2021.09.07

小型建機をICT化した「ブレード3Dマシンコントロール仕様」 ICT施工と聞くと、大規模な現場で大型建機が稼働しているイメージが強い。確かに現状はそうだが、中小規模の工事におけるICT施工の普及には、小型建機のICT化がカギを握るのだ。

小型建機をICT化した「ブレード3Dマシンコントロール仕様」

ICT施工の裾野を広げる小型建機

建設現場の生産性向上を図るため、国土交通省が2016年度より推進しているのがi-Construction(アイ・コンストラクション)だ。これは「生産性革命プロジェクト」の1つで、「ICTの全面的な活用」「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」「施工時期の平準化」という3つの柱からなる。いずれも重要な施策だが、核となるのが「ICTの全面的な活用」だ。


ICT施工は、建設生産プロセスである「3次元起工測量」「3次元設計データ作成」「ICT建機による施工」「3次元出来形管理等の施工管理」「3次元データの納品」のすべての段階においてICTを全面的に活用する工事を指す。まずドローン等で3次元の測量データを入手し、3次元の設計データとの差分を瞬時に計算。これで最適な施工計画を立案することができる。ICT建機での作業は、3次元の設計データ通りに自動もしくは半自動で進む。監督や検査は、ドローン等を使って現状の出来形の3次元データをごく短時間で収集し、施工管理や検査の労力を大幅に減らすことができるのだ。


ICT施工はその生い立ちから、公共事業で実施されるケースが目立つ。必然的に大規模工事が多いため、大型の建機をICT化する動きが活発だ。しかし、今回紹介する「ブレード3Dマシンコントロール仕様」は、かなり小型の建機である。


ベースはヤンマーのViO30-6で、バックホーとして穴を掘ったり、資材を吊ったり、またブルドーザとして地面をならしたりと、1台3役の活躍が期待できる働き者だ。このマシンのブルドーザ部分、つまりブレード(排土板)をTS(トータルステーション)マシンコントロール技術によりICT化。3次元の設計データに合わせて自動制御できるようにしたのが、ブレード3Dマシンコントロール仕様だ。

(左)ニコン・トリンブルのTSを使用。(右)ブレードの上に取り付けられているのがTSターゲット。TSが発した光波がここで反射してTSに戻り、電子的に解析して距離を測定する(左)ニコン・トリンブルのTSを使用。(右)ブレードの上に取り付けられているのがTSターゲット。TSが発した光波がここで反射してTSに戻り、電子的に解析して距離を測定する

操縦席にはコントロールボックスを設置。事前に3次元の設計データ(設計値)を読み込むと、施工時には重機の位置、設計情報、測位情報などが表示される操縦席にはコントロールボックスを設置。事前に3次元の設計データ(設計値)を読み込むと、施工時には重機の位置、設計情報、測位情報などが表示される


ブレードの動きをICT化した場合のメリットは、丁張りの設置が不要になることが第一に挙げられる。盛土施工箇所はICT建機のみで作業することが可能になり、測量作業者の負担を大幅に軽減できる。また同様に丁張りの設置が不要になることで、敷き均し時の補助作業員を配置する必要もない。これは接触災害防止に大きく貢献するため、安全面の向上も見込めるのだ。


小型ブルドーザは、歩道やコンビニの駐車場の敷き均し、野球場の外野、陸上競技場などで使用されることが多い。つまり現場が狭いため、ICT建機の導入により作業員の数が減らせることは、安全上の観点からメリットがある。また、この手の工事は地場の中小企業が受注するケースが多い。作業員の高齢化、人手不足に悩む中小企業は多いので、ICT建機の導入により、初心者オペレーターが作業しても熟練者並みのクオリティーが担保できるICT施工は、革命なのだ。


このようにICT化の波が、小型建機にも押し寄せてきた意義は大きい。今後、より一層の普及が進めば初期費用の低下も期待できる。小型建機のICT化により、ICT施工に拍車がかかることに期待したい。



▼ブレード3Dマシンコントロール仕様 小型バックホー


※記事の情報は2021年9月7日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

ブレード3Dマシンコントロール バックホー(アクティオ公式サイト)

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