アクティオクオリティ
2024.11.05
九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良工場【前編】少数精鋭の整備部門 2023年10月、南九州エリアにおけるレンタル機械の整備、デリバリーの迅速化を図るため、九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良(あいら)工場が運用を開始した。2016年5月から運用を開始している九州テクノパーク統括工場 筑後工場(福岡県)と合わせ、整備工場・研究開発の場として、さらには人材育成や災害時の機械・機材供給基地、地域社会とのつながりや防災拠点としての役割も果たす重要な施設だ。2回にわたり、九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良工場を紹介したい。
鹿児島市のベッドタウンとして発展する姶良市
鹿児島県のほぼ中央に位置する鹿児島県姶良市。市内を九州自動車道、JR日豊本線が通り、交通の便が良いため、隣接する鹿児島市のベッドタウンとして発展している。
九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良工場は、九州自動車道の姶良ICから数分の場所にある。鹿児島市内まで一般道でも30分程度で、鹿児島空港も近いため、交通の便は至極良好だ。
県道57号線からサインに従い工場内へ。敷地内を流れる思川(おもいがわ)にかかる「光人橋」を渡る。背後には切り立った山肌が迫っており、手前にある鹿児島姶良工場の近代的な外観とのギャップが印象的だ。
筑後工場と連携して効率アップ
まずは九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良工場の概要を中尾圭介工場長にうかがった。
中尾「鹿児島姶良工場の総敷地は48,500m2(14,653.10坪)で、東京ドームよりも少し広い敷地面積があります。メインとなる工場棟のほかに、エンジニアリング事業部 南九州出張所が使用している建材棟もあります。屋外には橋型クレーンが2基設置してあり、ICT建機や林業機械、軌陸車のトレーニングフィールドもあります」
鹿児島姶良工場がカバーするエリアは、鹿児島県、宮崎県、熊本県の一部。また島しょ部の対応も多くなってきている。南九州は土木関係の案件が多いため、バックホーなどの重機、道路機械の需要が高い傾向にあるという。
これまでは九州テクノパーク統括工場 筑後工場で九州全域の機械を整備していた。鹿児島姶良工場が完成したことで、九州におけるレンタル機械の整備面での運用はどう変わったのだろうか?
中尾「これまで南九州には工場がなかったため、機械は基本的に営業所内で整備し、手に負えない機械は外注に出すという動きが一般的でした。今後は整備を鹿児島姶良工場に集約し、機械の生産性を上げ稼働率をどんどん上げていきたいと考えています。新規採用したスタッフの技術レベル底上げも図り、いち早く体制を整え、早期に軌道にのせるべく、日々邁進しています」
効率を上げるには、筑後工場との連携も重要になってくる。
中尾「鹿児島姶良工場にない完成品の機械は、筑後工場から取り寄せています。逆に、大型建築現場から筑後工場に大量に返却された機械を、鹿児島姶良工場で整備したりもしています」
中尾工場長はアクティオのグループ会社である株式会社ソクトで業務*1畑を一筋に歩んできた後、鹿児島姶良工場の工場長に抜てきされた。
中尾「ソクト時代にいろんな意味で大きな転機になったのが、APS道場*2への入門です。8カ月間、アクティオの三重いなべテクノパーク統括工場で、"カイゼン"のなんたるかを徹底的に叩き込まれました。2020年に卒業してソクトに戻った翌年にソクトの多久TS工場の立ち上げに参画、3年間かかわった後、アクティオの鹿児島姶良工場に異動になりました」
*1 業務:機械の整備・修理や安全管理等を行う職種。
*2 APS:Aktio Production System(アクティオ・プロダクション・システム)の略。トヨタ生産方式(TPS)を手本にした、生産ラインから無駄を排除するための方式のこと。
APS道場で学び、ソクトで新工場を立ち上げる。オールニューの鹿児島姶良工場を任せるのに打って付けの存在だったわけだ。
中尾「2023年10月の本格運用からまだ日が浅いですが、実際に運用を行いレイアウトや人や物の流れなどを見ながら、改善を進めています。表示ひとつとっても、今のスタッフはほぼ立ち上げから関わっているので、どこに何があるか、どこに何を置くかは分かっていますが、これから新しいスタッフが入ってくると、その常識は通用しなくなります。誰が見ても分かる表示システムを構築する必要があります」
