2025.12.12

2025年度グッドデザイン賞を受賞! 「根こそぎ切るソー」 2013年に誕生。アクティオの自社開発商品「根こそぎ切るソー」が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2025年度グッドデザイン賞」を受賞した。老朽化した街路樹の再整備が進む中、作業の効率化と安全の確保、環境への配慮を実現するバックホーアタッチメントとして期待が高まっている。

2025年度グッドデザイン賞を受賞! 「根こそぎ切るソー」

街路樹伐根作業が抱えるさまざまな課題

日本の道路や橋梁、トンネルといったインフラは、高度経済成長期に急ピッチで整備された。それから50年以上が経ち、これらインフラの劣化が顕著になっている。


街路樹も例外ではない。日差しを遮り、排ガスや騒音の軽減、ヒートアイランド現象の緩和などの効果があり、さらに自然の緑があることでやすらぎを与える街路樹。排ガスを浴び、周囲をアスファルトやコンクリートで固められ、下には各種配管が埋設された過酷な環境のため、見た目には問題がなくても、内部が空洞化するなど、倒木しやすい街路樹が増えているのだ。


劣化した街路樹は、安全確保のため撤去や植え替えの必要が出てくる。枝や幹を伐採し、残った切り株を処理することになるが、ここで厄介なのが伐根だ。野山の樹木と異なり、街路樹はすぐそばまで車道や歩道のアスファルト、コンクリートが迫っている。


街路樹を伐根する従来からの一般的な工法は2通りある。


1つ目は「チェーンソー工法」だ。伐採の際に街路樹を2~3mほど切り残し、クレーンで街路樹を吊り左右に振りながら、幹の周囲をバックホーなどで掘り、横に張った根をチェーンソーで切断する。この作業を繰り返しながら、切り株を吊り上げる。


2つ目が「スタンプカッター工法」だ。切り株を抜くのではなく、カンナで削るように切り株の表面をスタンプカッターで削っていくわけだ。地面から300mm下まで削ることができるため、見た目では切り株がないように見えるが、完全に伐根できる工法ではない。


どちらの工法にも、さまざまな課題がある。チェーンソーやスタンプカッターは刃が高速回転しながら切ったり削ったりするため、どうしても木くずが飛散する。歩行者に当たらないように養生を行う作業員が必要となり、歩行者が近くを通行する際は作業を中断しなければならない。交通誘導員も多くの場合、複数人必要だ。


このほか、エンジン音が大きいため騒音トラブルが起きやすい、バックホーで切り株を無理やり掘り起こそうとすると、周囲のアスファルトやコンクリートを破損しかねないといったリスクもある。




伐根作業を大幅に効率化する「根こそぎ切るソー」

こういった課題を解消するため、「根こそぎ切るソー」の開発がスタートした。


最初に着手したのが、街路樹伐根に必要な情報収集である。「どんな木が街路樹に多いのか」「その木の硬さ」「根の張り具合」「街路樹が植えられているスペース」などを徹底的に調査。その結果、切り株をくり抜くホールソー型のバックホーアタッチメントの開発に至ったわけだ。


ホールソーのサイズは、街路樹が植えられているスペースや根の周りを基に外径704mm、ストローク900mmとした。切断する刃については、石や不燃物なども根の周りに埋まっている可能性があるため、木工用では刃こぼれする可能性が高い。そこでさまざまな刃を試した結果、プラスチックのリサイクル裁断などで使用されるビット刃を、木工用の硬度にして採用した。


街路樹が植えられているスペースや根周りを基に、外径704mm、ストローク900mmのホールソーを開発


ビット刃の向きにも工夫がある。木材や金属、樹脂などに円形の穴を開ける工具、ホールソーの刃は、全て垂直方向に向いているのが一般的だ。これに対し、根こそぎ切るソーの刃は内・外・中の3方向を組み合わせて使用する。開発当初は垂直方向、つまり中だけだったが、3方向にすることで切断面に約10cmの隙間ができ、最後にバックホーで根を掘り起こす際、バケットの爪が入りやすくなるようにしているのだ。


ビッド刃は内・外・中がワンセットで、外径704mmのホールソーには計9個(3セット)取り付けられている




静かに、木くずが飛び散ることなく伐根

アクティオは、「森林・林業・環境機械展示実演会」といった林業関係のイベントに出展する際、根こそぎ切るソーを頻繁に展示している。ホールソーを回転させる様子などの実演は行っているが、伐根作業の実演は状況的になかなか難しい。しかし、2025年11月6日に開催されたお披露目会では、報道関係者に根こそぎ切るソーへの理解をより深めてもらうため、実際に伐根作業を行った。


根こそぎ切るソーによる街路樹伐根の新工法は、次のようなものだ。


① 街路樹を伐根する際は、できるだけ地面の近くで幹を切断


② センター固定ピンを切り株に固定し、ホールソーを安定させる


③ 固定している切り株が揺れて不安定になったら、回転切断を終了


④ 別途用意したバックホーを用いて根を掘り起こす



伐根作業を間近で見るとまず、特徴的なその静かさに気づく。切削箇所が地中にあり、ホールソーは高速回転ではなくゆっくりと回って切り進めるため、根を切っている音はほとんど気にならない。バックホーのエンジン音が聞こえるくらいだ。地中で切ることにより切りくずが周囲に飛び散らないので、街路樹を伐根する際、作業場所の周囲を囲むといった養生も不要である。


作業の安全性が高いのも大きな利点で、危険を伴う法面での伐根にも有効だ。作業面積は切り株の周囲に限定されるため、至近距離にコンクリートブロックや道路標識、建物がある場合に頼もしいツールとなる。作業員もバックホーオペレーター1名と安全担当者1名、最少で合計2名に抑えられる。作業時間もチェーンソー工法の数分の一に短縮できる。


埼玉県加須市で開催されたお披露目会の質疑応答では、参加した報道関係者から熱心な質問が飛び交った。


お披露目会では実演のほか、座学や質疑応答も行われた


街路樹の維持管理は各自治体が行っており、根こそぎ切るソーのような新しい機械、新工法を採用してもらうためには、工事単価(機械費、人件費)が分からないと発注できないという課題がある。そこでアクティオは、発注する自治体や施工会社に協力してもらい、施工実績を重ねた結果、東京都が発注する枯損木(こそんぼく)伐根の施工に対して、円筒形回転刃による機械施工工法として正式に採用されている。


これにより、小口径~大口径までの街路樹施工価格(歩掛:ぶがかり)が公示され、他県の地方自治体が発注する場合でも、東京都建設局公園緑地部の歩掛を参考に公示価格を設定することができる。今後は、この事実を広く周知することで、根こそぎ切るソーのレンタル需要が高まり、安心・安全に街路樹伐根作業が行われることを期待したい。


根こそぎ切るソーの開発を担当した、アクティオ 技術部の小林宏専任部長(中央)



▼根こそぎ切るソー



▼2025年度グッドデザイン賞受賞記念 根こそぎ切るソーお披露目会


※記事の情報は2025年12月12日時点のものです。


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〈ご参考までに...〉

根こそぎ切るソー(アクティオ公式サイト)

根こそぎ切るソー グッドデザイン賞特設ページ(アクティオ公式サイト)

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