2023.07.12

自分に合った天気予報のWebサイトを見つけよう【建設現場で役立つ!天気の読み方④】 建設現場の天気の変化をある程度予測できるようになると、防災対策やスケジュール調整に役立ちます。この連載では「建設現場で役立つ!天気の読み方」と題して、"空の探検家"で気象予報士でもある武田康男(たけだ・やすお)さんに、天気を予測する方法を解説いただきます。第4回は天気に関する情報を分かりやすく得られるWebサイトについてです。

文:武田 康男(空の探検家、気象予報士、空の写真家)

自分に合った天気予報のWebサイトを見つけよう【建設現場で役立つ!天気の読み方④】

頻繁に利用するからこそ、天気予報のWebサイトは自分に合ったものを選ぼう

今日や明日の天気はもちろん、1週間後や数時間後の天気がどのように変わるのかを知りたい場合、天気予報のWebサイトを頻繁に利用している方は多いと思います。頻繁に利用するからこそ、自分に合った天気予報のWebサイトを選びたいですよね。そこで今回は、天気についての情報を分かりやすく得られるおすすめのWebサイトとその特徴についてご紹介します。自分に合ったWebサイト探しの参考にしてください。




基本情報は気象庁のホームページでチェック

気象庁ホームページの「防災情報」のページ(出典:気象庁)気象庁ホームページの「防災情報」のページ(出典:気象庁)


天気の情報を知るWebサイトとして、まずは気象庁のホームページを紹介します。トップページから「防災情報」→「天気予報など」項目内の「向こう一週間」をクリックし、表示された日本地図から地域を選ぶと、その時点で発表されている地域の詳しい予報を見ることができます。


気象庁が発表している「明後日までの詳細」(出典:気象庁)気象庁が発表している「明後日までの詳細」(出典:気象庁)


「明後日までの詳細」では、2日先までの天気に加えて、気温や6時間ごとの降水確率などの予報が見られます。これらは、気象観測データをもとにコンピューターが計算したものを精査した情報で、信頼度が高いです。


降水確率とは「指定された時間帯の間に1mm以上の降水がある確率」のことで、ここでは6時間ごと、10%刻みの数字が表示されています。「1mm以上の降水」とは、雨が流れなければ深さ1mm以上の水がたまる量(雪の場合はおよそ1cm以上の積雪)のことを指します。


例えば降水確率が60%の場合は、「そのような予報を100回発表するとそのうちの約60回で対象時間内に1mm以上の降水がある」ということです。降水確率が30%以上になると、雨を心配して傘を持つ人が多いです。傘が要らないような弱い雨は含まれず、雨の強さは示していません。


気象庁が発表している「週間予報」(出典:気象庁)気象庁が発表している「週間予報」(出典:気象庁)


「明後日までの詳細」の下には、同じ地域の週間予報もあり、7日先までの天気予報が見られます。ここで注目したいのが「信頼度」という項目です。これは、3日後以降の降水の有無について「予報が適中しやすい」ことと「予報が変わりにくい」ことを示す情報で、A・B・Cの3段階で表されます。Aの予報は確度が高く、Cはこれから予報が変わる可能性が高い、ということになります。これらの情報は、気象予報士が独自に予報を出す際に参考にしています。ちなみに2日後以降は、カッコ内に予想気温の幅が示されており、降水確率は6時間ごとではなく1日ごとで表示されます。


気象庁が発表している「雨雲の動き(ナウキャスト)」(出典:気象庁)気象庁が発表している「雨雲の動き(ナウキャスト)」(出典:気象庁)


また、1時間先までの雨の予報をより詳しく知りたい時は、「雨雲の動き(ナウキャスト)」が便利です。ナウキャストはトップページの「防災情報」から「天気予報など」項目内の「雨雲の動き」をクリックすると見られます。地図上に過去3時間の雨雲の動きと、1時間先までの5分ごとの動きの予報が表示されるもので、その時点の雨の状態から推定されているため、かなり信用できます。黄色(1時間当たり20mm以上の強い雨)のところでは、屋外作業が困難になる心配があり、赤色(50mm以上の非常に激しい雨)の場合は危険を伴うでしょう。もしそのような雨雲が近づいてくる予報があったら注意しましょう。




