グループシナジー
2022.03.15
測量機・非破壊検査機のプロフェッショナル、株式会社リンク アクティオグループのなかにあって、測量機と非破壊検査機に特化した企業がある。大阪府堺市に本社を構える、株式会社リンクだ。
メーカーの垣根を越えた測量機の修理が可能
株式会社リンクは、測量機器の修理専門会社として30年に及ぶ実績を誇り、近年は修理だけでなく、レンタルや新品及び中古機器の販売にも事業を広げている。またテストハンマーや鉄筋探査機などの非破壊検査関連機の開発、検査・試験も手がけ、こちらもレンタル、販売を行っている。同社の強み、沿革と将来について、酒井信幸取締役・執行役員社長にお話をうかがった。
酒井「測量機は国内外、数多くの光学機器メーカーが手がけて製造しています。それぞれが修理の技術者を育てて修理を行っていますが、どのメーカーの測量機でも修理できるのが弊社の大きな特長です。弊社スタッフは各メーカーの修理研修を受けており、一例をあげるとソキア優秀サービス店(五つ星)、ライカジオシステムズ本社スイス工場からは国内初となるライカオーディットも取得しています。またJSIMA(日本測量機器工業会)規格、ISO9001も取得済みです。測量機の修理を知り尽くしているために、メーカーの了承を得て商品を改造し、特殊品、専用機を作ることができるのも弊社の強みです」
1980年代、酒井社長のキャリアのスタートは測量機メーカーの営業マンだった。
酒井「高校卒業後、電気関連の夜間学校に通いながら、某測量機メーカーの営業をしていましたが、当時は私も含め、測量機という特殊な機械の中身をよく知り、修理の必要性やエラーについて詳しく説明できる営業マンはほとんどいませんでした。その後私は修理部門に異動となり、3年半、修理業を必死で学びました。その上で『この技術を持って、現場の最前線でお客様に説明することこそ自分の仕事』と覚悟を決め、もう一度、営業に復帰しました」
時はバブル全盛期。修理の技術を持った営業マンとして活躍していた酒井社長は、独立を意識するようになる。
酒井「自分の中で、所属していたメーカーの測量機については理解できたと思いました。そうなると、全メーカーの測量機を理解したいと意欲が湧いてきました。それを可能にするには独立しかありません」
酒井社長が「高精度な測量機の修理・校正技術を蓄積し、世に広めて社会に貢献する」という目標を掲げ、株式会社リンクを創業したのは弱冠26歳のとき。測量機への純粋な興味、愛情から独立したが、会社経営についてはほとんど何も知らない状態だったという。
酒井「堺市にある実家の3坪程度の庭に小屋を建て、テーブル1卓、設備1基からスタートしました。社員は私ひとり。修理も配達もすべてひとりでこなしました。見積書や納品書についてはメーカー勤務時代から作っていましたが、お恥ずかしながら、請求書の作成や小切手についてはなにも知らなかったのです。そんな私にイチから会社経営を教えてくれたのは、メーカー時代からご贔屓(ひいき)にしてくださったお客様でした」
販売、非破壊検査、そして独自製品開発へ
全メーカーの測量機の修理をしたいという思いで独立した酒井社長だったが、独立当初、仕事面で支えてくれたのはやはり、以前勤務していたメーカーから依頼の修理の仕事だった。そこで修理を継続しつつ、他メーカーへの営業も始める。当時はメーカーから販売店、そして修理業者へという流れはひとつの系統に限られていることがほとんどで、メーカーの壁を越えることは難しい挑戦だった。しかし、転機が訪れる。
酒井「某メーカーが新商品のリリースに向けて、修理・メンテナンスの対応ができる業者を探しているという情報が入ってきました。さっそくそのメーカーの技術者の方にご相談させていただき、契約にいたりました。各販売店の社長をはじめとした関係者のお力添えもあり、その後少しずつ他メーカーからも認めてもらえるようになりました」
確かな技術と地道な営業努力が実を結び、あらゆるメーカーの修理研修に参加、幅広い製品に対応できる修理技術を身につけたことにより、リンクは国内で数少ない「全メーカーの測量機器の修理・校正ができる」会社となった。
