2023.08.29

地盤改良のエクセレントカンパニー、三信建設工業 アクティオのグループ企業として、地盤処理技術によりさまざまな事業分野の課題解決に取り組んでいるのが三信建設工業株式会社だ。今回はトップインタビューを軸に、同社の取り組みを深掘りしてご紹介する。

地盤改良のエクセレントカンパニー、三信建設工業

特殊基礎土木の分野でさまざまな技術を開発

三信建設工業は地盤に関わる特殊基礎土木の専門工事事業者として、国内外で多彩な事業を展開している。今回は東京都台東区にある本社を訪ね、山﨑淳一代表取締役社長と村井健一上席執行役員営業本部長にインタビュー。まずは山﨑社長に同社の沿革や特長、戦略などをうかがった。


三信建設工業株式会社の山﨑淳一代表取締役社長三信建設工業株式会社の山﨑淳一代表取締役社長


山﨑「弊社の創業は1956年11月です。創業者は『土と水』に主眼を置いた新しい特殊土木技術に挑戦することを経営の基本方針に定めました。もっとも、創業当初は資金的にも保有機械の面でも十分ではなかったため、一般土木工事も行いながら会社を運営し、その間に技術を習得したと聞いています」


どんな技術を習得してきたのだろうか?


山﨑「最初に取り組んだ技術は、地下水を揚げて掘削の際に水が出ないようにするウエルポイント工法。次に緩い砂地盤を固めるバイブロフローテーション工法、サンドコンパクションパイル工法などを習得し、最初の5年間で会社を軌道に乗せました。その後も薬液注入工法による止水、地中に遮水膜を設置するような工事、法面の保護を行う工事という具合にメニューを広げ、10周年を迎える頃には現在の会社の基礎が出来上がりました。13人でスタートした従業員も約100名になり、売上高10億円規模にまで成長しました」


ウエルポイント工法ウエルポイント工法は、吸水管にライザーパイプを取り付け、0.7~2mピッチで帯水層に打設し、真空力で地下水を吸引し低下させる工法(写真提供:三信建設工業)


現在、特殊基礎土木を専門とする施工会社は全国に数十社ほどある。その中で三信建設工業は、何を強みとして存在感を示しているのだろうか?


山﨑「60年間にわたって成長を遂げてきた中で、脈々と受け継がれてきた技術を大切にして、それを武器にしていこうという考えが根底にあります。加えて新しい技術の開発力ですね。自社単独というよりは、研究・専門機関と共同で技術開発を行っています」


どのようにして共同開発を進めているのだろうか?


山﨑「パートナーは大学の場合もありますし、専門機関に委託することもあります。弊社が主導した工法をはじめとして、日本独自の工法はたくさんあります。海外から導入した技術も、日本の状況に合わせてカスタマイズもします。いずれにせよ新しい技術、工法を開発し、また時には海外から採り入れ、実用化していくことで次の主力商品に育てていくのが弊社のビジネスモデルです。闇雲に規模を拡大するのではなく、あくまでも少数精鋭で技術を守っていく。そんなイメージですね」


島国である日本には山も海もあり、多種多様な性質の地盤が存在する。大陸と比較すると岩盤が少なく、地震が多いのも特徴だ。そういった点を踏まえて、山﨑社長は新入社員研修でよく次のような話をするという。


山﨑「ニューヨーク市マンハッタンのエンパイア・ステート・ビルディングの最頂部は443mもあります。これほどの超高層ビルが、90年以上も前に建てられたのです。マンハッタン島は岩盤なので、そこに超高層ビルを建てるのはさほど難しくありません。日本にそこまで高いビルはありませんが、弊社のそばにある東京スカイツリーは634mです。スカイツリーが立っている墨田区押上は軟弱地盤のため、特殊基礎土木が重要です。スカイツリーの基礎は約50mあります。日本は地盤的に厳しい国であり、だから専門会社は技術力勝負になります。地盤を改良できる技術があれば、事業として成り立つ。そのために最先端を走る技術が必要なのです」


普段、一般の人々が目にすることはない特殊基礎土木の世界。専門家から見た地盤改良の面白さ、奥深さとは?


