アクティオの防災
2020.02.25
アクティオの防災 関西での取り組み 常に大量の機械や資材を保有する建機レンタル会社は、災害時の復旧作業に大きな力を発揮してきた。建機レンタル最大手のアクティオは、今や消防や自衛隊と並ぶほど、災害復旧には欠かせない存在となっている。今回は2018年、大地震と巨大台風に見舞われた大阪における、関西支店を中心とした災害復旧への取り組みを、当時のキーマンに語ってもらった。
建機レンタルと災害
災害時には、一度に大量の機械や資材が必要になる。すばやく、大量に、必要なものを必要としている場所に届ける。これが、常に大量に機械や資材を保有しているレンタル会社にしかできない大切な役割なのだ。
今回は、大きな被害を出した2018年の大阪北部地震と、その直後に大阪を通過した平成30年台風21号で、アクティオがどのような活動を行ったのか、現場を経験したキーマン3名に語ってもらった。
上席執行役員 関西支店長 鈴木純也
関西支社の司令塔として、災害対策の指揮をとった。
関西支店 営業部 専門部長 田中顕吾
災害対策本部の中心的存在。
関西支店 神戸中央営業所 営業主事(当時: 関西支店 高槻営業所 営業主事) 利川幸秀
北部地震の震源地である高槻営業所に勤務し、被災現場と関西支店とのパイプ役を担った。
関西北部地震発生 地震はいつも突然やってくる
2018年6月18日朝。大阪府北部を震源にした大きな地震が起こった。マグニチュード6.1、最大震度は6弱。大阪市内で死者6名、385人が重軽傷を負った。地震は気象災害とは違い、いつも突然にやってくる。地震が起きた6月18日午前7時58分頃、アクティオ関西支店では朝のミーティングが始まろうとしていた。
田中顕吾(関西支店 営業部 専門部長):ちょうど早めのミーティングを始めようとしている最中でした。その時グラッときて。
鈴木純也(上席執行役員 関西支店長):会議のためにちょうど幹部がみんな集まっていましたので、すぐに役割分担を決めて事を進めることができました。
田中:まず最優先したのは、社員の安否確認です。各部署連絡をして出社している者、出社していない者、それと、電車に閉じ込められた者もおりますので、それも含めて全員の安否確認をいたしました。関西支店だけでも300人を超える社員がいますので、それだけで半日かかりました。
鈴木:アクティオと災害協定を結んでいる市町村ですとか、お客様もいますので、そことの連絡を誰がどうとるかなど、その後の展開を見越して準備を急ぎました。
田中:震災は何度も経験してきていますが、地震の当日すぐは、あまり動きはないんです。この時もそうで、その代わり翌日には電話が鳴りっぱなしという状態になりました。具体的には水道の破裂等の水中ポンプの依頼、そして停電ですので、大きな工場、あるいは冷蔵倉庫を持っているところから、発電機の問い合わせが殺到しましたね。ただ幸い、震度のわりには揺れる時間が短くて、被害も局地的でしたので、機材もさほど大量に必要なわけではありませんでした。営業所内のものをやりくりしてなんとかなりましたね。
地震の瞬間、まさに震源地の真上にいたのが、高槻営業所の利川営業主事だった。地震の瞬間から、その後の現地の動きを語ってもらった。
利川幸秀(関西支店 神戸中央営業所 営業主事(当時: 関西支店 高槻営業所 営業主事)):地震が起きた瞬間、いったいなにが起こったか分からなかったというのが正直なところです。みんなですぐに外に避難して、だんだんあたりが物々しい雰囲気になってきまして、これはすごいことが起こったんだなと実感しました。
すぐに営業所の前の道路が通行止めになりまして、なにが原因なのか確認すると、その先で道路が陥没して水道管が破裂して水浸しになっていました。営業所のまわりには、量販店がたくさんあるんですけれども、地震発生から約1時間以内で人が殺到して、水やお茶を買うお客様であふれかえっていました。
発生直後から周囲を歩いて見て回りましたが、すぐに白煙が立ち込めて火事が起こっているのも確認しまして、報道陣のヘリコプターも営業所の上空を何基も飛び回っている状況でしたね。すぐに田中次長の指示で動き始めました。
高槻市との災害協定
