2024.03.19

24時間365日、さまざまな場面で変位計測が可能。トンネル地表面管理システム「Point Shot」 アクティオは、地盤や路面の沈下、構造物の傾きなどを自動計測する、トンネル地表面管理システム「Point Shot(ポイントショット)」を独自開発し、2023年秋からレンタルを開始。さまざまな場面に活用が広がっている。

24時間365日、さまざまな場面で変位計測が可能。トンネル地表面管理システム「Point Shot」

地表面の微細な変位を自動計測。データをクラウド上に集約し管理

「変位計測」とは、構造物、地盤、岩盤などについて、基準位置(初期値)からの微細な動きを定量的に測定し、監視することだ。地下構造物に関連する地表の安全確保が大きな課題となる中、変位計測の重要性は一気に高まっている。


アクティオが独自開発したトンネル地表面管理システム「Point Shot」は、高精度な自動追尾式トータルステーション*1を制御し取得したデータを解析するシステムで、24時間365日、地盤や路面の沈下、構造物の傾きなどの数mm単位の変位まで自動計測するシステム。データはリアルタイムでクラウドなどに蓄積され、パソコンやスマートフォンで閲覧が可能だ。


観測点にターゲットとなるプリズムを設置して精度の高い計測を行う。プリズムを設置できない道路上などは、地表面等をそのままターゲットとするノンプリズム計測も可能で、自動計測により1台で数多くの観測点を受け持つことができる。


*1 自動追尾式トータルステーション:人の手動による従来の「トータルステーション」に対し、自動で旋回し自動で視準するシステム。


Point Shotで使用されるトータルステーションPoint Shotで使用されるトータルステーション


Point Shotの開発を担当したRS事業推進部 AP部の松原智樹専門次長に話を聞いた。


松原「Point Shotは、自動的に計測したデータをクラウドサーバーに集積します。権限を付与された担当者はいつでも、どこでも一般のインターネットブラウザで閲覧・管理することができます。あらかじめ設定しておいた変位の値を超えたときは、eメールでアラートを受け取れる仕様です。トータルステーションは収納ケースに収めて全自動で計測できるほか、道路上や住宅地などマシンを常設できない場所では、人が半自動的に*2操作する使い方も選択できます」


*2 三脚などで測量機を設置して基準点を測量、その後の各点は自動で測量を行う。


従来のオートレベルを使った計測なら3人がかりで行っていた仕事を、たった1人で、しかも圧倒的な短時間でこなすことができるため、半自動であっても大きなメリットがあると、松原専門次長は話す。さまざまな特長が評価され、2023年9月にNETISに登録を受けた(登録番号:QS-230012-A)。早速、初年度から実績を重ねている。


RS事業推進部 AP部 松原智樹専門次長RS事業推進部 AP部 松原智樹専門次長




トンネル、河川、鉄道などさまざまな現場に導入。シンプルな使い勝手、使いやすさを追求

Point Shotの有効活用が最も期待されるシーンは、その名が示すように、トンネル地表面の計測だ。昨年の例では、推進工法のトンネル工事における地表面計測にPoint Shotが採用された。この時は地表が一般の道路であったため、半自動による計測が行われている。


河川の大規模な水門工事では、打ち込まれた矢板の変位をPoint Shotで計測した。鋼管杭を打つことで矢板に予定外の挙動が起きないかを確かめたいという、発注者からの指示で採用されたものだ。別の河川で、護岸の地盤改良工事で打たれた矢板を対岸から計測する、という任務に採用された例もある。


鉄道関連でも、線路に隣接したマンション建設工事の現場で、近接する鉄道の擁壁にプリズムを設置して計測した事例がある。この時はビルの屋上にガラスの収納ケースに収めたトータルステーションを据えて24時間、全自動で変位を計測した。


ほかにも、例えば盛土の上に敷設された軌道の下にアンダーパスを通す工事や、シールド工法のトライアル区間など、Point Shotの用途はさらに広がっていくことが期待されている。また、盛土上の高速道路の路面計測などでも需要は高まっていきそうだ。


松原「使用場面が広いだけに、想定ユーザーも多様で、多くの場合こうした計測機を初めて使うお客様向けに納品していくことになります。そのため、シンプルで分かりやすい使い勝手であることが肝要で、開発にあたって苦心したのもその点ですね。実は一度完成してから、ユーザー・インターフェースの部分を再検討し、約1年かけて作り直しも行いました」


Point Shotのユーザー・インターフェース。試作・改良を重ね、シンプルな使い勝手を実現したPoint Shotのユーザー・インターフェース。試作・改良を重ね、シンプルな使い勝手を実現した




多くの現場に関わるアクティオだから、変位計測の技術普及に貢献できる

Point Shotの将来性について、RS事業推進部 AP部で事業を統括する茂木清顕部長は言う。


茂木「モニタリング技術にはさまざまな方法があります。トータルステーションやGNSS(衛星測位システム)での測量、振動や騒音の計測、温湿度や風速・風向の観測、Webカメラで目視確認などは全てモニタリングになります。実際に車で走って凹凸を確かめるのもひとつの方法です。AP部では測量システム開発に携わった人材が多かったため、測量技術を活用した変位計測システムであるPoint Shotを開発しました。これからも技術を発展させて、お客様のご要望に応えていきたいと考えています」


RS事業推進部 AP部 茂木清顕部長。開発室では、さまざまな計測機器の開発・試験が行われているRS事業推進部 AP部 茂木清顕部長。開発室では、さまざまな計測機器の開発・試験が行われている


変位計測の社会的ニーズは年々高まり、トンネルの掘削や重要構造物がある場所では、計測が初めから工事の予算に組み込まれることが多くなってきた。


茂木「トータルステーションによる自動計測自体は10年以上前に始まった技術なのですが、アクティオには、所有している高精度な測量機の力を最大限に引き出せるシステム開発の技術があります。ソフト、測量機本体や改造、精密治具、制御ユニット、クラウド化、そして一番大事な経験と知識です。これにより手戻りの少ない、迅速な商品開発が可能です」


アクティオは、シールド・NATMトンネル工事や鉄道工事、高速道路工事、建築工事など建設工事全般に関わっているため、変位計測のご用命の機会は必ずあると、茂木部長は話す。


茂木「アクティオだからこそ、お客様をはじめ、測量機メーカーさんや計測器メーカーさんと一緒になって変位計測の技術普及に貢献できると考えています。これからのアクティオは変位計測もレンサルティングしていきたいです」


日本のインフラの保守、人々の安全・安心に欠かせない変位計測の技術普及に向け、アクティオは果敢な取り組みを継続している。


※記事の情報は2024年3月19日時点のものです。


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Point Shot(トンネル地表面管理システム)(アクティオ公式サイト)

事業分野紹介「i-Construction(ICT施工)」(アクティオ公式サイト)

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