2025.07.30

アクティオの災害対応 令和6年能登半島地震【1】現地災害対策本部の中心メンバーに聞く 地震、台風、火山の噴火など自然災害大国と言える日本。アクティオは平時から防災対策に取り組み、ひとたび災害が起これば、機材や人員を結集して復旧と復興をサポートしてきた。令和6年能登半島地震が起こった能登地方では、人々が現在もなお生活を取り戻すために奮闘している。同地の復旧と復興を機材面で支えるアクティオの災害対応について、3回にわたって紹介する。

アクティオの災害対応 令和6年能登半島地震【1】現地災害対策本部の中心メンバーに聞く

現地対策本部を金沢湊営業所に設置

2024年1月1日16時10分頃、石川県能登地方でマグニチュード7.6の地震が発生した。輪島市と羽咋郡(はくいぐん)志賀町(しかまち)では最大震度7を観測。新年を迎えたばかりの和やかムードは一転。日本全国に重苦しい空気がのしかかった。


アクティオは東日本大震災(2011年)の発生直後、本社に災害対策本部を、仙台西多賀営業所に現地対策本部を設置。機材の調達・移送と応援要員の派遣を速やかに開始し、地震発生から1週間で発電機約2,000台、バックホー約150台、トイレ約400基などを被災地に搬入した実績がある。


それでは、令和6年能登半島地震ではどのような対応を行ったのか? 今回は、現地災害対策本部の中心メンバー4名を軸に話を進める。


その前に、アクティオの会社概要について少し触れたい。アクティオの決算期は12月。つまり1月から新年度が始まる。2023年12月30日~2024年1月4日は年末年始休業期間で、2024年1月1日付で組織改編が行われ、支社制が導入された。能登半島は北信越支社(新潟県新潟市)の管轄となったのだ。


2024年1月1日付で北信越支社の支社長となったのが、後藤津義執行役員北信越支社長である。後藤支社長は2023年まで東京支店(現 首都圏支社 東京支店)に勤めていたため、地震が発生した当日は東京の自宅にいたという。


後藤「当日は、全社で導入しているアプリにて安否確認を行い、全員の無事を確認しました。翌2日にはメールが頻繁に飛び交うようになり、小沼直人社長も含めた幹部も参加してウェブ上で能登地方地震災害対策会議を行いました。現地の被災状況、交通状況、災害協定を結んでいる行政からの情報も乏しく、この段階では全容が全くつかめていませんでした。自治体やゼネコンからの要望や受注状況を確認した上で、現地で必要な機械の在庫、搬入トラックの確保、それら不足分の対応を協議しました」


後藤津義執行役員北信越支社長(中央)後藤津義執行役員北信越支社長(中央)


後藤支社長は1月3日、石川県に入った。


後藤「現地災害対策本部が設置された金沢湊営業所に、村松健一専務執行役員、支社メンバーとともに入りました。この初動の速さは、2004年の中越地震、2007年の中越沖地震、2011年の東日本大震災、2019年の全国規模の豪雨災害など、さまざまな自然災害、復旧・復興作業に対応してきたアクティオの経験値によるものが大きいですね。有事に強い。これはアクティオの文化・伝統だと思います」




休日返上で災害対応にあたる

石川県内にアクティオの営業所は金沢営業所、金沢白山営業所、そして金沢湊営業所の3カ所ある。実は、現地災害対策本部が置かれた金沢湊営業所は2023年12月11日に開設されたばかりで、いきなりチーム力が試されたわけだ。そんな金沢湊営業所を託されたのが高松陽介所長(当時は金沢営業所、金沢白山営業所も兼務)だ。


高松「実は地震発生時、家族旅行で静岡県にいました。私自身、富山県で育ち、石川県に異動して14年になりますが、過去に大きな地震を経験したことがなかったので、現地で何が起きているのか、正直ピンときませんでした。しかし、元日に石川県にいた社員や知人から現地がパニックになっていることを聞き、これは何かが違うぞ......と感じ始めました。その日の夜に2日に出社できる社員がいないかヒアリングを行い、さらに運送業者各社へも対応可能かの確認と協力要請を行いました。1月2日には休暇中にもかかわらず、金沢営業所、金沢白山営業所から計6名の社員が金沢湊営業所に参集してくれました 」


金沢湊営業所の高松陽介所長金沢湊営業所の高松陽介所長


社員の安否確認、営業所の状況確認はどのように行われたのだろうか? 北陸支店の近藤照彦支店長に聞いた。


近藤「地震発生後、金沢湊営業所へ向かいましたが、津波警報が発令され、避難車両で混乱していたため移動は断念しました。新潟支店の支店長や近隣営業所の所長と連絡を取り、石川県および富山県の拠点の状況を確認しました。また社員60名のうち、54名と1時間以内に安否を確認できたことで、大きな問題はないと判断しました」