アクティオは、さまざまな自治体や企業と災害協定を結んでいる。これは、災害が起こった際に、アクティオから必要な機材や資材を優先的に提供するためのものである。震源となった高槻市とも2017年に締結していた。利川営業主事が最初に着手したのも、高槻市との連携だった。
利川:まず、災害協定を結んでいる高槻市さんとのやりとりを始めました。ただ、高槻市さんのほうも発生直後ですごく慌ただしい中、状況もなかなか伝わってこなくて。町を見て回る中で、水道管が破裂して道路がため池のようになっているのを見ていましたので、水中ポンプが必要だろうということで、そのあたりから動き出した次第です。そのうちに、家屋の瓦が崩れ落ちる被害が大きいという情報が入りまして、屋根に被せるブルーシートの手配を開始しました。
5万枚のブルーシート
ブルーシートが、震災の後大活躍する。急激な地震の揺れに、屋根の瓦が落下する被害が大量発生したのだ。
鈴木:地震の後、市町村で一番困っていたのがブルーシートなんです。大量の要望があって、メーカーさんに大至急ストックを、あるだけのブルーシートを用意していただいて、提供しました。
利川:ブルーシートを大量に搬入させていただいたんですが、我々のトラックが入ってくるやいなや市民の方々に「ブルーシートをください」と言われて、すごく急を要されているんだな、と。自分自身も含めてうちの会社として社会貢献ができているんだな、と実感して胸を打たれました。
そして、3カ月後にやってきた台風21号の被害でも、大量のブルーシートが必要となった。たかがブルーシートというなかれ。簡易的に屋根を覆う、軽くて丈夫なものは、ブルーシートに勝るものはない。
田中:台風が通り過ぎた後、高槻市から電話がありまして「ブルーシートあるか?」と。当社では常に5万枚確保しておりますので、すぐにトラック3台で5万枚運びました。たかがブルーシートというかもしれませんが、これが、本当に役に立つものなんだ、ということがよく分かりました。高槻市の総合体育館が集約基地になっていまして、降ろしていく側から、「私何枚欲しい」「何枚欲しい」という形で皆さんどんどん持って行かれる。それを目の当たりにして、機材だけではなくて、こういう役立ち方もあるんだな、と実感しました。
平成30年台風21号 震災直後の巨大台風
地震からおよそ3カ月後の9月4日。震災の傷跡も生々しい大阪に、平成30年台風21号が襲いかかった。もともと関西には、めったに大きな台風はやってこないという。地形が幸いして台風が避けて通る場合が多いのだ。その油断をついて大型台風が通過した。
田中:本当に度肝を抜かれました。私はここ(関西支店)にずっといたんですが、(風で)ガラスが割れないのが不思議なぐらいで。
この台風では、関西空港で最大瞬間風速58.1m、最大風速46.5mを観測し、猛烈な風が大阪を吹き荒れた。
田中:台風が通り過ぎた後は、5万枚のブルーシートから始まって、冠水もしていましたし、電柱も倒れ、重機もたくさん出ましたし、木もたくさん倒れたのでチェーンソーも出ました。
利川:台風が去ってから、うちの営業所の裏あたりもかなり被害が大きく、高所作業車の需要が数多くありました。ほかの支店から重機を移動してもらって日々やりくりしていたような状態です。被災現場で赤い機械が動いているのを見ると、普段の工事現場とはちょっと違った側面からも社会貢献できているんだな、と感じました。
田中:関西支店だけでも、かなりの営業所を抱えているので、なんとか地域ごとに対応しつつ回していけました。だたし、関西空港だけは手間取りましたね。
発電機500台
この台風では、大阪府内で大規模な停電が発生。関西空港は高潮で冠水して、全ての電気システムが停止した。災害復旧の焦点は、急速に電源確保へと移っていった。
鈴木:台風の時は停電がありましたので、関西電力さんから発電機を500台持ってきてくれ、という要請がありまして、台風直後はほぼその対応に追われる形になりました。