酒井「当時、海外メーカーのご担当者に『測量機の修理だけを行っている会社は世界でここだけだよ』と言われました。その人に販売を勧められたことと、修理研修を受けるには販売をすることが条件だというメーカーが出てきたこともあり、中古品をメインに販売も手がけることになりました。ちなみに弊社の営業マンは、全員が元メーカー関係者です」
測量機・計測器の修理、販売で一定の地位を築いた後、新しい領域へもチャレンジしている。それが非破壊検査機の修理、調整事業だ。道路やトンネル、橋などインフラの老朽化により、全国で倒壊事例も発生している昨今、2013年には国土交通省より5年に1度のインフラ整備定期点検の義務化が発表され、インフラの整備は国を挙げての急務となっている。
酒井「測量機は光学機器で距離や角度を測る機械。非破壊検査機は超音波で長さ等を測る機械。構造は違いますが、電子制御技術を使っているという共通点がありますし、エンドユーザーはほぼ同じ、つまりゼネコンをはじめとする建設会社です。さまざまな修理にトライしたい、ニッチな技術で勝負したいという弊社の理念にピッタリのチャレンジだと思っています」
修理や校正にとどまらず、さらにオリジナル商品「キズミー1」を開発したメーカーとしての側面もある。
酒井「支柱路面境界部検査システム『キズミー1』を使用すれば、掘削せずに、鋼製支柱埋設部の腐食を調査することが可能です。キズミー1は国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)において優れた新技術の活用促進を図るための準推奨技術に選定されました。(登録番号:KT-130057-VE)」
アクティオのハイテク製品開発の一翼を担う
2020年、新たにアクティオのグループ会社となったリンク。アクティオが新たに操業開始した大阪DLセンター内では、測量機・計測器のメンテナンス部隊を率いている。アクティオのオリジナル商品の開発にも参画した。狭いトンネル内の測量を行う、推進・シールド自動測量システム「パイプショット」だ。この商品ではゼロから開発に携わり、杭ナビにプリズムを取り付けるという、ハードウェアの前例のない改造も担当した。
酒井「小口径(800mm~1,650mm)の管内に作業員が入って行う測量作業があります。この負担を軽減するために開発されたのがパイプショットで、管内の測量作業を自動で行うことができる画期的な建設ICTです。弊社はプリズムの位置調整のほか、元々のメーカー機に備わっている防水機能にさらなる湿気対策をプラスするなどの技術開発を担当しました」
土木建築業界では現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ICT施工などが急ピッチで進展している。そのなかで、あらゆる技術の要となるのが測量機だ。今後ますます測量機の需要が増すことが予想される。
酒井「DXの技術は日進月歩です。重機による自動掘削なども当たり前の時代となってくるでしょう。測量機はもとより、カメラ、スキャナーなど重機に取り付けるICT関連機器も欠かせません。最近では、盛り土の度量計算もスマホの画像ひとつでできるところまで技術が進歩しています。老朽化したインフラの工事が活発になるなか、トータルステーションとオートレベルは1現場に1セット必ず設置されますから、今後、重機と並んで測量機のレンタルもますます増えていくことが予想されます。
測量機は光学技術、メカ、電子技術を集約した精密機械で、いわば小さな天体望遠鏡のようなものです。最も複雑なトータルステーションになると、かつてはメーカーでしか修理できませんでしたが、弊社はメーカーと同じ設備機器を導入することで、修理を可能にしてきました。その実績と技術、誇りと情熱を持って、今後さらに進化していく測量機や非破壊検査機のメンテナンスを行っていきたいと思います。また、新しい機械の開発にも挑戦していくつもりです。対応できる自信は十分あります」
測量機とは何かと問われたら、酒井社長はいつも「外で使う物差し」と答えるという。「外で測る」ことは、あらゆる建設事業、さらには文明社会の出発点となる重要な仕事だ。ハイテク化が進む「測る仕事」の領域で、リンクは日に日にその存在感を増している。
株式会社リンクウェブサイト
https://kklink.co.jp/
※記事の情報は2022年3月15日時点のものです。
〈ご参考までに...〉
● Pipe Shot(推進・シールド自動測量システム)(アクティオ公式サイト)