2022.10.25

コンバインドローラ用の後付け衝突軽減システムを開発 路面の締固め機械であるコンバインドローラは、車体が小さく、運転がしやすい上に、運転席からの視界が良好で、さらに車両自体に圧迫感が少ないことから、作業員がコンバインドローラに近づいて作業することも多いと聞く。こういった要因からコンバインドローラは巻き込み事故を起こしかねない。そうした建設現場における事故を防ぐため、アクティオが開発したのが、コンバインドローラ用の後付け衝突軽減システムだ。

コンバインドローラ用の後付け衝突軽減システムを開発

締固め機械でも死亡事故が起きている

自動車の世界では、新型車への緊急自動ブレーキ義務化が進んでいる。建設業界においても、建設現場における安全性の向上が求められているのが現状だ。


令和2(2020)年度における車両系建設機械及び高所作業車の種類別・事故の型別死亡災害発生状況を調べてみると、死亡者数は52名に上る。このうち、建設機械別では掘削用機械が19人(37%)と最も多く、次いで整地・運搬・積込み用機械が13人(25%)と続く。


建設機械の種類別 死亡者数(令和2年度)*公益社団法人 建設荷役車両安全技術協会 調べ建設機械の種類別 死亡者数(令和2年度)*公益社団法人 建設荷役車両安全技術協会 調べ


このような流れを受け、建設機械用の注意喚起システムや自動ブレーキなどが開発・販売されている。建設機械メーカーが標準採用するケースのほかに、市中に出回っている建設機械に後付けするタイプは少ない。


アクティオでは、以前から事故が多いバックホー(掘削用機械)に的を絞り、後付け可能な安全装置の開発に注力してきた。「バックしないバックホー」(2011年5月に共同特許取得)、緊急停止装置付きで作業者の安全を考慮した「スリーエスバックホー」(2017年特許取得)、スリーエスバックホーの改良版「フォーエスバックホー」などが、その好例だ。




人のみを検知して緊急停止

今回、アクティオが新たに開発したのはコンバインドローラ(前:鉄輪、後:タイヤ)用の後付け衝突軽減システムである。締固め機械である転圧ローラが活躍する現場では、転圧ローラがスピードを出して作業することはまずない。ゆっくり動いているため、危険な状況ではないように思えてしまうが、先に挙げた統計の通り、令和2年(2020)度は4名の方が亡くなっている。コンバインドローラよりも大型の転圧ローラの中には、建設機械メーカーが純正で衝突軽減システムを装着している機種もある。当時、コンバインドローラには採用機種がなく、また、アクティオが保有している台数としてはコンバインドローラのほうが多いため、今回、開発に踏み切ったわけだ。


建設機械は、緊急時の安全性と通常時の作業性を両立させる必要がある。過度にセンサーが反応し、作業が頻繁に中断したのでは仕事にならないからだ。大型の転圧ローラに採用されている衝突軽減システムの多くは、人も物も検知する。しかし、作業性を向上させたい場合は、物の検知を解除することも可能だ。ただし、解除スイッチを押し、解除中であることを知らせるため、警報が鳴り続けるのが一般的である。


アクティオが開発したコンバインドローラ用の後付け衝突軽減システムは、人のみを検知する。物は検知しないため、例えば壁の際を転圧するといった作業が可能になる。また移動時に使用する高速走行モードでは作動せず、あくまでも作業時に使用する低速走行モードのみで効く。


コンバインドローラ用後付け衝突軽減システム

今回開発したコンバインドローラ用の後付け衝突軽減システムは人のみを検知するため、壁に見立てたコーンの横ギリギリまで作業することが可能。人の検知は車両後方に付けられた人感センサーによって行っている今回開発したコンバインドローラ用の後付け衝突軽減システムは人のみを検知するため、壁に見立てたコーンの横ギリギリまで作業することが可能。人の検知は車両後方に付けられた人感センサーによって行っている


作動イメージは次の通りだ。まず後退での作業時、検知エリア内に人がいると判断すると、警報と黄ランプの点灯、運転席に設けられたモニター表示でオペレーターに知らせる。バック走行時の検知距離は8m(5mから減速開始)、検知幅は車体幅になっている。


人を検知するのは車両後方8mからで、検知すると黄ランプが点灯し、5mまで近づくと赤ランプが点灯し、衝突軽減システムが作動する人を検知するのは車両後方8mからで、検知すると黄ランプが点灯し、5mまで近づくと赤ランプが点灯し、衝突軽減システムが作動する


衝突軽減システムの作動状態は、運転席に設けられたモニターでも確認できる衝突軽減システムの作動状態は、運転席に設けられたモニターでも確認できる


作動原理は単純で、電動シリンダーによって前後進レバーを押し、ニュートラルに戻すと停止する。実際に緊急停止する際の人との距離は2~3mだ。"緊急停止"と聞くと、ガクンと止まるようなイメージを抱くかもしれないが、実際は緩やかに停止する。急に止まると仕上げ途中の舗装を傷めてしまうため、あえてこのような設定にしているのだ。


緊急停止は、後付けされた電動シリンダーによって前後進レバーをニュートラルに戻すことで行われている緊急停止は、後付けされた電動シリンダーによって前後進レバーをニュートラルに戻すことで行われている


しかし、前後進レバーをニュートラルにすることによって緊急停止させるため、停止した場所が傾斜しているとコンバインドローラが動き出す可能性がある。オペレーターが乗車していれば対処可能かもしれないが、確認のため降りてしまった場合は危険だ。そこで緊急停止した場合はパーキングブレーキが自動で作動する仕組みになっている。


ハンドルポストの右横に装着されているのがパーキングブレーキの操作ボックス。人を検知すると黄ランプが点灯し、緊急停止すると赤ランプが点灯し、パーキングブレーキが作動する。その解除は黄ボタンを押して行うハンドルポストの右横に装着されているのがパーキングブレーキの操作ボックス。人を検知すると黄ランプが点灯し、緊急停止すると赤ランプが点灯し、パーキングブレーキが作動する。その解除は黄ボタンを押して行う


この後付け衝突軽減システムは、コンバインドローラとして有名な酒井重工業の「TW354、TW504」に対応している。アクティオは今後、大型ローラ、もしくはホイールローダへの展開を検討しており、後方の視界確保が難しい建設機械の事故を少しでも未然に防げるよう努めていく。また、それがアクティオの使命だとも考えている。


※本装置は安全補助装置です。100%事故を防ぐものではございません。使用にあたっても従来通りの安全注意事項を必ずお守りください。



▼後付け衝突軽減システム搭載コンバインドローラ


※記事の情報は2022年10月25日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

後付け衝突軽減システム搭載コンバインドローラ(アクティオ公式サイト)

事業分野紹介「道路分野」(アクティオ公式サイト)

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