鹿児島姶良工場には、グループ会社も含め約40名のスタッフが作業に従事している。アクティオの機械を整備する整備部門は、ポンプ班、リフト班、箱物班、小物班、重機班の5つ。加えて入出庫班がある。工場棟の一角にあるオフィスエリアにはフロント*3、事務が詰めており、さらにエンジニアリング事業部南九州出張所、南九州支店のデスクもある。
*3 フロント:注文に対する最適な商品選定や効率的な運送管理、機械運用を主とする窓口。
またアクティオの姶良営業所が隣接するほか、グループ会社の株式会社アクティオトランスポート 鹿児島営業所、株式会社大井産業 姶良営業所も同居している。
それでは各セクションを紹介しよう。まずは整備部門から。
ポンプ班
入出庫率のアップを目指す
水中ポンプには単相電源(100V)と三相電源(200V・400V)のものがあり、鹿児島姶良工場では前者を担当している。ポンプ班の限られた人員で完成品の生産性を上げるため、20分程度で作業が完了する軽整備をメインに行っている。オーバーホールが必要な重整備は、三重いなべテクノパーク統括工場にある西日本水中ポンプ広域センターに依頼している。
当面の課題は入出庫率のアップである。営業所に眠っている水中ポンプと、鹿児島姶良工場で整備した完成品を、いかにして回転させるか。これが鍵となる。
リフト班
室内系と自走式の高所作業車を整備
高所作業車は室内系と自走式に大別される。熊本県内に大型の半導体工場が新設され、現在も拡張・増設が続いている関係で、今は圧倒的に室内系の需要が高く、鹿児島姶良工場に入ってくる高所作業車の大半が室内系だ。
室内系高所作業車の整備は、入庫点検から始まる。外観チェック、動作確認、安全装置のチェックなどを行い、問題がある箇所を修理する。室内で使われる機械であっても、建築現場のコンクリートやペンキなどが大量に付着しているケースが多いので、それらを取り除くケレン作業も欠かせない。その後は再塗装し、性能テストを終えて完成品となる。これら一連の作業を行っているのがリフト班だ。
箱物班
発電機やコンプレッサーを整備
発電機やコンプレッサー、溶接機、はたまた原付バイクや電動自転車などを担当するのが箱物班だ。220kVAまでの発電機は工場内に運んで作業できるが、それよりも大きな発電機は橋型クレーンの下で作業することになる。橋型クレーンの下には、完成品、整備待ちの発電機が、作業性を考えてきちんと整理されている。
発電機の整備は、異音、振動がないか、きちんと発電しているか確認するのが基本。エンジンで発電するため定期的なオイル交換は欠かせない。ちなみに、300kVAの発電機はエンジンオイルが60Lも入るため、交換作業も楽ではない。
小物班
汎用性の高い小型機械を数百種類も整備
小型の発電機、送風機、ランマー、そのほか汎用性の高い機械を数百種類も整備しているのが小物班だ。個々の整備マニュアルが存在しない場合も多く、不明な場合はメーカーや筑後工場に問い合わせるなどして整備手順を研究し、対処している。
小型の機械は、壊れたら修理するか、または廃棄するかという線引きが難しい。そこは使用年数などを考慮しながら判断し、作業に当たっている。
重機班
重機に加え車両系も担当
バックホーやフォークリフト、ハンドガイドローラといった重機に加え、ユニック付きトラックやダンプトラックといった車両系も整備するのが重機班だ。
重機が工場に入庫する際は、大きなトラブルを抱えている場合が多い。例えばバックホーだとシリンダーからのオイル漏れ、ブームの亀裂などである。こういった作業は経験が必要なため、中尾工場長のようなベテランに指示を仰ぎながら作業している。
重機に限らず、エンジンの寿命はエンジンオイル交換の頻度に左右されやすい。たいていの機械は営業所でも整備を行うが、必ずしもエンジンオイル交換が行われているとは限らないため、そのチェック、交換は欠かせない作業だ。
次回はエンジニアリング事業部 南九州出張所や姶良営業所、さらにアクティオグループの株式会社アクティオトランスポート 鹿児島営業所、株式会社大井産業 姶良営業所を紹介したい。
※記事の情報は2024年11月5日時点のものです。
【後編】へ続く
〈ご参考までに...〉
● 九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良工場(アクティオ公式サイト)
● 道路・整地・保安・鉄道(アクティオ公式サイト)
● 水中ポンプ(アクティオ公式サイト)
● 高所作業車(アクティオ公式サイト)
● 発電・溶接・照明機器(アクティオ公式サイト)
● 汎用機器(アクティオ公式サイト)
● 掘削・運搬・解体・林業(アクティオ公式サイト)
● レンタカー・車両機械(アクティオ公式サイト)