北陸支店の近藤照彦支店長北陸支店の近藤照彦支店長


今回話を聞いた4名の中で、最も揺れが激しい場所にいたのが、北信越支社 営業部の太田健営業専門部長だ。


太田「私は福井市の自宅で大きな揺れを感じました。これは尋常じゃないとすぐに察しましたね。揺れが収まって自宅に被害がないか確認した後、身内、社内の人と連絡を取り合いながら、被害状況の確認を行いました。少し落ち着いてから、近藤支店長から災害本部設置の連絡をもらい、翌日から金沢湊営業所に入って震災の状況の確認を始めた次第です」


北信越支社 営業部の太田健営業専門部長北信越支社 営業部の太田健営業専門部長




組織力、機動力を活用し、全国から機材を確保

本格的な震災対応が始まった1月3日。出社した際の状況を振り返ると、どんな様子だったのだろうか? 高松所長に聞いた。


高松「1月3日、4日は石川県の社員を中心に10名前後で対応しました。大きな被害のなかった金沢市内にある金沢湊営業所では、甚大な被害に遭った能登半島の状況をなかなか理解できませんでした。私たちは何を求められているのか、今何をすべきなのか、頭の中の整理がつかず、自問自答を繰り返していました」


1月6日には、小沼直人代表取締役社長が能登半島の現地を視察。後藤支社長も同行した。


後藤「とにかくインフラが駄目というのが第一印象でした。能登半島へのアクセスは『のと里山海道』がメインなのですが、車が動かない。これは物資を現地まで運ぶ配送がカギになると思いましたね」


配送の采配に辣腕を振るったのが高松所長だ。


高松「本来は営業所長として現地を走り回り、地域企業や自治体担当の皆様の声を聞く立場だとは思いますが、それは支社営業部にお願いし、私はフロント*1に入って配車に徹することにしました。震災前でも、珠洲(すず)市までは片道2時間程度かかります。それが震災直後は片道10時間かかることもあり、配送ドライバーには寝泊まりセット持参で現地に向かってもらいました。これをスポットで続けるのは限界があると感じ、すぐにアクティオ専属となる常用便の確保に注力しました」


*1 フロント:注文に対する最適な商品選定や効率的な運送管理、機械運用を主とする窓口。


高松所長がフロントを担当していたのは2カ月間。携帯電話はひっきりなしに鳴り続けた。


高松「日本建設業連合会の企業様向け緊急連絡先に私の携帯電話が登録されていたため、震災後、ゼネコン各社から一斉に連絡が入り始めました。フロントとして機材の手配や配車を直接行っていたため、お客様の困っている声を聞きながら、できるだけ早く回答することを心がけました」


お客様からの感謝の声が、社員が頑張れた大きな要因だと高松所長は話す。


高松「いつ持って来られる? というお客様からの問い合わせに、明日には! と即答すると、えっ!? そんなに早く? ありがとう! 助かるよ! と感謝の言葉をいただいてうれしかったですね」


高松陽介所長


そもそも、機材の調達はどのように進められたのだろうか?


後藤「本社業務本部、支社業務部*2と打ち合わせを重ね、過去の災害事例から必要な機材をリストアップし、全国からかき集めることになりました」


*2 本社業務本部、支社業務部:レンタル機械の購入から手配、整備、品質維持など、資産全般の管理を行う部署。


近藤「具体的には、まずライトバンと仮設トイレです。ライトバンは、現地に向かう各社の調査部隊が使用するため必要になります。季節的に4WDの引き合いが多かったですね。インフラの復旧工事が始まると重機に加え、寝泊まりできる車両、仮設事務所として使用できる車両、通信手段が求められました。弊社のオフィスカーもかなり需要がありました。ちなみに、被災地からの依頼は、何台用意できるか? といった具体性に欠けるものが多く、対応が難しかったです」


軽トラックに積んだ仮設トイレの需要は非常に高かった軽トラックに積んだ仮設トイレの需要は非常に高かった


1月下旬以降、仮設住宅の建築が始まった。ここで力を発揮したのが太田営業専門部長だ。


太田「まず、どこで誰が仮設住宅の工事をするのか全く分からない状態なので、情報収集から始めました。基本的には石川県の大手2社から聞き取り、お手伝いをさせていただきました。我々は住宅を設置する施工会社に向けて、施工時に必要になる機材をレンタルするわけです。発電機、フォークリフト、小型の重機、照明、足場などですね」


アクティオの組織力、機動力をフルに活用し、全国から機材を確保することはできたが、どうしてもネックになったのが金沢市内から被災地までの供給方法だ。現地での基地確保が急務となった。


後藤「能登半島の地場レンタル業者さんとは、小沼社長や村松専務が日本建設機械レンタル協会のつながりでお付き合いがあります。そこで村松専務自ら、七尾市の川下建機工業様に使用していないヤード(置き場)をお借りできないかお願いにあがりました。穴水町(あなみずまち)のヤードを2カ所お借りでき、また川下建機工業様に弊社の機材を供給することで、川下建機工業様の地元のお客様からの要望にもスムーズにお応えできる体制づくりに注力しました」


