テクノパーク・DLセンター
2023.08.01
高所作業車や道路機械・小型機械を整備〈九州テクノパーク統括工場紹介2〉 九州テクノパーク統括工場を紹介するシリーズ2回目は、九州リフト広域工場、九州道路機械工場、小型機械九州センターにスポットを当て、それぞれの運用に関する詳細をお伝えする。
九州リフト広域工場
作業員の習熟度向上により生産性がアップ
九州は今、大型の建設ラッシュに沸いている。天神ビッグバンや博多コネクティッドといった福岡市中心部の再開発、熊本では半導体工場の新設、宮崎では2027年開催予定の国体関連工事、長崎では新長崎駅ビル開発といった具合だ。こういった工事に使用される高所作業車が、全国から集められている。
アクティオにおける九州での高所作業車の前線基地が、九州リフト広域工場だ。筑後工場長も兼務する宮原秀明工場長に話を聞いた。
宮原「九州リフト広域工場が開設された2019年当時は、高所作業車の保有台数が1,600台ぐらいでした。それが現在では、2,500台まで増えています。高所作業車は需要が高まり、正直足りていないですね」
そのような状況下でも、生産設備の増強に踏み切らずに済んでいるのには理由がある。
宮原「生産設備に関しては、九州リフト広域工場を新設した際に、考え得るあらゆる設備を導入したため、特に追加はしていません。それでも生産性が向上しているのは、作業者の習熟度が上がったからです。とはいえ、本当はさらに増員して完成品の在庫をもっと増やしたいのですが、なかなか人が集まらないのが悩みの種ですね」
人材確保が難しい中、若手で活躍しているのが業務担当の紫藤秀介だ。
紫藤「入社2年目で、今は出庫を担当しています。営業所のフロントから何の機械を何台という注文が入ったら、機械を出庫して充電して......という具合です。今は大型の現場が多いので、在庫を抱えることがほとんどなく、毎日整備して、出しての繰り返しです」
機械の整備に関しては、難しく感じることもあるという。
紫藤「異常があって戻ってきた機械の、どこにトラブルを抱えているのかを探るのが難しいですね。電気的な部分だけではなく、機械的な部分にも原因があるので......。高所作業車は安全性が求められる機械だけに、事故につながらないように整備し、しっかりと完成検査も行っています。建築工事現場にアクティオの機械が入っているのを見かけると、社会の発展に寄与しているんだなぁと思います。そんな時、仕事に対するやりがいを感じます」
九州道路機械工場
重機を自社でオーバーホール
九州道路機械工場では、主に道路工事で使用する機械を整備している。まずは古賀勇希工場長に話を聞いた。
古賀「ここではアスファルトフィニッシャやコンバインドローラ、モーターグレーダー、ブルドーザーといった道路工事機械の整備を行っています。加えて、道路工事に関連する例えば照明機材などの商品もテリトリーですね。あとはプライベート商品で、安全対策の各種センサー、ICT施工関連機器も守備範囲です。ICT施工のマシンコントロールは最初から道路工事機械の本体に付いているのですが、マシンガイダンス(MG)は後付けなので、MGの機器はパーツとして管理しています。そういった精密機器のキャリブレーションは、専門部署であるICT機器サポート課のスタッフと協力しながら行っています」
道路工事機械という大きなものを扱ってはいるが、行っていることは非常に繊細なのである。
古賀「必然的にICT機械の需要が高まりますので、九州道路機械工場で整備した機械に、ICT機器サポート課と、測量機器の修理に強いアクティオのグループ会社である株式会社リンクがタッグを組んで、ICT関連機器の取り付け、精度確認といった対応を行っています」
アスファルトを敷く機械がアスファルトフィニッシャで、九州道路機械工場だけでも約80台を運用している。
古賀「アスファルトフィニッシャの整備は、こびりついたアスファルトを落とすケレン作業から始まります。アスファルトの汚れは泥汚れよりもずっと頑固ですから、作業着が真っ黒になるほど、大変な作業です」