独自の天気予報を提供している団体や企業のWebサイト

気象庁のほかにも、さまざまな団体や企業が天気予報を発信しています。気象庁とは違う形で分かりやすい情報を提供しているので、複数のサイトを見比べて自分に合うものを見つけるのもよいでしょう。



■1時間ごとの予報を手軽にチェックできる「tenki.jp」

「tenki.jp」が発表している1時間ごとの天気予報(出典:tenki.jp「千代田区の1時間天気」)「tenki.jp」が発表している1時間ごとの天気予報(出典:tenki.jp「千代田区の1時間天気」


一般財団法人日本気象協会および株式会社ALiNKインターネットが運営しているWebサイト「tenki.jp」では、気象庁のホームページでは見ることのできない、1時間ごとの天気、気温、降水確率、降水量、湿度、風向、風速を予報する「1時間天気」が見られます。2日先までの1時間ごとの予報を一目で確認することができ、かなり便利です。iOS、Androidそれぞれのスマートフォン(スマホ)アプリもあり、「1時間天気」に加えて、雨雲レーダーや雷レーダーも見られます。気象予報士が執筆したコラムなども、会員登録なしで手軽にチェックできるため、多くの人に利用されています。



■狭い範囲の予報を見るなら「ウェザーニュース」

独自の天気予報を提供している「ウェザーニュース」(出典:ウェザーニュース)独自の天気予報を提供している「ウェザーニュース」(出典:ウェザーニュース


株式会社ウェザーニューズが展開している「ウェザーニュース」は、衛星や気象レーダーなどの独自に整備した観測機器と、全国にいる一般のWebサイト会員から届いたデータを生かして、気象庁よりも範囲の狭い特定の地域と時間の天気予報を提供しているという特徴があります。


iOS、Androidそれぞれのスマホアプリもあります。会員登録すると、交通情報やレジャーに関する情報などが載っている会員限定ページを閲覧できるほか、自分の居住エリアなど特定の地域を設定してトップページにその地域の予報を表示することもできます。



■雨の強さや降る範囲の予想に便利な「SCW」

「SCW」では、雨量に加えて雲量をチェックできる(出典:SCW)」「SCW」では、雨量に加えて雲量をチェックできる(出典:SCW)」


実はテレビなどで普段目にする天気予報では、雲が空全体の8割まであっても「晴れ」といい、快晴なのかどうかまでは分かりません。また、「雨」の予報や「降水確率」では、雨がどの程度の範囲で、どのくらい強く降るのかまでは分かりません。


雨や雲の量・範囲についてより詳しく知りたい時には、「SCW」というサービスが便利です。気象庁の気象予測モデルをスーパーコンピューターで計算した予測値をもとにした情報が閲覧でき、気象庁の予報官や気象予報士が天気予報を作成するための基礎資料にもなっています。


右下にあるメニューで「予測」を選び、「雨量・雲量」をクリックすると、1時間ごとの雨と雲の量の予報を地図上に表示してくれます。「予測」の上のボタンは表示される範囲を設定するもので、「詳細」が分かりやすいです。画面左側にある「Precipitation」が雨量を示しており、紫(雨量が少ない)~赤(雨量が多い)という色分けになっています。同じく画像左側にある「Total Cloud Cover」は雲量を表しており、黒(快晴)~灰色(雲の量が多い)という色分けです。例えば建設現場がある地域で雨の予報が出ていた場合、その雨がどの程度の強さなのか、雨がどのくらい続くのかを知りたいときに、これらの情報をチェックするとよいでしょう。


「雨量・雲量」のほかにも、「気圧・風速」「気温・湿度」「波浪」の情報を確認でき、目的の場所の気温の変化や風の強さを予想する際は参考になります。気象庁のデータを利用しているため、2日後くらいまではかなり当たります。また、「詳細」から「広域264」に変更すると、10日先までの広域の予報を表示することもできますが、先になるほど変わりやすいです。


