2021.09.14

5Gの普及を見据えた重機の遠隔操作 この1年で、リモートワークという言葉を聞く機会が急激に増えた。略してリモートと言われたりもする。リモートの主な意味は「離れた」「遠方の」「遠隔の」などで、これにコントロールをつけた単語「リモートコントロール」、すなわち「遠隔操作」が今回のテーマだ。

5Gの普及を見据えた重機の遠隔操作

無人化施工は一朝一夕には実現しない

昭和に社会人になった世代にとって、子供の頃のテレビのチャンネル切り替えはガチャガチャが基本。リモコンでピッ!とチャンネルを変えるのが当たり前になったのは、昭和50年代後半からだ。いまでは外出先から家電をON/OFFすることも可能。スマホのアプリからクルマのエアコンを操作して、乗り込む前に車内をヒンヤリさせておくことだってできる。


遠隔操作が普及すると、世の中はますます便利になる。それは日常生活に限った話ではない。厚生労働省はオンライン手術(遠隔手術)を重点領域に挙げているし、農林水産省もスマート農業を後押ししている。国土交通省は建設・土木の無人化施工はもとより、港湾や河川といった分野でも遠隔操作できるシステムを推進している。こういったICTを活用した取り組みを行う上で、今後の基盤となるのが総務省管轄の第5世代移動通信システム(5G)だ。


日本において5Gは2020年に商用化が開始され、徐々に利用が拡大しているが、普及まではあと一歩といった感じだ。エリクソン(世界有数のプロバイダー)が公表している"Ericsson Mobility Report,June 2021"によると、2026年にはモバイル経由のトラフィックの53%が5Gになるという。5Gの普及は目前なのである。


アクティオは無人化施工に積極的で、遠隔操作が可能な建機のレンタルに加え、5Gが普及するまでの橋渡しになるような技術の開発にも余念がない。


建設用無線操縦ロボット「アクティブロボSAM」は、既存の重機をオペレーターに代わって無線遠隔操縦するシステムだ。人工筋肉を使ったロボットを重機の運転席にセットし、無線周波数920MHz(ダイバーシティ方式)の送信機を使って、最大で約300m離れた場所からの操縦を可能にしている。


Wi-Fiと聞くと短距離通信のイメージが強いが、指向性アンテナを使用すれば最大10kmの長距離通信が可能となる、免許不要の5.6GHzのWi-Fiも存在する。アクティオは国土交通省の発注工事で、このWi-Fiを使った無人化施工のシステムを構築しており、高い評価を得た。

CSPI-EXPO2021では重機の無人化施工のデモンストレーションを行い、来場者の関心を集めたCSPI-EXPO2021では重機の無人化施工のデモンストレーションを行い、来場者の関心を集めた


今年5月に開催されたCSPI-EXPO2021では、専用の通信回線で会場(千葉)と約100km離れた佐野テクノパーク(栃木)を結び、アクティブロボSAMで重機をコントロールする技術を披露。こちらは5Gを使わず、既存の通信回線を利用してもほぼ遅延のない操作が可能で、人が入るには危険な現場などで「今すぐ」遠隔操作を行いたいなどのニーズに応えられる。そしてこの技術は5Gが普及した時代の無人化施工の高い可能性を予感させるデモンストレーションとなった。


災害時における危険箇所での応急復旧作業に向け、無人化施工は欠かせない技術だ。また高齢化により、腕のいいオペレーターが減少し続けているという現実もある。重機の遠隔操作、ひいては無人化施工を推進するためには技術開発に加え、人材の確保や育成も必要なのは間違いない。5G時代の到来に向け、業界が取り組むべき課題は多いのである。


※記事の情報は2021年9月14日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

建機用無線操縦ロボット アクティブロボSAM(レンサルティングミュージアム)

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