2022.06.27

浅間山麓の砂防堰堤外工事で、より実践的な無人化施工システムをアクティオが構築 国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所は、R2濁川第二砂防堰堤(えんてい)外工事を行っている。この工事を受注したのは総合建設業の株式会社守谷商会で、本工事において昨年に引き続き、アクティオが構築したシステム環境による無人化施工を実施した。今回はより実践的な内容で、災害発生時における速やかな復旧を目指している。

浅間山麓の砂防堰堤外工事で、より実践的な無人化施工システムをアクティオが構築

災害現場近くの安全な場所に前線基地を設置

国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所は、浅間山の噴火に伴う土砂災害に備えた直轄火山砂防事業を実施している。そのひとつがR2濁川第二砂防堰堤外工事で、昨年は有事に備えた訓練の一環として無人化施工を行った。詳細は昨年のレポートを参照していただきたいのだが、ポイントは"いかに離れた場所から重機を遠隔操作できるか"であった。


今年はさらに踏み込んだ内容で、より実践的に、災害発生時に復旧するための無人化施工を行った。まず、遠隔操作可能なバックホーとクローラーダンプ、さらにオペレーターの操作室となるコンテナハウスをトラックに積載し、できる限り災害現場近くの安全な場所に移動。そこでバックホーとクローラーダンプを降ろし、無人化施工に必須となる通信網を現場で構築する。前線基地の準備が整ったら、そこから重機を遠隔操作して災害現場に向かわせ、復旧作業を行うという流れだ。

バケット容量0.7m<sup>3</sup>のバックホー(写真上)と10t級クローラーダンプ(下)は、建機用無線操縦ロボット「アクティブロボSAM」によって無人化。バックホーの運転席カメラがステレオになっているのは、VRにも対応するためだバケット容量0.7m3のバックホー(写真上)と10t級クローラーダンプ(下)は、建機用無線操縦ロボット「アクティブロボSAM」によって無人化。バックホーの運転席カメラがステレオになっているのは、VRにも対応するためだ

操作室となるコンテナハウスは、4tトラックに積載したままで使用。2名のオペレーターがモニターを見ながら、バックホーとクローラーダンプを遠隔操作する操作室となるコンテナハウスは、4tトラックに積載したままで使用。2名のオペレーターがモニターを見ながら、バックホーとクローラーダンプを遠隔操作する



3次元設計データで半自動無人化施工

昨年行った無人化施工とのシステム的な相違点として、まずはWi-Fiが挙げられる。昨年は作業現場と操作室が直線距離で約4kmも離れていたため、指向性アンテナを使用した長距離通信網を構築する必要があった。しかし、今年は操作室を作業現場に設置しているため、通常のWi-Fiベースでよい。ただし、作業現場の全長は約400mもある。Wi-Fiの電波が届くのは半径100mくらいなので、アクセスポイントが1カ所ではカバーしきれない。

今回は操作室に加え、バックホーとクローラーダンプの重機側にもWi-Fiのアクセスポイントを与えている今回は操作室に加え、バックホーとクローラーダンプの重機側にもWi-Fiのアクセスポイントを与えている

その対策として、操作室に加え、2台の重機にもアクセスポイントを与えている。それでもカバーしきれないエリアが発生しそうな場合に備え、自由に動ける運搬用クローラーロボットを用意。それにアクセスポイントを搭載し、先回りして通信が遮断されるのを防ぐのだ。

計3カ所のアクセスポイントでもカバーしきれない範囲は、アクセスポイントを搭載した運搬用クローラーロボットが移動することで対処する。貴重な帯域を有効に使うため、運搬用クローラーロボットはあえて目視で操作している計3カ所のアクセスポイントでもカバーしきれない範囲は、アクセスポイントを搭載した運搬用クローラーロボットが移動することで対処する。貴重な帯域を有効に使うため、運搬用クローラーロボットはあえて目視で操作している


このほか、昨年はラジコン対応型バックホーを使用していたが、今年は「アクティブロボSAM」によって遠隔操作を行っている。これはマシンコントロール(MC)に対応するためだ。MCは、あらかじめコントロールボックスに設計データを入力。設計データとGPS、複数の傾きセンサーを使ってバックホーのバケット先端を正しい位置に導くというもの。これにより経験が浅いオペレーターでも、アーム操作だけで設計通りに施工できるようになるのだ。

(上)コントロールボックスは操作室に設置。(左下)バックホーの正確な位置を測位するため、GPSアンテナを搭載。(右下)バックホーのアームには傾きを測定するセンサーを取付(上)コントロールボックスは操作室に設置。(左下)バックホーの正確な位置を測位するため、GPSアンテナを搭載。(右下)バックホーのアームには傾きを測定するセンサーを取付

浅間山麓の砂防堰堤外工事における無人化施工は、昨年よりも進化し、より実践的なものとなった。いつ起きても不思議ではない災害、その復旧に備え、関係各所の訓練は続いているのである。



▼浅間山麓の砂防堰堤外工事で無人化施工システムを構築


※記事の情報は2022年6月27日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

ラジコン対応型バックホー(アクティオ公式サイト)

ラジコン対応型バックホウ(レンサルティングミュージアム)

建機用無線操縦ロボット アクティブロボSAM(レンサルティングミュージアム)

事業分野紹介「i-Construction(ICT施工)」(アクティオ公式サイト)

アーカイブ

ページトップ