します」と簡潔に話そう。


3.相手の顔を見ながら話をする
手持ち資料やパワーポイント画面などを見ながら話す人がいるが、これでは聞き手にお尻を向けていることになり、相手の心をつかめない。会場全体に視線を配り、会場にいる全員と目を合わせて話すことを心がけたい。そのためには、「正面」「左」「右」「正面」「左」「右」のように視線を移すことを意識しよう。


この3つは、明日からすぐに実践できることだ。ぜひ実践して、聞き手の心をつかんで話してほしい。


次回は、最後のポイントとなるクロージング(交渉力)について解説しよう。お楽しみに。


※記事の情報は2021年9月30日時点のものです。

【筆者紹介】
降籏 達生(ふるはた・たつお)さん
降籏 達生(ふるはた・たつお)
ハタ コンサルタント株式会社代表取締役。1961年生まれ。大阪大学工学部土木学科卒業後、株式会社熊谷組に入社。トンネル工事、ダム工事、橋梁工事に従事する。1995年阪神淡路大震災を目の当たりにして開眼。ハタコンサルタント株式会社を設立し、技術コンサルタント業を始める。実績は建設技術者研修20万人、現場指導5000件を超える。「がんばれ建設~建設業専門の業績アップの秘策~」は読者数20,000人、日本一の建設業向けメールマガジンとなっている。
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