2024.10.18

日本初の水中ポンプ専業メーカー、櫻川ポンプ製作所【1】トップインタビュー 株式会社櫻川ポンプ製作所は1953年9月、日本で初めて水中ポンプの製造を開始した。以来、70年にわたり水中ポンプに軸足を置いた商品開発に邁進。2015年4月にはアクティオグループの一員となり、さらなる躍進に向けてかじを切った。同社の福井工場を訪ね、トップインタビューを皮切りに同社の魅力に迫った。

日本初の水中ポンプ専業メーカー、櫻川ポンプ製作所【1】トップインタビュー

水中ポンプの草分け企業で陣頭指揮を執って11年

櫻川ポンプ製作所の創業の地は大阪市浪速区。現在、大阪には本店、東京には本社が置かれている。北は北海道、南は沖縄までの11カ所に営業所を開設。従業員は121名(2024年1月現在)を数える。


開発・生産の拠点が福井工場だ。福井工場は福井県最大の工業団地、テクノポート福井の一角にある。ここは福井港に隣接しているほか、工業用水、浄化センターといったインフラが充実しており、数多くの工場が立地している。


福井工場は工業団地、テクノポート福井の一角にある福井工場は工業団地、テクノポート福井の一角にある


櫻川ポンプ製作所を率いるのは水谷文和取締役社長。東京本社と福井工場を行き来しながら櫻川ポンプ製作所を指揮する水谷社長に、まずはご経歴を聞いた。


水谷「名古屋の大学を出てレンタル会社に就職して、3年半ほど勤めてから、26歳の時、アクティオに転職しました。営業職です。でも若い頃は、何も分かっていなかったですね。営業の知識もなければ、経験を持っているわけでもない 」


自分には何ができるのか ......。若き日の水谷社長が考えたのは「技術」に精通することだった。


水谷「得意先から、ちょっとした製作物を頼まれることがよくありました。会社に戻ってベテランの業務さんにお願いするんですが、やはり皆さん、ご自身の仕事を抱えてお忙しいから、渋い顔をされる。だったら自分でやれないかなと思い始めたんです」


櫻川ポンプ製作所の水谷文和取締役社長櫻川ポンプ製作所の水谷文和取締役社長


材料の切断、穴開け、溶接。自分でできるようになろうと勉強を始めた。


水谷「自分で物の加工ができるようになると、提案の幅が広がったのを覚えています。そうなると、ますます技術的な知識を身に付けたくなる。お客様と話していると電気的な知識が足りないなと感じることも多かったため、第二種電気工事士の資格も取得しました」


その後も技術への関心を高めつつ、アクティオの名古屋支店長を務めるなど営業一筋を歩んできた水谷社長。物腰もどことなく技術者を感じさせる、そんな水谷社長だから水中ポンプメーカーの舵取りを任せられたのかもしれない。


櫻川ポンプ製作所に出向したのは11年前。アクティオの小沼光雄会長(当時の社長)から「威張るな、怒るな。櫻川にはいいものがあるから、引き出してほしい」と言われ、かじ取りを任された。就任直後、まず取り組んだのが社員との「対話」だった。


水谷「最初は対話から始めました。でもね、社員に話を聞こうと思っても、なかなか口を開いてくれない。まぁ、私は外様ですから。そんな中で最初に私を受け入れてくれたのは、技術職の方たちでした。予算を確保して、検査機器や実験機器を買って、開発できる環境を整備しました。お互いに信頼関係を構築するまで時間はかかりましたが、今では強固なものになったと思っています」


水中ポンプをオーバーホールするセクション。社員とのコミュニケーションは重要だ水中ポンプをオーバーホールするセクション。社員とのコミュニケーションは重要だ


次に取り組んだのが、技術職と営業職の壁をなくすことだった。


水谷「技術職がやってくれないからできない、というのではなく、営業職が自分たちでできることはないのか? 逆の立場になって考えられるようになると変わります。技術職、生産職、営業職、事務職の社内融和。うまく回ってきたと感じたのは、営業職から『技術職に助けてもらった』という話が出たり、反対に技術職から『営業職から積極的にアイデアが出るようになった』という声が出るようになってきた時です。部門の枠を超えて仕事に取り組めるようになったのです」




強みは頑丈で長持ちする品質


こうしてワンチームとなった櫻川ポンプ製作所の水中ポンプは、他社と何が違うのだろうか。


水谷「最大の強みは、頑丈で長持ちする品質です。これはどこにも負けません。課題は、この櫻川らしさとコストのバランスです。品質を必ず維持しつつ、生産方法を工夫するなど、コストを下げる努力を行っています」


水中ポンプにはさまざまなタイプがあるが、中でも櫻川ポンプ製作所が得意とするのは、大型の高揚程、大水量タイプだ。


水谷「この手の水中ポンプは、多くの場合トンネルのようなインフラ工事で使われます。大型の水中ポンプは海外でも鉱山や灌漑(かんがい)用として需要があります。中には酸に強いステンレス製もあって、寿命は鋳物製の3倍です。ただ価格も3倍になってしまっているので、今後、どのようにコストダウンを進めるかが課題ですね」


仕様通りの性能を満たしているか試験を行った上で出荷している仕様通りの性能を満たしているか試験を行った上で出荷している


最後に、水谷社長が今後、注力したいポイントを聞いた。


水谷「弊社は技術力に自信があります。その技術力、商品力を、どれだけ営業スタッフが深く掘り下げて、知識として持てるかどうか。ラインナップが増えれば増えるほど、どうしても知識が浅くなる。人間の能力に頼るだけではなく、システマチックに解決できる仕組みを考えたいと思っています」



3回にわたって紹介する櫻川ポンプ製作所。次回は、生産現場から生の声をお届けしたい。


※記事の情報は2024年10月18日時点のものです。


【2】に続く(10月22日公開予定)



〈ご参考までに...〉

水中ポンプ・水処理機械(アクティオ公式サイト)

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