2025.03.06
鉄塔建設で活躍するコンパクトなクライミングクレーン「JCT036」 送電線工事の需要が高まる中、特に山岳地帯で鉄塔を建設するためのコンパクトなクレーンが求められている。そこで、新たに導入したのが、送電線鉄塔建設用クライミングクレーン「JCT036」だ。

送電線鉄塔建設用クライミングクレーンとは?
送電線鉄塔建設用クライミングクレーンは、タワークレーンの一種で、地上に固定した台座にマスト(支柱)を継ぎ足し、クレーン部分を上昇させながら施工を行うマストクライミング型のクレーンだ。トラッククレーンやラフテレーンクレーンなどの移動式クレーンに比べ、山岳地帯の送電線建設など狭い場所での作業に適している。
なぜ今、クライミングクレーンの需要が急増しているのか
太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの普及により、電気を作れる量が増えた。その結果、既存の送電線では電気を送ることができなくなり、鉄塔の新設・建替工事の需要が高まっている。
このように新設、建て替えのニーズが同時に発生している状況で、この需要は今後10年ほど続くとみられている。
過渡期を迎えているクライミングクレーン
現在、活躍するクライミングクレーンの8割以上は稼働年数が15年を超えているベテランだ。これは、当時のクレーンが非常に優秀だったことと、バブル崩壊以降、限定的な需要に落ち着き、新しい機種が開発されなかったことが主な要因である。
しかし、ここにきての需要の急増で、台数自体の不足はもちろん、故障による一定期間の離脱、修理自体が難しいなどの問題が浮上している。実際、クレーンの在庫不足により作業方法の変更を迫られる現場もあるようだ。
優秀な能力を受け継ぎつつ、さらに進化
送電線鉄塔の建設は山岳地域で行うことも多く、搬入時のルートや現場の作業スペースも限られる。「JCT036」は、この課題をクリアするため、部材を細かく分割する仕様になっている。
通常のクライミングクレーンは、大型トラック(トレーラー)を使用しての搬入が一般的だが、「JCT036」は4tトラックでの搬入も可能。大型トラックが使用できる場合も台数を減らすことができる。さらに組み立ての際のクレーンも必要になるが、送電線鉄塔建設用で組立・分解が簡単な「ジブクレーン CSH36-5」も導入し、「JCT036」の組立・解体までもレンタル機械で対応可能だ。
短く分割されたマストやジブは4tトラックに積み込むことが可能
コンパクトながら100mを超える大型鉄塔に対応
鉄塔を組み立てる際は、鉄塔を立てる場所の中心にクライミングクレーンを設置し、自身を取り囲むように積み上げていく。最大自立高さは28m(マスト7本分)。最大自立高さとは、周囲の支えを必要としない高さのことで、それ以上に高く上げる場合は、建設中の鉄塔とクレーンの間にワイヤー(支線)を張り、安定させる。
これにより150mの高さまで伸ばすことが可能だ。また、最大作業半径は25m、最大定格荷重は2.8tとさまざまな現場に対応できる。
クレーンを鉄塔の中心に設置し、周囲を覆うように鉄塔を積み上げていく
強度を増したマストと独自のクライミング装置
クライミングクレーンのマスト(支柱)は、三角形の骨組で構成されたトラス*1マストが一般的だが「JCT036」では「コラム材(角形鋼管)」のマストを採用している。
このコラム*2マストを使用することにより、トラスマストと比較して剛性が向上。クライミング用支線を張る作業数が少なくなる。
*1 トラス:細長い部材同士を三角形につなぎ合わせた構造。
*2 コラム:鉄骨柱に使用する円形や角形の断面をもつ筒形の構造。
コラムマストを使用することで剛性が向上
そして、最も特長的なのがクライミング昇降装置だ。マストクライミングは上部にマストを継ぎ足していくのが一般的だが、「JCT036」は下部にマストを継ぎ足していく方式を採用。マストクライミングにかかる時間を大幅に短縮できる。
マストクライミングの様子
▼送電線鉄塔建設用クライミングクレーン
送電線鉄塔建設のノウハウをいかに継承していくか
かつてクライミングクレーンを駆使し、送電線工事を数多く手がけた世代は、現在は定年を迎えつつある。このノウハウを若手に引き継ぐことは、今の需要急増に対応する上で喫緊な課題だ。当時のクレーンの優秀さを受け継ぎつつ進化した「JCT036」は、ベテラン、若手双方にとって、最適なクレーンと言えるのではないだろうか。
※記事の情報は2025年3月6日時点のものです。
〈ご参考までに...〉
● 送電線鉄塔建設用クライミングクレーン(アクティオ公式サイト)
● 2~4tトラッククレーン付(アクティオ公式サイト)
● カニクレーン(アクティオ公式サイト)