2021.08.24

解体現場でガラ処理が可能な「ジョークラッシャー」 鉄筋コンクリート構造物を解体する際に生まれるのが、コンクリート塊の「ガラ」。このガラを解体現場で効率よく処理できる機械が、可搬式のガラ処理機だ。特に規模が大きい解体現場での活躍が期待されている。

解体現場でガラ処理が可能な「ジョークラッシャー」

建設リサイクル法により、ガラ処理が変わった

建設業界ではコンクリートやレンガの破片、木の柱など、産業廃棄物や廃材全般を「ガラ」と呼ぶ。解体工事の現場では、主にコンクリート塊が「ガラ」だ。


その昔、ガラは最終処分場に直行し、埋め立てられていた。当然、最終処分場はひっ迫。また、処理費用を惜しんで不適切に処理されるガラも散見された。そこで、これらの解決策として、ガラを再資源化し、再利用する法律「建設リサイクル法」が2000(平成12)年5月に制定されたのだ。


建設リサイクル法の制定以降、解体現場で出たガラは処理場に運搬され、破砕処理を行い、再生砕石などにされるのが一般的だ。いっぽう、解体現場の規模が大きいほど、埋め戻しという作業が必要になる。ガラをそのまま埋めると建設リサイクル法違反となるため、処理場で破砕処理を行った再生砕石を埋めるわけだ。つまり解体現場からダンプでガラを運び出し、処理場で破砕処理を行ってからダンプに再生砕石を積んで、再び解体現場に戻す。コスト的に不利だが、解体現場に固定式の破砕処理機を設置するのは難しいため、ほかに方法がなかった。そこで、この無駄を改善するために生まれたのが、アクティオが導入した可搬式のガラ処理機「ジョークラッシャー」である。


ジョー(jaw)は英語で顎(あご)、クラッシャー(crusher)は固体を破砕する機械の意味だ。顎はチン(chin)という呼び名もあるが、ジョーは骨格、チンは外見を指す。つまり、顎のような骨格を持った破砕機で、ガラを噛み砕くわけだ。

ジョークラッシャーは見上げるほど大きい。車両重量は30tだジョークラッシャーは見上げるほど大きい。車両重量は30tだ


ジョークラッシャーの全長は12,950mm、高さは3,200mmもある。ガラはバックホーでフレーム一体型ホッパに投入。振動するロングフィーダで搭載専用破砕ユニットに送られる。ここがポイントで、下顎にあたる可動する部分がジョー歯だ。ジョー歯の調整幅は20~180mmとなっており、この幅を変えることによって出来上がる砕石の大きさが変化する。

(左)バックホーによりガラをフレーム一体型ホッパに投入。(右)ガラは振動するロングフィーダで搭載専用破砕ユニットに送られる(左)バックホーによりガラをフレーム一体型ホッパに投入。(右)ガラは振動するロングフィーダで搭載専用破砕ユニットに送られる

搭載専用破砕ユニット。ガラの奥側に見えるのが可動するジョー歯だ。この後、ガラはあっという間に噛み砕かれる搭載専用破砕ユニット。ガラの奥側に見えるのが可動するジョー歯だ。この後、ガラはあっという間に噛み砕かれる


搭載専用破砕ユニットで砕かれたガラは砕石となって下に落ち、ベルトコンベアで搬送。途中で永久磁石の磁選機により鉄筋は弾かれ、砕石と鉄筋に分別される仕組みだ。

(左)噛み砕かれたガラは下に落ち、ベルトコンベアで上方に運ばれる。(右)このローラーの奥に鉄筋を振り分ける永久磁石が設置されている(左)噛み砕かれたガラは下に落ち、ベルトコンベアで上方に運ばれる。(右)このローラーの奥に鉄筋を振り分ける永久磁石が設置されている

再生砕石に生まれ変わったガラ。粒の大きさにもよるが、毎時100トンの処理が可能だ再生砕石に生まれ変わったガラ。粒の大きさにもよるが、毎時100トンの処理が可能だ

選別された鉄筋は、驚くほどコンクリートの付着が少ない選別された鉄筋は、驚くほどコンクリートの付着が少ない


可搬式のガラ処理機は、アクティオが導入したクリーマン(ドイツ)のジョークラッシャー以外にも存在する。アクティオはなぜ、クリーマンを選んだのか? 決め手となったのが、処理能力の高さと圧倒的な低燃費だ。


破砕能力はジョー歯の調整幅によって変わるが、60mmの場合でも毎時95~105トン、85mmでは130~150トンと極めて高い。実際、撮影時にガラを投入すると、あっという間に噛み砕かれ、シャッターチャンスは一瞬しかなかった。


低燃費は、ハイブリッド駆動によって実現されている。この手の特殊機材は油圧によって作動させるのが一般的だが、油圧モーターは駆動の際に伝達ロスが生じてしまう。また油圧システムはメンテナンスコストもかさむため、このジョークラッシャーは走行部とジョー歯の調整にしか油圧を使っていない。搭載専用破砕ユニットは、流体クラッチを介したディーゼルエンジンで駆動。ロングフィーダやコンベア、磁選機は電動モーターによって駆動されている。こうしたハイブリッド駆動により、トータルコストダウンが図られているのだ。

ジョークラッシャーの移動は、リモコンによって行う。操作は解体事業部 解体埼玉工場の遠藤茂吉業務主事にお願いしたジョークラッシャーの移動は、リモコンによって行う。操作は解体事業部 解体埼玉工場の遠藤茂吉業務主事にお願いした

ロングフィーダや搭載専用破砕ユニット、ベルトコンベアなどは全自動、もしくは部分的にON/OFF可能。その操作は液晶パネルをタッチして行うロングフィーダや搭載専用破砕ユニット、ベルトコンベアなどは全自動、もしくは部分的にON/OFF可能。その操作は液晶パネルをタッチして行う


ジョークラッシャーの1号機は今年1月半ばに導入され、すぐに解体現場での稼働を開始。現在は4台を保有しており、大型プラントの解体現場での稼働も決まるなど、滑り出しは上々だ。使用したお客様からは「処理能力が高く、予定していた工期が短縮できた」といった声もいただいている。今後、より一層の活躍に期待したい。

今回お話をうかがった解体事業部の池田嘉統事業部長。ジョークラッシャーは高価な機材となるため、産業機械事業部とチームを組んで導入を検討したという。解体現場のみならず、鉱山向けの破砕機としての利用も想定している今回お話をうかがった解体事業部の池田嘉統事業部長。ジョークラッシャーは高価な機材となるため、産業機械事業部とチームを組んで導入を検討したという。解体現場のみならず、鉱山向けの破砕機としての利用も想定している



▼ジョークラッシャー


※記事の情報は2021年8月24日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

ガラ処理機/可搬式(アクティオ公式サイト)

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