2023.09.13

富良野に根ざして約50年、北央貨物運輸【後編】さらなる成長に向けてエリアを拡大 前編では北央貨物運輸の社長インタビューに始まり、同社のルーツとなる輸送部、大型車両の整備、板金塗装から二輪車の車検まで行える整備工場の詳細をお伝えした。後編では工務部、レンタル事業部、旭川営業所、農業法人の有限会社スリーシード、そして管理部門を掘り下げたい。

富良野に根ざして約50年、北央貨物運輸【後編】さらなる成長に向けてエリアを拡大

道路や河川、農業土木にも精通する工務部

北央貨物運輸は運ぶだけでなく、道路、河川、農業土木といった土工の請負作業も行う。それら一切を取り仕切るのが工務部だ。信岡浩一工務部長と村上善宏工務課長に話を聞いた。


信岡浩一工務部長(左)と村上善宏工務課長(右)工務部の信岡浩一工務部長(左)と村上善宏工務課長(右)


信岡「工務部ではオペレーターが重機での作業に従事しています。我々が1つの現場を受注すると、ダンプ土砂運搬、重機・ハウスほか機器のレンタル、クレーン作業、弊社のものだけではない現場に出入りする物品の輸送、整備など他部門にも受注が広がっていきます。各部門連携して包括した請負受注とすることも多いです。今作業しているのは、高規格道路(自動車専用道路)の施工と、畑の土をふるいにかけて石などを取り除く除礫(じょれき)作業です。この辺りは土地柄、除礫をはじめとする農業土木が多いですね」


バックホーに専用アタッチメントを取り付け、土をふるいにかけることで石などを取り除くのが除礫作業。バックホーやキャリアダンプは自社で保有し、重機の運搬、オペレーターも自社で完結できるのが強みバックホーに専用アタッチメントを取り付け、土をふるいにかけることで石などを取り除くのが除礫作業。バックホーやキャリアダンプは自社で保有し、重機の運搬、オペレーターも自社で完結できるのが強み


富良野がある上川地域は南北に200kmを超える細長い地域のため、気候条件に差異があることを反映して、稲作、畑作、酪農、畜産など幅広い農業が営まれている。そのため、多様な農業土木の需要がある。最近の傾向はあるのだろうか?


信岡「稲作地の区画整理が多いですね。広さ2町の水田2つを統合して、4町の大きな水田1つに拡大するといった具合です。これは国の政策でもあるのですが、農業の機械化、ICT化を推進するにあたり、狭い区画で機械が行ったり来たりしていては効率が悪いため、1区画を広げているのです。また、丘陵地の傾斜を平坦にする工事も多いです。やはり、なだらかな土地の方が効率的ですからね」


農業土木の最近の傾向として、機械化の効率を上げるため田畑の区画を広げる工事が多い農業土木の最近の傾向として、機械化の効率を上げるため田畑の区画を広げる工事が多い


複数の工事が同時進行する中、全ての現場のクオリティーを担保するのは簡単ではない。


村上「オペレーターの技量に差がありますし、操作する重機の得意不得意もあります。どの現場に、どのチームを送っても、満足のいく仕上がり、クオリティーを均一にするのは難しいですね。バックホー、ブルドーザー、キャリアダンプなど、やはり重機の操作は奥深いですし、センスも求められますから。そこをなるべく均一になるよう調整しています」


土地が広大な北海道ならではの工事はあるのだろうか?


信岡「大型ブルドーザーを使用する工事があります。排土板の幅が5mもあるとそのままでは輸送車に積めないため、現場に搬入する際は排土板を外して運搬します」


大型ブルドーザーを使う場合は排土板を外し、ラフタークレーンで輸送車に積み込む。全て北央貨物運輸の車両、オペレーターだ大型ブルドーザーを使う場合は排土板を外し、ラフタークレーンで輸送車に積み込む。全て北央貨物運輸の車両、オペレーターだ




業績アップの要となるレンタル事業部

北央貨物運輸にはレンタル事業部もある。本社棟にレンタル事業部のスペースが併設されており、工場の前には発電機が並び、近くにはバックホーなども見える。岡野健課長に事業内容を聞いた。


谷口裕幸執行役員営業部長(左)と岡野健課長(右)谷口裕幸執行役員営業部長(左)と、レンタル事業部 岡野健課長(右)


岡野「取り扱っているアイテムは一般的な建機、汎用機が大半です。バックホーなどの重機を大小合わせて150台、レンタカーを120台くらい保有しています。あとはアスファルトフィニッシャ、ローラー、発電機、水中ポンプ、ランマーなどを取りそろえており、整備もここで行います」


汎用機と汎用品を中心にラインナップ汎用機と汎用品を中心にラインナップ


北央貨物運輸は、お客様の要望に合わせて事業を拡大してきたという歴史がある。やはり地場に強いのだろうか?