田中:これは難しかったですね、急に500台というのは。在庫的にはありますけど、常に500台空いているというわけではないので。各支店に要請をかけて集めました。要請から12時間後には、発電機を満載した4tユニック7台が関西工場を出発して、納めさせていただきました。この機動力がアクティオの強みですね。びっくりされていましたね。関西電力さんもいろんなところに電話されたみたいなんですが、うちの支店長は「持って行きます」と即答していましたから。
鈴木:うちにある発電機だけではなく、メーカーさんだとか、各支店に要請をして、当日と翌日の2日間のあいだに発電機を全部そろえることができました。関西電力さんからもアクティオは対応力や供給力が、やはりほかとは違うということで、お褒めの言葉をいただきました。やりがいがありましたね。
災害時に建機レンタルが担うべきもの
●物量で担う
田中:昔ですと、各ゼネコンさん、もしくは地場の方々が重機をみんな持っていたんですが、現在はレンタルの時代に入っておりまして、皆さんそういう機材を手放されています。災害が起こった場合、オペレーターはいるけれども、機械がない、というのが現状です。災害時に、バックホーが10台、20台、100台欲しい、といった場合には、レンタル会社がその供給を担う責務があると思っています。それだけの絶対量を持っているところは、レンタル会社しかないんです。
●機動力とネットワークで担う
利川:即日にブルーシート数万枚、とか、当日に大量の高所作業車、発電機、といった即応力や対応力というのは、アクティオの大きな強みだと感じます。
鈴木:スーパーや民間の工場、特に物流倉庫の冷蔵庫をやっているところは、停電があると全部の品物が腐ってしまうわけです。すぐに私どもが発電機を持って行って、冷蔵庫を復旧させる。そうすることで、食品の処分をだいぶ防ぐことができます。民間のスーパーさんは、すぐに復旧をしたいしさせたい、させなくてはいけませんので、私どもが機動力を発揮して、すばやく必要な機材を供給します。こういうことが私どもの中でも定着してきました。そのあたりをご理解いただいて、お客様のアクティオを見る目が変わってきているように思われます。
田中:東日本大震災の時ですと、東北地方周辺の営業所では、地震や津波で機材がやられてしまっていました。しかし、アクティオでは、沖縄以外、全国に工場、支店、営業所のネットワークがあるわけです。あの時は18の支店からそれぞれ4tユニック7台ずつ、集結しました。百数十台のトラックが一気に集結したわけですけれど、この機動力のすごさっていうのは、ほかの会社では絶対できないです。そこがうちの強みだと思います。
●経験で担う
鈴木:アクティオは、これまで災害が起きるたびにさまざまな災害対応をしてきました。私も24年前の阪神淡路大震災を経験していますが、同じ経験をしている社員が関西支店の幹部でも結構な人数おります。その時に、災害対応している先輩方の背中を見てきましたので、災害時の貢献というのは当然のことと受け止めています。自衛隊、消防の次ぐらいの社会貢献力は持っていると自負しています。
今、私どもの会社に就活で面接に来てくれる学生は、災害への対応とか社会貢献ができる会社ということで選んでくれている方も多いと思います。学生向けのセミナーなどで、東北の震災とか熊本地震などでの社会貢献をPRしています。
●災害協定で担う
鈴木:今回の台風で、イオンさんですとか、大阪、兵庫、滋賀の地元のスーパーさんから、アクティオと災害協定を結びたい、とおっしゃっていただけるような流れも出てきました。関西電力さんとも、台風の2カ月後に災害協定を結ばせていただきました。
私どもが災害協定を結んでいる自治体様や、企業様からは、アクティオの機械の供給力に期待していただいています。これからもどんどん災害協定を結んで、迅速な対応がとれるような体制を早急につくっていきたいと思っております。
建機レンタルだからこそできる災害対応
建機レンタル最大手のアクティオ。保有機械の物量、機械調達の全国ネットワーク、訓練された機動力が災害時に生きてくる。さらに、災害協定という仕組みを通じて、確実な支援が可能になっている。
※記事の情報は2020年2月25日時点のものです。
※2024年1月の組織改編に伴い「支店」は「支社」に改編されています。
〈ご参考までに...〉
● 水中ポンプ(アクティオ公式サイト)
● 発電機(アクティオ公式サイト)