2023.03.22

引き合い急増! 現場の脱炭素化の一手「バイオディーゼル燃料専用発電機」 全産業的な課題である二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向け、建設業では公共工事・民間工事の両方で、日常的に発注者への削減量報告が求められている。そこで急速に引き合いが増えているのが「バイオディーゼル燃料専用発電機」だ。アクティオはエンジン式発電機を独自に改良し、工事現場に欠かせない発電機のカーボンニュートラル(排出量から吸収・除去量を差し引いてCO2排出量を実質ゼロにすること)を可能とした。現場の脱炭素化に大きく貢献するこの発電機や取り組みについて、初期の段階から携わる2人に話を聞いた。

引き合い急増! 現場の脱炭素化の一手「バイオディーゼル燃料専用発電機」

「カーボンニュートラル」に現場から熱視線

バイオディーゼル燃料専用発電機は、飲食店などから回収した天ぷら油など、植物性廃食油を主原料としたリサイクル燃料「バイオディーゼル燃料」を用いる発電機。この燃料は精製段階で、軽油などを燃料とするエンジンでも使えるように調整したものだ。


原料となる植物性油は菜種油、ひまわり油、大豆油、コーン油など。こうした植物性油脂は植物の成長によって得られる産物なので、社会的なCO2排出量がゼロカウントとなる「カーボンニュートラル」に位置付けられる。バイオディーゼル燃料はそのリサイクル品であり、石油由来の燃料に比べて環境負荷は一段と低い。


アクティオがバイオディーゼル燃料化した発電機アクティオがバイオディーゼル燃料化した発電機


アクティオはレンタル向け発電機のバイオディーゼル燃料化を進め、2022年末時点で、全国で50台保有している。用途に合わせ25kVAから220kVAまでの6機種を取りそろえている。2023年度中にこの台数を100台に倍増する計画だ。アクティオ全体ではすでに1,000台以上の従来型発電機が稼働しており、全体から見ればバイオディーゼル燃料化の比率はまだ低いが、脱炭素社会への貢献として試行を始めた段階だ。


エンジニアリング事業部 パワーシステム部の山口利治部長は、「特に建設会社さんからは『早く使わせてほしい』と、ずっと熱い要望を受けていました」と振り返る。発電機は、重機などに比べバイオディーゼル燃料に切り替えた場合のリスクが低いことから、建設会社の機材調達では早くから注目されていたという。


エンジニアリング事業部 パワーシステム部 山口利治部長エンジニアリング事業部 パワーシステム部 山口利治部長




2年間の実験を経て本格的な社会実装へ

既存の発電機が搭載するディーゼルエンジンは軽油の使用を前提としており、バイオディーゼル燃料の利用はメーカー保証対象外。それでも、工事現場で不具合を起こすことがあってはならない。アクティオは万全を期すため、三重県いなべ市にある三重いなべテクノパーク統括工場で延べ8,000時間、2年にわたる運転テストを実施した。


「『バイオディーゼル燃料だとエンジンが壊れる』という風評もありましたので、耐久試験の目的も兼ねて、まずは壊れるまで回してみようというコンセプトでテストを開始しました。結果として一切壊れず、非常に良い成果を得ることができました。当社としては、たまたま手配した燃料が非常に品質の高いものだったのがその理由だと見ています」と語るのは、上席執行役員 営業企画部の片桐真人部長だ。


上席執行役員 営業企画部 片桐真人部長上席執行役員 営業企画部 片桐真人部長


廃食油原料の燃料は数十年前から存在し、玉石混交の状態だった。現在は基準整備が進んでおり、アクティオはテストを経て、①燃料は一般社団法人 日本建設業連合会(日建連)が「建設業における軽油代替燃料利用ガイドライン」に記載する「B100燃料製造会社」から調達すること、②品質は燃料メーカーを組織する全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会による「協議会強制規格(7項目)」を満たすものとすること、という2項目を要件とすれば、従来通りの耐久性を期待できると判断した。なお「B100燃料」とは、軽油を混ぜない廃食油由来の燃料100%であることを指す。




