グループシナジー
2024.10.24
日本初の水中ポンプ専業メーカー、櫻川ポンプ製作所【3】革新的な製品を生み出す技術開発部 水中ポンプには数多くのアイデアが詰まっている。水中ポンプに櫻川ポンプらしさを吹き込むのが技術開発部だ。
ヒット商品「オートポンプ」の生みの親
メーカーである株式会社櫻川ポンプ製作所は、まだ世にない新たな製品を生み出すのが重要な使命である。その中枢が技術開発部で、日々挑戦を続けている。まずは下村通生執行役員 技術開発部 部長に話を聞いた。
下村「技術開発部の役割をざっくり言うと、水中ポンプと、水中ポンプを応用した製品の開発、試験を担当する部隊です。分野的な目線で言えば、機械屋、電気屋に分けられます。水中ポンプの下の部分であるインペラ(羽根)が機械屋、上の部分のモータが電気屋です」
水中ポンプの開発・設計は、どのようなステップで行われるのだろうか?
下村「まずはモータですね。モータは、できるだけ既にあるものを使います。弊社は多品種少量生産なので、極端に言えば年間ロットが10個の製品を一から新たに設計していたらコストが合わない。もちろん、ちょっとした仕様変更は行いますが、なるべくその程度にとどめるようにしています」
モータの仕様が固まると、次はインペラの設計に入る。
下村「昔は2次元の図面だけでしたから、データの解像度が低くて大変でした。製品は3次元なので、図面にない部分は勘に頼るしかない。今は3D CADでシミュレーションできますし、3Dプリンターで試作品を作ることも可能なので、開発期間だけでなく開発コストも抑えられるようになりました」
下村執行役員が生み出したヒット商品が「オートポンプ」だ。
下村「オートポンプユニットのUEXシリーズですね。一定の水位になるとポンプが稼働するという製品は、以前からありました。フロートを使ったタイプで、これは設置が面倒、設置面積が必要、フロートが割れたら機能しないという弱点がありました。これに代わる方式として、フレキシブルなセンサー線を採用しました」
そのセンサーは、どのようにして水位を検知しているのだろうか?
下村「静電容量を利用しています。水と空気の抵抗は違うので、その差を検知して、ON/OFFするわけです。電気が流れるか流れないか、という方式も考えられますが、水質の影響を受けやすいという問題があるため見送りました。水が電気を通すわけではなく、水に溶けている物質が電気を通すためです」
オートポンプユニットは、水がたまったら困る場所に設置する水中ポンプなので、普段は水がない状態になる。水に浸かる、水が乾く、を繰り返すことで、何か問題は発生しないのだろうか?
下村「金属がさびて、インペラの軸が固着しやすくなります。それを防ぐため、マイコンが運転・停止時間を自動で計算し、停止時間が24時間に達するとインペラを約1秒間、回転させます。このアイデアは、実はトイレで思いつきました。男性用トイレに、人がいなくても水が流れることがあります、と注意ステッカーが貼ってあるのを見て、水がなくなったら時々少し回せばいいんだと思いついたわけです」
意外な場所、意外な瞬間にひらめいたアイデア。何事も吸収する好奇心と柔軟性が生きた製品開発となった。
特許申請に挑戦した若き技術者
櫻川ポンプ製作所の若き技術者が、技術開発部の橋田翔吾さんだ。橋田さんは大学で機械工学を学び、主に回転機械の研究を行っていた。大学時代に同社でインターンを経験したことがあり、水谷文和社長に口説かれ、技術者として福井に赴任した。まだ入社して4年目だが、先日、ある特許の申請を行った。
橋田「現在、開発途中なので詳しくは話せませんが、私が担当している開発商品に関する特許を出願しました。流体解析ソフトや3Dプリンターを使用して部品を設計、製作して実験を繰り返しました。期待した性能が出ず悩んだことも多かったのですが、先輩のアドバイスにも助けられてここまでこられました」
今回申請した特許に関する研究は、どの程度の期間、行っていたのだろうか?
橋田「1年半ほどです。この間、課題解決に向けて、根気よくやり続けられる力が身に付いたと思います。無事に特許が取得できることを願っています。特許は公開された情報を参考にして、さらに新しい技術を開発することにつながります。少し気が早いですが、自分の技術が未来のために役立てば技術者冥利に尽きますね」
あらゆる建設現場で、工場で、流体移送になくてはならない水中ポンプ。櫻川ポンプ製作所は最新の技術、より良い品質、適正価格で、お客様の満足度を高める技術集団なのだ。
※記事の情報は2024年10月24日時点のものです。
〈ご参考までに...〉
● 水中ポンプ・水処理機械(アクティオ公式サイト)