2021.08.27

【建設でがんばるヒント 第1回】現場の問題を0(ゼロ)にするコミュニケーション技術 その1 建設技術コンサルタントとして活躍する降籏達生さん。主宰するメールマガジン「がんばれ建設~建設業専門の業績アップの秘策~」でも健筆をふるわれています。本連載では、降籏さんに、建設業界で生き生きと働くためのヒントをご教示いただきます。1回目は、現場で役立つコミュニケーション技術についてです。

文:降籏達生(ハタ コンサルタント株式会社社長)

【建設でがんばるヒント 第1回】現場の問題を0(ゼロ)にするコミュニケーション技術 その1

現場で役立つコミュニケーション技術


建設業の工事現場では、顧客、協力会社、近隣住民とのスムーズなコミュニケーションが欠かせない。コミュニケーションがスムーズに進まないと現場の作業が円滑に進まず、問題が発生して赤字となったり、工期遅延となってしまう。


ここでは建設工事現場で必要な現場コミュニケーション5つのポイントを紹介しよう。5つのポイントは次のとおり。

  1. アプローチ 親密力(相手に近づく力)
  2. リサーチ 調査力(相手の話を聞く力)
  3. ライティング 文章力(分かりやすく明解な文章を書く力)
  4. プレゼンテーション 表現力(相手の心をつかんで話す力)
  5. クロージング 交渉力(相手のノーをイエスに変える力)

それでは、各ポイントについて細かく説明しよう。

1. アプローチ 親密力

アプローチ


アプローチとは相手に近づき、早期に親密になることができる能力である。ゴルフでピンに寄せることをアプローチというが、まさに相手に近寄る手段がアプローチである。とりわけ建設業の工事現場では、初めて出会う人と仕事をすることが多く、距離をとって接することで工事運営に支障が起きることが多い。では、アプローチ力を高めるためには何が必要か? 以下に列挙する。


●雑談力

アプローチの能力を高めるために必要な能力の1つが雑談力だ。雑談力とはどうでもよい話を、相手と交わすことができる能力である。


例えば近隣住民に対して工事の説明をする際、いきなり工事の説明をするのではなく、「お庭のお花きれいに咲きましたね」などという言葉を挟んだ後、本題に入る。また、発注者と検査に向かう際、いきなり検査を始めるのではなく、「昨日はジャイアンツ勝ちましたね」などと相手の趣味に応じた話をすることで和んだ状態で検査をすることができる。つまり雑談は人と人との潤滑油である。


ではどうすれば雑談力を高めることができるのか。これは練習しかない。例えばタクシーに乗ると運転手に声をかけるのだ。「今日は暑いですね」「コロナの影響はありますか」などと話しかけることで、雑談力を高めることができる。またエレベーターに乗った際、押しボタンの前に立った場合、後から入ってきた人に対して「何階で降りられますか」と聞いたり、もしくは「○階を押していただけませんか」などと話しかけることも雑談力を高める手法である。


●身だしなみ

アプローチ力を高めるために身だしなみは重要である。作業着を着ている場合であってもボタンを全て留めること。作業着の前面、袖口等ボタンが付いているところはきちんと留めた後、相手と接するようにする。
また胸ポケットにたくさんのものを入れ過ぎないことも重要だ。コンベックス、三角スケール、スマホなどたくさんのものが胸ポケットに入っていて、作業着が斜めに傾いている人を見かけることがある。これはいかにもみっともない。
地元説明会など重要なプレゼンテーションの前には、ズボンにアイロンをかけて折れ目を付けることなどの気を使いたい。


●五まめ

五まめとは5つのことをまめに行うことである。


まず①出まめである。できるだけ相手に顔を見せるということである。例えば報告書を届ける際、1度に届けるのではなく、2度、3度に分けて届けることで、相手にまめな印象を与えることができる。


次に②筆まめである。ワープロ打ちをすることが多い中で、自分の名前や挨拶文など、一部でも手書き文字があると、真剣さや温かさを伝えることができる。また工事竣工時の感謝の気持ちを、協力会社など関係者に完成写真と共に手書きの葉書にメッセージを書いて送るのも効果的だ。


