2021.01.08

国土交通省の発注工事で、無人化施工のシステム環境をアクティオが構築。浅間山麓で実施 2020年11月17日~20日、国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所がR1濁川第一砂防堰堤外工事を行った。この工事を受注したのは総合建設業の株式会社守谷商会で、本工事において、アクティオが構築したシステム環境を使用した無人化施工を実施した。緊急対策工事の円滑かつ効率的な施工に向けて、本工事は大きな前進であることは間違いない。

国土交通省の発注工事で、無人化施工のシステム環境をアクティオが構築。浅間山麓で実施

災害時の応急復旧作業を視野に入れた無人化施工を実施

浅間山は有史以降、数多くの噴火記録があり、甚大な被害が発生している。天明3年(1783年)の大噴火では、火砕流に伴う泥流の発生により、山麓のみならず利根川流域に大きな被害をもたらした。近年では2009(平成21)年、2015(平成27年)、2019(令和元)年に噴火したのが記憶に新しい。


こういった状況を踏まえ、国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所ではハードとソフトの両面から火山対策を行っている。ハード面では、噴火の際に発生する火山泥流や、その後の土石流に対して砂防堰堤・導流堤・遊砂池などの砂防設備などにより、被害を最小限に抑えるための対策について検討。ソフト面では、土石流や火山泥流など発生をいち早く知るために、監視カメラ等の観測機器や光ケーブルの整備を推進するとともに、情報収集・伝達システムの強化を図っている。


さらに、浅間山の噴火を想定した防災訓練を関係機関と協力しつつ2007(平成19)年から実施。災害時に危険箇所での応急復旧作業の円滑化を図ることを目的として、建設業協会・群馬県・長野県・関係市町村との「無人化機械施工の実施演習」も行っている。いずれの対策、訓練、演習も有事を想定した内容だが、今回実施した無人化施工は一歩踏み込んだ内容だ。

無人化施工の実施要項

1-1.工事名:R1濁川第一砂防堰堤外工事
1-2.無人化施工を行う工種:砂防土工(掘削工、土砂積込み、運搬)
1-3.無人化施工を行う箇所:濁川第二砂防堰堤工事
1-4.無人化施工実施日:
(準備)2020年11月9日~2020年11月16日
(施工)2020年11月17日~2020年11月20日
1-5.発注者:国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所
1-6.受注者:株式会社守谷商会
1-7.無人化施工の概要
(1)掘削工:施工箇所に配置した無人バックホー(0.7m³)を、構築した通信システムにより浅間山出張所内の操作室から遠隔操作。施工を実施する。
(2)土砂運搬:施工箇所に配置した10t級クローラーダンプに操作ロボットを搭乗させ、そのロボットを遠隔操作して運搬作業を行う。




最大通信距離10kmのWi-Fiを使用して遠隔操作

今回の無人化施工における最大のポイントは、「遠隔操作」である。オペレーターが重機を目視不能の離れた場所から操作するわけだ。重機のそばでラジコン操作するのは、技術的にも操作的にも比較的たやすい。しかし、数kmも離れた場所から操作するとなると......。この難しい課題に、アクティオは挑戦した。


無人化施工で重要なカギとなるWi-Fiで接続する場所は、「作業現場」「操作室」の2カ所。この他、拠点としては「監視室」も存在する。


左:浅間山の麓にある砂防ダムの工事現場が「作業現場」。右:「操作室」は、「作業現場」から直線距離で約4km離れた国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所 浅間山出張所だ左:浅間山の麓にある砂防ダムの工事現場が「作業現場」。右:「操作室」は、「作業現場」から直線距離で約4km離れた国土交通省 関東地方整備局 利根川水系砂防事務所 浅間山出張所だ


まず、「作業現場」に配置してある重機は、無人バックホーと操作ロボットを搭乗させた10t級クローラーダンプの2台。


無人バックホーは、無線化によって無人化作業を実現している。通常のバックホー同様に人が操縦することも可能で、ラジコン化には約20分で切り替え可能だ。今回はカメラを設置し、オペレーターが離れた場所にいても対応できるようにした。


バケット容量0.7m³のバックホーをラジコン化バケット容量0.7m³のバックホーをラジコン化


左:前後左右にカメラを設置し、その映像をオペレーターが操作する部屋のモニターに表示。右:無人バックホーから無線LAN中継器、その後は一部有線を介して無線LANルーターまで接続左:前方にステレオカメラ、後方左右に広角カメラを設置し、その映像をオペレーターが操作する部屋のモニターに表示。右:無人バックホーから無線LAN中継器、その後は一部有線を介して無線LANルーターまで接続