岡野「そうですね。地元のお客様がメインです。繁忙期にはほとんどの重機が出払ってしまいます。戻ってきたら整備して完成品に仕上げるので、物も人もフル回転です」


重機の洗車も丁寧に行う重機の洗車も丁寧に行う


アクティオ出身の山田裕之取締役執行役員社長は、北央貨物運輸の事業拡大、エリア拡大の鍵を握るのはレンタル事業部だと語っており、現場もそれに応えようと努力を重ねている。


岡野「責任重大ですね。閑散期の回転率を上げるためには、富良野だけでなく、ほかの地域にもエリアを拡大するしかありません。アクティオグループに加わったおかげで、グループ内のさまざまな会社、地域から仕事をいただけるチャンスは増えました。また、アクティオの知名度を生かし、札幌や千歳、余市など、富良野の外での営業機会も増えています。すぐに仕事をいただけるとは思っていません。今は顔を売る時期です。とにかく種をまいて、芽が出て、実ることを信じて営業しています」


岡野課長は入社23年のベテラン社員だが、営業経験はまだ2~3年と日が浅い。そのあたりはアクティオ出身の谷口裕幸執行役員営業部長がしっかりとフォローしている。


谷口「現在は旭川営業所の営業担当が不在のため、その業務も本社でこなしています。営業を強化できたら旭川営業所を前線基地にして、新規獲得につなげていきたいですね。新しい取り引きが増えると、レンタル事業部だけでなく輸送部の負担も増えるため、社内的な体制を固めつつ、戦略を練る必要もあります。一度使っていただければ、リピーターになっていただける自信はあります」


工場内はきちんと整理整頓されており、完成品はまるで新品のような輝きを放っている。その雰囲気は工場というよりも、磨き上げられたガレージといった美しさだ工場内はきちんと整理整頓されており、完成品はまるで新品のような輝きを放っている。その雰囲気は工場というよりも、磨き上げられたガレージといった美しさだ




旭川営業所はエリア拡大の前線基地

北央貨物運輸は1995年4月、初めての営業所を旭川市の北東、愛別町に開設。愛別営業所として営業を開始した。2009年1月、愛別営業所を旭川市寄りの当麻町に移転させ、新たに旭川営業所として開設し、現在に至る。


旭川営業所。さすがは北海道、敷地が広大だ旭川営業所。さすがは北海道、敷地が広大だ


旭川営業所は上川管内の中部地域における営業を強化するための拠点だ。ダンプ10台、セルフローダー4台、トレーラー2台を中心に各種運搬業務のほか、重機やレンタカーなどのレンタルも行っている。


輸送部のダンプやトレーラーに加え、レンタル事業部の重機や汎用機も保有している輸送部のダンプやトレーラーに加え、レンタル事業部の重機や汎用機も保有している


車両整備担当の社員も常駐している車両整備担当の社員も常駐している


現在、所長は本社の谷口執行役員営業部長が兼務し、エリア拡大に向けて着実に準備を進めている。


谷口裕幸執行役員営業部長谷口裕幸執行役員営業部長


谷口「現在、旭川は好景気です。マンション建設が活発で、河川や道路の工事も多いです。新規の道路も工事していますしね。農業土木では、道北の上川地域は道東、道南に比べて機械化が遅れているため、区画の拡張工事は当分なくなりそうにありません。北央貨物運輸の富良野における知名度は抜群ですが、北海道全体でとなるとまだこれからですので、来たるべきエリア拡大に備え、着々と準備を進めています」


旭川営業所の皆さん旭川営業所の皆さん




ビート運搬のため設立した農業法人、スリーシード

北央貨物運輸のグループ会社として2004年4月に設立されたのが、農業法人の有限会社スリーシードだ。なぜ畑違いの農業法人を......と思われるだろうが、それには北海道ならではの理由があった。


