2023.09.11

富良野に根ざして約50年、北央貨物運輸【前編】輸送から整備まで幅広い事業を展開 北海道富良野市。上川地域と呼ばれる道北内陸エリアで抜群の知名度、ブランド力を誇る会社がある。2021年12月からアクティオグループに加わった北央貨物運輸株式会社だ。その社名からは想像できないほど幅広い事業を展開している同社の強みとは何か? 富良野市にある本社を中心に取材した。

富良野に根ざして約50年、北央貨物運輸【前編】輸送から整備まで幅広い事業を展開

お客様の要望に応えて事業を拡大

十勝岳連峰の麓に広がる美しい丘陵風景やラベンダー畑。有名なテレビドラマのロケ地として、今なお訪れる人も多い富良野に本社を置き、1977年の創業以来、地域のお客様のニーズに応え、今では富良野になくてはならない企業として歴史を重ねているのが、北央貨物運輸株式会社だ。2021年12月からは、アクティオグループに名を連ねている。


その社名からも分かるとおり、北央貨物運輸のスタートは運輸業だった。まずは山田裕之取締役執行役員社長に話をうかがった。


山田「1977年2月創業の北央貨物運輸は、先々代がダンプ5台で運輸業から始めた会社です。1979年4月にはトレーラーとセルフローダーを購入し、建設機械運搬業に参入しました。同年5月には建設機械オペレーターを雇い、土木工事請負業も始めています。その後も1983年5月に建機レンタル業、1990年4月に北央レンタカー株式会社を設立して建設関連の車両レンタル業、同年同月にラフタークレーンを購入してクレーン事業に参入。2003年10月には北海道運輸局より指定自動車整備事業者として認定を受け、車検も取れる整備工場として事業を拡大しています。また2004年4月には農業法人、有限会社スリーシードを設立しました」


山田裕之取締役執行役員社長山田裕之取締役執行役員社長


年を追うごとに事業を拡大してきた北央貨物運輸だが、それらは全てお客様のニーズに応えてのことだった。


山田「弊社の企業理念は、"地域・地元に根ざして"です。地域の変化や要望を受け入れ、信頼を築き、育む。そのために安全を最優先とした上で、人材を育成し、設備を整え、お客様の期待に一つひとつ着実に応えていくことで、地域社会とともに成長してきました。ダンプで運搬を始めたら、建設機械も運搬してほしい。運搬だけではなく、施工もしてほしい......という具合です。結果的にお客様が必要とするあらゆる要望にワンストップ、オールインワンでほぼ全てに対応することができるようになりました。それが弊社の最大の強みです。ここ富良野市は小さな町です。近隣の大きな町は旭川市ですが、夏でも車で1時間以上かかります。雪深い冬だとそれ以上......。やはり富良野市で完結できるに越したことはない。そのために、弊社が地域に果たしている役割は大きいと感じています」


顧客のニーズに応えているうちに、売り上げ、雇用、知名度などさまざまな面で富良野を代表する優良企業となった。


山田「弊社の利潤だけを追求するようなことはできません。弊社に関わる皆様のことを考えながら業務を行っています。弊社は地域密着の企業です。弊社だけが儲かればいいみたいな考え方では、すぐにそっぽを向かれてしまいます。アクティオグループの一員となってからも、従業員や取引先など関係する皆さんにこれまでの会社の体制を維持、尊重するというアクティオの方針を理解してもらえるよう、細心の注意を払い、努めました。地域の各種団体に対しても同様です。弊社が所属している団体は商工会議所をはじめ建設業関連・運送業関連・農業関連・観光団体等々51団体あるのですが、それらの会合には全て顔を出すように心がけています。このほか、祭り事への協賛、地元少年野球チームに冬期ピッチング練習場を提供するなど、社会貢献にも努めています」


この看板から単なる運輸会社ではないことがうかがえるこの看板から単なる運輸会社ではないことがうかがえる




エリアを拡大し、さらなる飛躍を目指す

創業以来約50年、北央貨物運輸は富良野と共に歩んできた。地場に密着した企業であることは理解できたが、アクティオグループの一員となったことで、さらなる飛躍を期待されているのも事実だ。


山田「アクティオは今秋、グループ企業の共成レンテムと共同で千歳テクノパーク統括工場の運用を開始します。弊社はその物流、運搬業務を担当する予定です。人員確保など準備を進め10月中の始動を予定しています。その後も、機を見て増便させていきます。千歳の案件はアクティオグループとのシナジーを生むばかりか、運搬業務のエリアを拡大する足掛かりになると確信しています」


創業の礎であり、売り上げの柱でもある運搬事業を、より強固なものとする。その道筋はつきつつあるが、ほかの事業はどうだろうか?


