2022.05.18

「造園施工管理」技術検定試験問題を解いて仕事力アップ!【第3回:造園施設施工】 造園施工管理技術検定学科試験から、毎回1問ずつ取り上げて解説します。既に資格を取得されている方は復習として、これから試験を受ける方は勉強の補強として、チャレンジしていただければ幸いです。今回は造園技法について取り上げ、伝統的な日本庭園にみられる垣に関する理解を問います。(問題選定と解説/井上國博=住環境再生研究所所長)

「造園施工管理」技術検定試験問題を解いて仕事力アップ!【第3回:造園施設施工】

問題1

垣を示した下図のうち、建仁寺垣はどれか。

問題1


(令和3年度 2級造園施工管理技術検定第1次検定(前期)試験問題より)




解説:伝統的な日本庭園にみられる垣について

(1)龍安寺垣
背の低い足元垣の代表で、2重に重ねた割竹を組子*1にし、光悦寺垣のように菱形(ひしがた)格子を組み入れた竹垣です。割り竹を粗い目の菱形に組み、割り竹の束をのせたものです。


*1 組子:釘を使わずに木を幾何学的な文様に組み付ける木工技術のこと。和室の欄間や障子などにも用いられる。


龍安寺垣
(2)沼津垣

青割竹やしのぶ竹、葦などを網代(あじろ)状に編みこんでつくる竹垣です。箱根竹(細いメダケ)を網代模様に編み、静岡県沼津地方に多くみられることから、この名がつきました。「網代垣(あじろがき)」ともいいます。
沼津垣

(3)建仁寺垣
京都の建仁寺で初めて用いたという形式で、4つ割り竹を皮を外にして平たく並べ、竹の押縁(おしぶち)*²を横にとりつけ縄で結んだ垣です。


*2 押縁(おしぶち):部材を押さえるための細長い部材のこと。板状の部材同士の継ぎ目や端部にできる隙間を隠したり、ずれないように押さえるために使う。

建仁寺垣
(4)大津垣

孟宗竹や真竹などを割って平たくしたものを、表と裏交互に1本ずつ編み込んで作った竹垣です。 近畿地方で多く見られたことから、その名が付きました。書院と茶席の間などに好んで用いられます。
大津垣

ほかにも、垣にはさまざまな種類があります。ここでは、四ツ目垣、御簾垣、桂垣、光悦寺垣を取り上げます。

四ツ目垣
丸太を立て、その間に竹を縦横に渡し、すきまを方形とした竹垣です。四ツ目垣の変形種で、丸い竹を十字に組んだ上に、半分に割った竹をかぶせる金閣寺垣などもあります。
四ツ目垣

御簾垣
外観が御簾のように見えることから名が付いた竹垣です。 通常の作り方は、支柱に直径2cmほどの竹を1本ずつ積み上げていきます。
御簾垣

桂垣
細い竹穂を芯にして表面に少し太い枝を横使いし、押縁に丸竹2つ割りをかけた表裏のない竹垣で、桂離宮につくられていることに由来します。
桂垣

光悦寺垣
割り竹を粗い目の菱形に組み、割り竹の束をのせたもので、頂部がゆるい曲線を描きます。竹のしなやかさを巧みに活かして造られた透かし垣で、曲線の美しさが特徴です。京都の光悦寺にある竹垣で、本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ)*3の創作による路地の竹垣です。「臥牛垣(がぎゅうがき)」ともいいます。


*3 本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ):桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した芸術家であり茶人。
光悦寺垣

今回の設問の答え:3

4つ割り竹を平たく並べ、竹の押縁を横にとりつけて縄で結んでいるのが建仁寺垣の特徴なので、正解は(3)となります。


※記事の情報は2022年5月18日時点のものです。

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