砂糖の原料といえば、サトウキビを思い浮かべる方が多いと思うが、日本で生産される砂糖の約80%はビートが原料だ。ビートは北海道の基幹植物で、甜菜(てんさい)とも呼ばれ、国内で生産される上白糖やグラニュー糖の原料として栽培されている。このビートと北央貨物運輸の関係を髙見淳執行役員輸送部長に聞いた。


農業部門を担当している髙見淳執行役員輸送部長農業部門を担当している髙見淳執行役員輸送部長


髙見「富良野から北に100kmちょっとの士別市に製糖工場があるのですが、弊社はそこに富良野地域で生産されたビートを運搬しています。ビートの収穫は9月末から10月いっぱいくらいで、それをダンプとトレーラー合わせて約50台で12月いっぱいくらいまでかけて運搬します。クリスマスの時期に多い日で1,200t、通常は800tくらい運びます」


トレーラーによって運搬されたビートは、ビートパイラーという機械を使って降ろされるトレーラーによって運搬されたビートは、ビートパイラーという機械を使って降ろされる


北央貨物運輸がビートを運搬していることは分かった。それと農業法人の関係は?


髙見「士別の製糖工場へのビート輸送は弊社を含め生産地域ごとに5社が担当しているのですが、その昔、ビートを作付けする農家が減った時期があり、それをカバーするため、関わる輸送会社がビートの栽培まで手掛けるようになったのです。そのために設立された農業法人がスリーシードというわけです」


スリーシードはビートの栽培だけを行っているのだろうか?


髙見「ビートのほか、麦なども生産しています。畑は分散しており、トータルで38haほどあります。北央貨物運輸の中にはJAからの請負作業をしているセクションもあり、農家さんから青果物を受け入れ、出荷まで行っています」


スリーシードは計38haの畑でビートを栽培しているスリーシードは計38haの畑でビートを栽培している


農業部門は高齢者の雇用を生むセクションでもあり、北央貨物運輸を定年退職した社員の雇用を継続できる環境が整っているわけだ。




経理や書類作成、福利厚生の充実に努める管理部門

経理・総務・人事といった管理部門を取りまとめているのが、グループ企業の共成レンテム出身である西木裕貴取締役上席執行役員だ。北央貨物運輸のプロパーである袰主(ほろぬし)和仁総務課長と共に話を聞いた。


西木裕貴取締役上席執行役員(左)と袰主和仁総務課長(右)西木裕貴取締役上席執行役員(左)と、総務部 袰主和仁総務課長(右)


西木「私は山田社長と同じタイミングで北央貨物運輸に入社しました。入ってみると感心することが多かったですね。この人数で仕事をきっちり回して、売り上げも利益率も高かったですし。だからこそ、プレッシャーもありました。業績が落ちたりプロパーの人たちが辞めていってしまうようでは会社が骨抜きになってしまいます。業績、雇用は死守しようと必死でした。また、山田社長と私の使命は、ただ売り上げを2倍にするといったことではなくて、100年後、200年後にも残る会社にすることだと考え、そこを一番の目標としました」


そうした思いから着手したのが、働き方の改善、福利厚生の充実だった。


袰主「休日の取得、給与体系の見直しや福利厚生など、待遇はかなり改善しています。以前は、経理など管理畑で働いてきた私でも、工務部で人が足りなければ休日に監視員として出社するといったこともありました」


西木「この業種はきつい・汚い・危険という3Kイメージが強いので、そこは北央貨物運輸が成長する上で変えていかなければならないと思い、待遇改善に努めています」


普段、袰主課長はどのような仕事を担当されているのだろうか?


袰主「主に経理面と、役所関係に提出する書類の作成です。建設業や派遣業の各種許可申請、北海道庁に提出する公共工事の指名願いなどです」


西木「できるだけ各部門の事務仕事を引き剥がして、管理部門で処理できるようにしたいと考えています。例えば、見積書の作成などは数字だけ決めてもらえれば、こちらで作成できます。各部門の皆さんが本来の仕事に集中できるようになれば、必然的に効率が上がりますからね。そこは今後の課題だと思っています」


地域に貢献し、顧客の要望に応えながら着実に地位を築いてきた北央貨物運輸は、さらなる成長に向けて生まれ変わった。攻めに転じた北央貨物運輸の今後に大いに期待したい。


▼北央貨物運輸株式会社
http://www.hokuo-k.co.jp/


※記事の情報は2023年9月13日時点のものです。

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