発電機を独自に改良

アクティオがレンタルするバイオディーゼル燃料専用発電機は、軽油向けのエンジン周りをバイオディーゼル燃料仕様としたものだ。油脂の浸潤程度が軽油と異なるため、ゴムホースなどを交換して専用仕様としている。また、エンジンオイルもバイオディーゼル燃料専用に切り替えた。テストにより、軽油での運転に比べて専用エンジンオイルの劣化が早いことが判明したため、使用開始からの整備スパンは軽油を用いる発電機の半分に設定した。


バイオディーゼル燃料の利用はメーカー保証外であることから、レンタル契約においてはアクティオがその故障リスクを負う。そのため、レンタル先にはバイオディーゼル燃料を使用するにあたり、事前に書面で承諾していただいてから、契約を結んでいただく流れになっている。




排気ガスもクリーンなため現場・イベントで活躍

コスト面のハードルは決して低くない。廃食油由来のバイオディーゼル燃料は、都市部の飲食店などから原料を回収、精製する必要があり、工場も小規模である場合が多い。現状は実証実験段階のため石油関連税制の対象外であるにもかかわらず、石油由来で税金がかかる軽油よりもわずかに高コストだ。さらに製造する工場は全国でもいくつかの地域に限られ、輸送コストがかさむ可能性もある。それでも「引き合いは強い」と山口部長は語る。


「何しろCO2がカウントされない燃料が使えるわけですから、イベント関連の引き合いも強い発電機です。2025年開催予定の大阪・関西万博に向けた整備事業などでも活躍が期待されます。自治体によっては、発注仕様書にバイオディーゼル燃料の使用を前提として盛り込み、燃料価格の差分を負担する発注者も出始めています」


バイオディーゼル燃料は植物由来なので、石油燃料とは異なり硫黄成分がほとんどない。このため排気ガスの硫黄酸化物(SOX)が非常に少ないのも特徴だ。「燃料自体がほぼ無色無臭、排気ガスからもいわゆる『ディーゼル臭』がしません」と山口部長。食べ物の天ぷらのような匂いがほのかに香るくらいで、高品質のものになるとそれさえも全く感じられない。そのため人が集まる場所に設置しても迷惑になりにくいメリットがある。


「お客様のニーズに応じ、CO2削減に貢献するのが当社のミッション。これからも全国展開企業としての調達力の強みを生かしていきます。レンタルに用いる機材は当社の場合でも10年は稼働しますので、手間がかからず壊れない、しかもCO2削減に寄与するという機械に置き換えていくのは企業活動の上でも重要だと考えています」と山口部長は意気込む。




戸田建設とタッグ、「B30燃料」も実証実験開始

バイオディーゼル燃料の使用をさらに広げるため、建設会社などとの取り組みも進めている。アクティオは2022年12月27日、大手建設会社の戸田建設株式会社、一般社団法人 高純度バイオディーゼル燃料事業者連合会および株式会社未来樹と共同で、バイオディーゼル燃料を使った「B30燃料」を建設機械に利用する実証実験を開始すると発表した。これは戸田建設九州支店による「スポーツクラブ ルネサンス 光の森24(仮称)新築工事作業所」(熊本県菊池郡菊陽町)で実施するもので、期間は2023年1月末からの約1カ月間だ。


スポーツクラブ ルネサンス 光の森24(仮称)の完成予想図スポーツクラブ ルネサンス 光の森24(仮称)の完成予想図


B30燃料とは、バイオディーゼル燃料を軽油に30%混合した燃料を指す。つまりカウントされるCO2は7割に低減する。同作業所では、鉄骨・スタッド溶接用発電機をこの燃料で稼働させる計画で、使用量は約2,000リットルを見込んでいる。


B100燃料を前提とした取り組みから、アクティオの先行企業としての強みが評価された格好だ。2023年以降、こうした燃料の見直しは急激に進むと考えられ、アクティオの強みがさらに発揮されることが期待される。


※記事の情報は2023年3月22日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

事業分野紹介「パワーシステム分野」(アクティオ公式サイト)

バイオディーゼル燃料専用発電機(アクティオ公式サイト)

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