観測や撮影で快晴の予報を知りたい時にとても役立つので、私自身、今回ご紹介したWebサイトの中で最もよく利用しています。



■風の強さと流れが視覚的に分かる「Windy.com」

風の強さや流れに加えて、4つの気象サービスの予報を比較できる「Windy.com」(出典:Windy.com)風の強さや流れに加えて、4つの気象サービスの予報を比較できる「Windy.com」(出典:Windy.com


気象庁の予報官や気象予報士が天気を予報する時には、海外のデータも参考にします。それらは「Windy.com」というWebサイトにまとめられ、風や雲などたくさんの情報が表示されています。


地図上で調べたい地点を右クリックすると出てくる「この位置の予報」から、3時間ごとの天気、気温、雨量、風速、風向の予報を数日先まで確認できます。風の流れが視覚的に分かるため、現場付近でどの程度の風がどこから吹いてくるのかを知る際に利用するとよいでしょう。等高線が引かれた詳しい地形図で、標高に応じた天気が分かるため、登山家の方によく利用されています。


またやや専門的にはなりますが、「この位置の予報」の画面下部にある「比較」をクリックすると、該当地域の天気予報について「GFS(アメリカ海洋大気庁の天気予報)」「ECMWF(欧州中期予報センターの天気予報)」「ICON(ドイツの気象サービスによる予報)」「METEOBLUE(スイスの気象サービスによる予報)」という、4種類の予報を比較することができます。iOS、Androidそれぞれのスマホアプリもあるため、海外の各気象サービスの精度や特性を踏まえた予報を手軽に確認でき、より詳しく自分なりの予報が立てられるようになります。




気象庁のホームページを基本として、さまざまな情報を見比べよう

天気予報には「絶対に正しい」というものがありません。利用する人が、より当たる可能性のある、最新の情報を探す必要があります。今回紹介した無料のサービス以外にも、狭いエリアの詳しい天気予報を有料で提供している、民間の気象情報会社によるサービスもあります。気象庁のホームページを基本に、さまざまなサービスを見比べて、自分に合ったWebサイトを見つけてみましょう。


次回は、天気図をもとに風の強さや向きを予想する方法をご紹介します。


※記事の情報は2023年7月12日時点のものです。

【PROFILE】
武田 康男(たけだ・やすお)
武田 康男(たけだ・やすお)
空の探検家、気象予報士、空の写真家
1960年、東京都生まれ。東北大学理学部卒業後、千葉県立高校教諭(理科/地学)に。2008~10年、第50次南極地域観測越冬隊員を経て、高校教諭を辞し、2011年に独立。"空の探検家"として活動。現在は大学の客員教授や非常勤講師として地学を教えながら、小中高校や市民講座などで写真や映像を用いた講演活動を行う。空の魅力を伝えるために、さまざまな大気の現象を写真や映像に記録して書籍やテレビなどに提供。2021年に放送されたNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」にも空の映像を提供している。
テレビ出演:「気象予報士も驚いた? 摩訶ふしぎ空の大図鑑」(BS-TBS)、「富士山 The Great SKY」(BSフジ)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「教科書にのせたい!」(TBS系)、「体感!グレートネイチャー」(NHK)など。
著書:「天気も宇宙も!まるわかり空の図鑑」(エムディエヌコーポレーション)、「ふしぎで美しい水の図鑑: 水のさまざまな表情をたのしむ」「富士山の観察図鑑 - 空、自然、文化 -」「楽しい雪の結晶観察図鑑」「虹の図鑑」「今の空から天気を予想できる本」(緑書房)、「一生に一度は見てみたい 空の見つけかた事典」(山と渓谷社)、「雲の名前 空のふしぎ」「不思議で美しい『空の色彩』図鑑」(PHP研究所)、「武田康男の空の撮り方: その感動を美しく残す撮影のコツ、教えます」(誠文堂新光社)、「世界一空が美しい大陸 南極の図鑑」(草思社)、「空の探検記」(岩崎書店)ほか多数。

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