10t級クローラーダンプは、建機用無線操縦ロボット「アクティブロボSAM」によって無人化している。最新の人工筋肉(6軸12本)を使用した運転手型ロボットを搭乗させ、さらにハイビジョンカメラ4台を設置。これらにより遠隔操作を可能にしている。


最大積載量11,000kgのクローラーダンプには、建機用無線操縦ロボット「アクティブロボSAM」を装着最大積載量11,000kgのクローラーダンプには、建機用無線操縦ロボット「アクティブロボSAM」を装着


左:人工筋肉(6軸12本)を使用した運転手型ロボットを搭乗させ、各種レバー類等を操作。右:前後左右にカメラを設置左:人工筋肉(6軸12本)を使用した運転手型ロボットを搭乗させ、各種レバー類等を操作。右:前後左右にカメラを設置


加えて、ドローンも飛ばしている。重機に設置したカメラの映像だけを頼りに操作すると、どうしても距離感をつかみにくい。例えば10t級クローラーダンプのオペレーターは、「どのくらい無人バックホーに近づけば、バケットと荷台の位置が合うのか......」といった判断が難しい。それを補うのがドローンの俯瞰映像である。


一般的なドローンは無線だが、今回は有線ドローンを使用している。有線給電による連続飛行が可能になり、光ファイバー経由の低遅延非圧縮4K映像が、無人化施工を後押しするわけだ。


有線ドローン「エアロボオンエアー」(エアロセンス)を使用。電源から直接電力供給のため、長時間の飛行が可能だ。また、4Kの映像を非圧縮・リアルタイムで伝送できるため、今回のような重機の位置確認用にも向いている有線ドローン「エアロボオンエアー」(エアロセンス)を使用。電源から直接電力供給のため、長時間の飛行が可能だ。また、4Kの映像を非圧縮・リアルタイムで伝送できるため、今回のような重機の位置確認用にも向いている


「操作室」では、無人バックホーを操作。資格を持ったオペレーターが、無人バックホーに設置したカメラ映像と、有線ドローンの俯瞰映像を見ながら、操作端末により無人バックホーを器用に操る。


「操作室」では無人バックーを遠隔操作。約4kmも離れた現場にある重機を操作しているが、想像以上にスムーズに作業が進んでいる「操作室」では無人バックーを遠隔操作。約4kmも離れた現場にある重機を操作しているが、想像以上にスムーズに作業が進んでいる


作業現場の近くにある「監視室」では、10t級クローラーダンプを操作。こちらも資格を持ったオペレーターが、操作を担当している。ちなみに、両オペレーターは画面を見ながらそれぞれ操作しているわけだが、どうしても連携が必要な場面がある。重機の細かな位置関係の修正は音声で指示した方が的確なため、そのような場面では携帯電話を使用した。


「監視室」では10t級クローラーダンプを操作「監視室」では10t級クローラーダンプを操作


「監視室」では、無人バックホーの前方映像も表示される。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)による映像確認も可能である「監視室」では、無人バックホーの前方映像は3D、他は2Dにて表示される。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)による映像確認も可能である


「作業現場」と「操作室」は直線距離で約4km離れているが、この間は無線ネットワークを構築して対応した。指向性アンテナ使用時は最大10kmの長距離通信が可能となる、免許不要の5.6GHzのWi-Fiを使用し、高画質なカメラ映像と無人バックホーの操作電波を飛ばしたわけだ。


左・右上:「作業現場」と「操作室」がある浅間山出張所に高所作業車を配備し、それぞれが見通せるようにしてWi-Fiの電波を飛ばしている。右下:高所作業車のバスケットに取り付けられた無線LANルーター左・右上:「作業現場」と「操作室」がある浅間山出張所に高所作業車を配備し、それぞれが見通せるようにしてWi-Fiの電波を飛ばしている。右下:高所作業車のバスケットに取り付けられた無線LANルーター


4日間にわたる無人化施工は無事終了し、災害時における危険個所での応急復旧作業に向け、関係者一同、確かな手ごたえを感じた。今後、5Gネットワークが普及することにより、無人化施工の精度がさらに向上することに期待したい。


株式会社守谷商会 土木事業本部の北澤秀貴工事部長初めて本格的な無人化施工を実施した株式会社守谷商会 土木事業本部の北澤秀貴工事部長にお話をうかがった。「無人化施工に将来性を感じましたね。人手不足、作業員の高齢化といった問題の打開策になると確信しました。作業精度は問題ないので、オペレーターの習熟度が上がれば、十分に使えると思います。まだ課題もありますが、災害時にも活躍できるでしょう」(北澤工事部長)



タグ

アーカイブ

ページトップ