通常、稼働5~6年でオーバーホール(分解して点検し、部品の修理・交換を行うこと)の時期を迎えるという。
古賀「アスファルトフィニッシャは路面の水平性、平坦性に対するミリ単位の精度が求められる機械です。これが狂うと使い物になりません。舗装工事は繊細な工事なのです。このオーバーホールを自社で行う理由は、コスト面もありますが、納期という側面も重要です。アスファルトフィニッシャをオーバーホールできる工場、整備士は限られているので、外注すると納期未定ということになりかねません。それでは良い機械をお客様が望むタイミングで提供できないため、自社でオーバーホールを行っているわけです」
将来を見据えて、若手の整備士育成にも力を入れている。
古賀「重機の整備ができる方なら、覚えも早いと思うのですが、アスファルトフィニッシャの整備は、多くの人があまり手を出したがらないんですよ。とにかく汚れますし、一つひとつの部品が大きく、重いですしね。でも後継者に整備技術を継承しないと、未来がありません。そこで大阪などに出向いて、整備講習会を行っています」
小型機械九州センター
扱う機械は200種類以上
九州テクノパーク統括工場には、小型機械事業部の整備工場である小型機械九州センターが併設されている。
小型機械事業部の機械を整備する工場は、北は青森県八戸(小型機械八戸センター)から、南はここ九州まで、全国に10カ所ある。扱っている機械はチェーンブロックなどの揚重機、ベルトコンベア、溶接機、さらには充電式バッテリー工具など、200機種以上。小型機械九州センターでは、基本的には九州で使用する小型機械のみを整備、運用しているが、それ以外のエリアで足りない小型機械があれば、提供することもある。
多岐にわたる機種の管理・運用について、桑野聡センター長に話を聞いた。
桑野「例えば営業所から注文が入った場合、すぐに対応するためには完成品の在庫を確保しておく必要があります。在庫がない場合には、修理して出庫するまでにどのくらいの時間がかかるか判断してからでないと返答できません。完成品を増やすためには、人員の確保が重要になります。さらに見立ても必要です。整備にどのくらいの時間、コストがかかるのか。自社で整備するのか、外注に出すのか。はたまた廃棄......。そういったことを見極めながら差配しています」
小型機械九州センターの入出庫数は、年間2万5,000台にも上る。膨大な数の整備を複数のスタッフで行う上で課題になるのが、品質の均一化である。
桑野「扱う機械の種類は多いですが、共通部分もありますので、ある程度はオールマイティーに整備を行えます。複雑な機械の整備については、事業部が作った整備手順書に沿って行います。ただし、誰がやっても同じ品質で、ということに関しては課題があると思っています。そこの精度を高められれば、より生産効率をアップすることも可能です。今年度は生産台数を3%向上させるのが目標なので、そのあたりを改善しつつ、目標を達成できるよう努力したいと思います」
桑野センター長のもとで見立て、つまり入庫管理を行っているのが津田亮祐主事だ。
津田「機械が入庫すると、まずは整備する順番を決めます。そのために必要なのが見立てです。この機械を完成品にするためには、何が必要か? そこをきちんと見極めることで、物事がスムーズに運ぶようになります。整備する業務担当に的確なトスを上げられるかで、アタック率、つまり生産性が変わるわけです」
もちろん、津田主事自身も整備を行う。
津田「数多くの整備を時間内で終わった時は達成感がありますね。整備のほかに、営業所からの電話対応もするのですが、故障の原因を的確に即答でき、納得いただけた時は、やりがいを覚えます」
次回はアクティオグループの株式会社シンテクノ、株式会社アクティオトランスポートの九州営業所と、アクティオ筑後営業所を紹介したい。
※記事の情報は2023年8月1日時点のものです。
〈ご参考までに...〉
● 九州テクノパーク統括工場(アクティオ公式サイト)