山田「アクティオは建機レンタルを生業とする会社です。そのグループに入ったわけですから、建機レンタル業を強化しない手はありません。弊社の名刺にAKTIOのロゴが入った意義は大きい。アクティオの知名度により、富良野以外の地でも営業を掛けやすくなりました。建機レンタル業の業務拡大はこれからですが、青写真は描けています」


業務拡大のためには人材が必要であり、リクルーティングや雇用にも力を入れている。


山田「若い世代の担い手が不足しているのはここ富良野、弊社も同様で、公募のほかにも知人のつてを逃さずにたどるなど、あらゆる方法で人材確保に努めています。外部からの人材獲得と同様、社内の人材を外に出さない、雇用を維持することにも注力しています。例えば、年齢や体力的につらくなったら、軽整備や農業法人へ異動してもらうなど、配置転換を行い、雇用を守っています。これは弊社のためだけではなく、地域のためでもあるのです」


富良野市にある本社社屋。隣接する広大な敷地内に各部門が軒を連ねている富良野市にある本社社屋。隣接する広大な敷地内に各部門が軒を連ねている




ダンプやセルフローダー、トレーラーなどを運用する輸送部

北央貨物運輸のルーツとも言うべきセクションが輸送部だ。同社の社員の約半数を抱える大人数の組織でもある。大谷喜彦取締役執行役員部長、今野真人課長、高橋英寿課長のお三方に話を聞いた。


左から高橋英寿課長、大谷喜彦取締役執行役員部長、今野真人課長輸送部の皆さん。左から高橋英寿課長、大谷喜彦取締役執行役員部長、今野真人課長


大谷「私はダンプの担当です。弊社では本社、旭川(営)含め36台の10tダンプを運用しており、主な市場は公共事業です。春、夏、秋は土木工事の土砂運搬、冬は排雪です。秋は農作物の運搬も行います」


左10tダンプ10tダンプ


今野「私の担当は重機輸送がメインです。営業用車輛はセルフローダー14台、トレーラー8台(各用途別トレーラーシャーシ21台)、ウィング車(15tクラス)2台、平ボディ4台の計28台、ほか2~4tトラック数台を運用しています。弊社の重機だけではなく、お客様の重機も運びます。北は稚内、南は函館まで行きます」


(左)重機輸送用のセルフローダー、(右)トレーラー(左)重機輸送用のセルフローダー (右)トレーラー


高橋「私はラフタークレーンの担当で、25tが3台、70tが2台あり、専門ドライバーは4名です」


ラフタークレーン。手前2台が25t、奥が70tラフタークレーン。手前2台が25t、奥が70t


これだけドライバーと車両を抱えていると、まんべんなく運用するのは簡単ではないだろう。無駄のない運用のために、何か工夫していることはあるのだろうか?


大谷「そうですね。ドライバーには何でも運転できるように免許を取得するようお願いしています。大型、牽引、大型特殊があればベターです。大型特殊は重機の積み下ろし、除雪作業で必要になります。車両に関しては、平均的に走行距離が伸びるよう調整しています」


安全に運行するため、乗車前・乗車後の点呼は要になる。


今野「朝当番、夜当番を決めて、24時間対応しています。今はITを利用した遠隔点呼や業務後の自動点呼が認められているので、弊社でもシステムを導入しました。まもなく運用を開始しますが、そうすれば富良野市の本社で、インターネット回線を通じて旭川市にある営業所の点呼も行えるようになり、省力化を図れます」


ドライバーの点呼風景。手にしているのはアルコールチェッカーで、体温なども測定し、運転免許証も確認するドライバーの点呼風景。手にしているのはアルコールチェッカーで、体温なども測定し、運転免許証も確認する


冬期には気温が氷点下20℃を下回り、30℃を超える日も年に数度あり、2m近い積雪がある富良野地域。雪への対処も同社の重要な任務だ。道路の雪を道路脇に除ける「除雪」、除雪した雪を堆積場へ運ぶ「排雪」の両方を請け負っている。大型車両での雪道運転は特に気を遣いそうだが、やはり苦労は多いのだろうか?