③電話まめも重要である。相手に声を聞かせることで安心感を伝えることができる。文章で書くと冷たく感じる場合でも、声で説明をするとニュアンスが伝わりやすい。メールを送った後、電話で到着確認したり、詳細説明を加えることも「電話まめ」である。また当然のことではあるが、電話の着信履歴があった場合に、すぐに折り返すことは社会人の常識である。


次に④メールまめだ。メールは受信後24時間以内に返信をしよう。またメールは簡単に送れるからこそ丁寧に書く必要がある。そっけないメールの文章から、相手は冷たく感じ取ってしまうことがある。そのため序文(季節の挨拶など)、本文(伝えたいこと)、結文(相手を気遣う言葉)の3段階に分けて書くことが重要である。


最後に⑤世話まめだ。「世話まめ」とは相手が困っているときに手を差し伸べることである。「大丈夫ですか」「お手伝いしましょうか」「力になりましょうか」などと声をかけるのが良い。また誕生日やお祝い事の際にプレゼントすることも、世話まめである。プレゼントをせずとも、電話や葉書1枚送るだけで相手は喜ぶであろう。


●いい顔

アプローチの能力を高めるためには、いい顔をしていなければならない。いい顔とは、笑顔というだけではなく、相手を惹きつける表情をしているということだ。例えばオリンピック競技のスタートラインに立つ選手のような、前向きで意欲あふれる表情である。やる気に満ちた表情は相手の気持ちを惹きつけて、距離を近づけることができる。特に朝礼にはいい顔で臨みたい。


2. リサーチ 調査力

リサーチ


リサーチとは相手の気持ちや状況を知ることで、相手の話をよく聞く力だ。相手の話をよく聞くためにはあいづち、うなずきが欠かせない。あいづちを打つ場合は、「はひふへほ」を用いるとよい。相手が話した後「はぁー、ひぇー、ふーん、へぇー、ほぉー」とことばをつなぐのである。またうなずきも重要だ。できるだけ大きくうなずく方が相手に「あなたの話を聞いています」という気持ちが伝わりやすい。上を見て、その後下を見る位の大きな動作が相手に伝わるうなずき方である。


相手の話をよく聞くためには質問が重要だ。言葉数が少ない相手には、上手に質問をすることで話を引き出すことができる。上手に質問することができる能力を質問力という。質問には大きく3段階ある。


1段階目は、「はい、いいえで答えられる質問」である。
例えば、職人に対して「現場で困りごとはないですか」「工程は守れそうですか」などの質問である。これは最も答えやすい質問だ。


2段階目は「いつ、どこ、誰」を聞く質問である。
「現場で困りごとはないですか」の質問に「はい、器具をうまく取り付けられないんですよ」と答えた場合、「いつから具合良くないのですか」「どこが、合わないのですか」「誰か他の人にも相談しましたか」などと聞くと「昨日からです」「交差箇所です」「親方に話しました」などと容易に応えることができる。


3段階目は「なぜ、何、どのようにして」である。
「なぜ、うまく取り付けられないのだと思いますか」「何を合わせれば良いでしょうか」「どのようにして施工すれば良いですか」などと聞く。これはかなり掘り下げた質問になる。いきなりこの3段階目の質問をすると、「分かりません」などと言われてしまう。1段階、2段階と順を追って聞くことが重要だ。


ポイント3以降は、次号にて解説しよう。お楽しみに。


※記事の情報は2021年8月27日時点のものです。

【筆者紹介】
降籏 達生(ふるはた・たつお)さん
降籏 達生(ふるはた・たつお)
ハタ コンサルタント株式会社代表取締役。1961年生まれ。大阪大学工学部土木学科卒業後、株式会社熊谷組に入社。トンネル工事、ダム工事、橋梁工事に従事する。1995年阪神淡路大震災を目の当たりにして開眼。ハタコンサルタント株式会社を設立し、技術コンサルタント業を始める。実績は建設技術者研修20万人、現場指導5000件を超える。「がんばれ建設~建設業専門の業績アップの秘策~」は読者数20,000人、日本一の建設業向けメールマガジンとなっている。
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