また、主に西日本支社で付き合いがあった奥能登町(おくのとまち)の内装業者様から、輪島市の建設会社、里谷組(さとやぐみ)様をつないでもらったという。


後藤「里谷組様は事業の一環として能登空港の前でロードサイド型の飲食店を経営されており、空いている駐車スペースをお借りしました。そこは弊社の前線基地としてフロント1名、業務4名を配置し、連日出張修理対応にあたりました。この2社との出会いが、交通の便に難しさがある半島特有の対応を行う上で大きな助けになったのは間違いありません」


能登空港前にある飲食店の駐車場をお借りして、ようやく現地にヤードを確保できた ※詳細は【3】にて紹介する能登空港前にある飲食店の駐車場をお借りして、ようやく現地にヤードを確保できた ※詳細は【3】にて紹介する




災害時支援協定で、自治体や企業に必要な機材を供給

アクティオは、各地の地方自治体と直接災害協定を締結し、災害時に迅速かつ安定的な機材の供給ができるよう、その関係づくりを推進している。今回の地震災害では、災害協定がどのように機能したのだろうか?


近藤「2024年1月1日の段階で、石川県内でアクティオと災害協定を結んでいた自治体は白山市、野々市(ののいち)市、能美(のみ)市、津幡町(つばたまち)でした」


高松「津幡町から、災害直後に仮設トイレの問い合わせがありましたね」


近藤「石川県や金沢市は、一企業とではなく、組合と災害協定を結ぶ傾向が強かったんですね。ですから1月1日の震災では、日本建設業連合会を通してゼネコンさんからの打診が多かったと記憶しています」


太田「1月1日の震災を機に、石川県とは2024年7月23日に災害協定を結びました。その2カ月後、9月21日から23日にかけて、令和6年9月能登半島豪雨が発生したのです。すぐに石川県危機対策課より、珠洲市の断水に伴う応急処置として、仮設トイレ150棟の要請が入りました」


太田健営業専門部長


高松「グループ会社のエスアールエス株式会社のヤードが能美市にあり、そこで75棟を手配。残りは近藤支店長が新潟エリアで営業をしていた際に付き合いのあったメーカーさんに依頼し、これらと同時進行で配送便の確保を行い、9月23日までに配送便17車で仮設トイレ150棟を珠洲市に供給することができました」


太田「その後も石川県庁の他部署から問い合わせがあり、ボランティアへの支給物資を管財課や生活環境部が取りまとめ、弊社に依頼されています。初回の手配で鍬(くわ)や鎌、たわしといった物資の依頼が来るとは思っていませんでした」


最後に、今回の対応をきっかけに、お客様に伝えたいアクティオの災害対応力について話してもらった。


後藤「被災者、行政、地域、復旧に従事する企業など、多様な分野へ貢献でき、迅速に復興を後押しする弊社のレンタル力を実感しました。今後は、災害対応に欠かせないトイレカー、移動用ハウス、衛星通信機器、蓄電池といった商品をパッケージ化し、ラインナップしたいと考えています」


BCP拠点として災害時でも事業を継続できる体制を構築し、さらには災害協定を通して行政機関との連携を深めていく考えだ。


後藤「平時からの合同訓練などの提案、災害時には道路状況を考慮した緊急輸送車両確認証明書やルート情報の早急な入手なども日頃から意識し、今以上に迅速な対応ができるよう体制を整える予定です」


後藤津義執行役員支社長


近藤「災害発生時には、アクティオの"迅速な対応力"と"団結力"を強く感じます。他社が1月5日から対応を開始した中、弊社は1月2日から活動を開始しました。今後の課題として、全国を3エリア程度に分けた仮設トイレや給水車の備蓄・管理、災害発生時の物流体制の見直し、被災地への迅速な対応体制の構築などを進め、より迅速かつ的確な災害対応を実現していきたいと考えています」


近藤照彦支店長


太田「現地で奮闘されている各市町村の社会福祉協議会のご担当者様やボランティアの方と接することで、弊社の災害時における役割を再認識した次第です。ボランティアへの支給物資は、重機・レンタカーなど多岐にわたり、多くの支援を現地へ実施できました。災害協定を通し、弊社の機械が活躍していることを誇りに思います」


高松「改めてアクティオのネットワーク、そして支社や支店、営業所という枠組みを超えた団結力を感じました。災害対応を行っているのは私たち金沢湊営業所だけではありません。全国のアクティオグループが一丸となって対応しているのです。今後も点ではなく、線でつながるネットワークを駆使し、お客様サービスの向上に努め、能登の復興に向けて邁進したいと思います」


現地災害対策本部の中心メンバー



次回は、若手社員の現場対応をレポートしたい。


※記事の情報は2025年3月末日時点のものです。


【2】へ続く



〈ご参考までに...〉

アクティオの強み「災害への備えと迅速な対応」(アクティオ公式サイト)

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