山﨑「私は大学で土木を専攻しました。社会に出て思ったのは、教科書に載っていることは半分くらいしかないということ。あとは技術者、施工者が持っているノウハウ、経験がものをいいます。この業界は特にその傾向が強いのです。だからこそ、やりがいがあり、面白い。専門工事を突き詰めていくと、公益社団法人土木学会、公益社団法人地盤工学会といった研究の場にも参加できるようになる。これは技術者にとって、大きな励みになります」


工法は、都市が発達していく過程で変化していく。例えば地下鉄を造るにしても、発達初期は地上から掘削して、構造物を造ってから埋め戻す開削工法が用いられる。日本初の地下鉄、東京の銀座線がそうだ。都市が発達してくると開削工法は難しくなり、地下鉄は深度を増していく。トンネルの掘削にはシールド工法が用いられ、縦穴(立坑)を掘る際は地下水脈よりも深くなるため地盤処理技術が必要になる。つまり、都市が発達するためには高度な地盤処理技術が必須なのだ。アジア諸国の発達に伴い、三信建設工業は海外にも進出している。


山﨑「初めての本格的な海外進出は1991年の台湾です。台北支店を設置して30年以上が経ちます。その後、2010年に香港支店、2018年にタイ現地法人、2020年にシンガポール現地法人を開設しました。東南アジアの主要都市では地下鉄が積極的に整備されています。例えばタイのバンコクでは弊社の技術が存分に生かされています。チャオプラヤー川の下を通した地下鉄の案件はリピートオーダーでした。弊社の高い技術力が評価されたわけです」


タイ・バンコクでの地下鉄工事の様子(写真提供:三信建設工業)タイ・バンコクでの地下鉄工事の様子(写真提供:三信建設工業)




誰もできない工事を、やる

三信建設工業の躍進を支えている部署のひとつが営業本部だ。村井上席執行役員営業本部長には、担っている役割やミッション、またミッションを達成するための理念や施策などをうかがった。


村井健一上席執行役員営業本部長村井健一上席執行役員営業本部長


村井「営業本部は工事の受注を指導し、売り上げに貢献するのが一番の役割ですが、実は広報活動も重要なミッションです。まずは弊社を広く知っていただき、その上で技術力を評価していただかないことには受注につながりません。お客様のもとに通って顔を売るだけではなく、先方の提案に対して、より良くするための改善策をご提案できる技術的知識を持ち合わせていないと、弊社の営業は務まりません。実際、営業本部スタッフは、弊社の技術を理解・熟知し、検討・計画を行える人材ばかりです」


営業本部の中には技術営業部があり、日本国内外の8支店のサポートを行っている。


村井「首都圏・大都市圏では高度な技術を要する案件が数多く、これらの実績を戦略ミーティングで各支店と共有するとともに、新たな案件に生かせるように本社でフォローします。各建設コンサルタントさんやゼネコンさんでも、規模や内容によっては、本社や専門部署でのサポートが増えています。我々はこれらの客先との連携を十分に取り、各支店と協調しながら受注に結び付けています」


三信建設工業ならではの技術、工法にはどのようなものがあるのだろうか?


村井「唯一無二で先頭を切って行っているのは、やはりコンパクショングラウチング(CPG:静的圧入締固め)工法ですね。これは極めて流動性の低いモルタルを地盤中へ静的に圧入することで、周辺地盤を締固める工法です。設備がコンパクトなため、上空制限のある場所や既設構造物の内部など、狭い作業空間でも施工が可能です。実際、供用中の空港滑走路の耐震補強工事で使われています。実はこの工法、もともとは液状化対策ではなく、米国内での地盤沈下による住宅の傾きを修正するためのものでした。35年ほど前、当時の社長に命じられ、先輩と共に渡米して買い付けてきたのですが、まさか空港の液状化対策に使われることになるとは。発想の転換ですね」


コンパクショングラウチング(CPG)工法の施工風景(写真提供:三信建設工業)コンパクショングラウチング(CPG)工法の施工風景(写真提供:三信建設工業)


土木とは、人の暮らしを良くするもの。三信建設工業は土木の中でも「地盤」に特化した分野で数多くの特許工法を持ち、豊富な施工経験と高い技術力、創造力で、地盤改良に取り組んでいる。誰でもできる工事は誰かにお任せし、誰もできない工事を行う、それが三信建設工業なのだ。


営業本部には、技術への深い造詣を持つスタッフがそろっている営業本部には、技術への深い造詣を持つスタッフがそろっている


▼三信建設工業株式会社
https://www.sanshin-corp.co.jp/


※記事の情報は2023年8月29日時点のものです。

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