高橋「夜間の除排雪は交通量も少なく、業務がしやすいのですが、日中の除排雪をすることが多い市道などでは、道幅が狭く、交通量もあるので、かなり気を遣います。冬期に向けて10月末には全車スタッドレスに履き替えるのですが、空荷のトレーラーやセルフローダーはダンプよりも荷重が掛からずスリップしやすいため、少々高価でも安全性の高いスタッドレスタイヤを手配するなどの対策に努めています」


排雪用のダンプだけでなく、除雪用の重機も全て自社で保有。オペレーターも社員だ排雪用のダンプだけでなく、除雪用の重機も全て自社で保有。オペレーターも社員だ


北央貨物運輸ならではの強みについては、次のように話す。


大谷「重機など荷物の輸送、運んだ重機のオペレーター、必要に応じてラフタークレーンの手配、施工まで。そして自社で重機や車両の整備もできます。こうしたことを自社で一貫して行えるのが最大の強みですね」


自社内での整備、熟練した自社ドライバーによる丁寧な運転。同社が使用した車両は中古車市場でも高い人気を得るという。では次に、これら重機や車両を整備する部門についてご紹介する。


乗務後の洗車風景。日々の手入れが車両を長持ちさせる乗務後の洗車風景。日々の手入れが車両を長持ちさせる




民間車検場を併設する車両整備部。小型から大型まで対応

北央貨物運輸は、車検整備を行える工場を完備している。自社で保有しているダンプやセルフローダーが約70台、北央レンタカーが保有している小型ダンプや平トラック、散水車、高所作業車が約200台、さらに社員や関係者の車両を整備するだけでなく、二輪車を含む一般車輛の整備も引き受けている。整備工場の責任者が大杉直之工場長だ。


車両整備部 大杉直之工場長車両整備部 大杉直之工場長


大杉「大型車両用が4レーンと、小型車両用が3レーンあります。このほか、板金塗装、各種加工を行うスペースもあります。弊社は北海道運輸局から指定を受けた民間車検場で、年間1,000台程度の車検を行っています。ここから旭川運輸支局までは1時間以上かかるため、弊社が地域に果たす役割は大きいと感じています。大型車両の車検整備を行える工場は、富良野では貴重ですしね」


民間車検場の指定を受けており、大型車両から二輪車まで車検が行える民間車検場の指定を受けており、大型車両から二輪車まで車検が行える


あらゆるものが凍ってしまう冬、北海道ならではの車のトラブルに対処するのも、同社の仕事だ。


大杉「よくあるトラブルが、朝一番に車のエンジンが始動しないことです。燃料が凍っちゃうんですよ。燃料をろ過するフィルター内で凍ることが多いので、それを新品に替えるのですが、それでもエンジンが掛からない場合があります。燃料配管内で凍っていると厄介で、車両をブルーシートで囲い、ジェットヒーターで車両全体を温めて溶かします。また、作業中の重機が油圧ホースをパンクさせることもあります。雪や氷で負荷が掛かり過ぎ、耐えられなくなってパンクするんですね。そういう場合は出張修理で対応します。氷点下での作業はなかなか大変です」


雪道は事故も多く、スリップして脱輪というアクシデントもある。それらに対応するため、整備工場は輸送部と共同でレッカーサービスも行っている。


大杉「弊社には大型車両を引っ張れるレッカー車も、脱輪した車両を引き揚げるラフタークレーン車もあります。自走できない車両はセルフローダーで運べますし、壊れた車両は全て自社で修理可能です。つまり、"北央に頼めば、全ての面倒を見てくれる"という体制が整っています。レッカーサービスは24時間対応ということもあり、地域貢献的な意味合いが強いですね」


車検からレッカーサービスまで守備範囲の広い整備工場だが、どのような課題、目標を持っているのだろうか?


大杉「アクティオグループに加わったので、横の連携を強化したいですね。例えば、近隣のグループ会社の車両を整備させていただくとか。そのためには人員を増やし、回転率を上げる必要があるので、そこが目下の課題です」


大型車両の整備スペースとして4レーンを完備大型車両の整備スペースとして4レーンを完備


(左)大型車両のブレーキをオーバーホール、(右)場合によってはレンタル事業部の重機も整備(左)大型車両のブレーキをオーバーホール (右)場合によってはレンタル事業部の重機も整備


大型車両の板金塗装も可能大型車両の板金塗装も可能


(左)加工部門もあり、専任の社員を配置している (右)環境に配慮した塗装ブースも完備(左)加工部門もあり、専任の社員を配置している (右)環境に配慮した塗装ブースも完備


後編では、工務部、レンタル事業部、旭川営業所、農業法人のスリーシード、そして管理部門の詳細をお伝えしたい。


※記事の情報は2023年9月11日時点のものです。


【後編】に続く

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