2021.01.19

架空線の切断事故を未然に防ぐ「ダンプセンサー」 道路や鉄道などの工事で、依然として発生しているのが架空線の切断事故。電力や通信は重要なインフラのため、事故ゼロは喫緊の課題である。そこで注目したいのが、「ダンプセンサー」だ。

架空線の切断事故を未然に防ぐ「ダンプセンサー」

充電式、配線不要、マグネット装着

2016(平成28)年現在、日本には3,578万本もの電柱が立っている(図1参照)。世界に目を向けると、ヨーロッパやアジアの主要都市では無電柱化が進んでおり、ロンドン※1、パリ※1、香港※2、シンガポール※3では100%を達成。台北※4は96%、ソウル※5は49%という状況である。それに引き換え、東京23区※6は8%、大阪市※6は6%......。「なぜ日本では無電柱化が進まないのか?」という議論はさておき、日本が電柱大国であることは間違いない。

■図1 日本の電柱本数の推移

(出典)国土交通省のホームページ内の、主な施策>無電柱化の推進>データ集に収録されている「電柱本数の推移」(https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_03.html)をもとに作成(出典)国土交通省のホームページ内の、主な施策>無電柱化の推進>データ集に収録されている「電柱本数の推移」をもとに作成


これだけ電柱が多いと、道路の上には無数の架空線が張られているのが現状だ。電力や通信は重要なインフラで、これらのケーブルが破損すると社会に大きな影響を及ぼすのは目に見えている。だからこそ、道路工事の際は監視員や誘導員を配置するなどして細心の注意を払っているが、それでもバックホーの移動時や、ダンプトラックの荷下ろし後の荷台戻し忘れなどによる架空線の切断事故が発生しているのだ(図2参照)。


■図2 令和元年度 工事事故発生状況(発生形態別)

令和元年度 工事事故発生状況(発生形態別)

(出典)国土交通省関東地方整備局のホームページ内の、技術情報>工事の安全対策>関東地方整備局発注工事で発生した事故事例(速報値)に収録されている「令和元年度 工事事故発生状況(発生形態別)令和2年4月1日」をもとに作成(出典)国土交通省関東地方整備局のホームページ内の、技術情報>工事の安全対策>関東地方整備局発注工事で発生した事故事例(速報値)に収録されている「令和元年度 工事事故発生状況(発生形態別)令和2年4月1日」をもとに作成


そこで注目したいのが、「ダンプセンサー」である。これは架空線だけではなく、自走式の立体駐車場などでも有効なシステムで、ダンプトラックの荷台の傾きが設定した高さに達すると、「音」と「光」でドライバーに警告するシステムだ。構成は至ってシンプルで、傾斜検出センサーを荷台にマグネットで装着。コントローラーを運転席のダッシュボード等に設置すればOKである。傾斜検出センサーは絶対水平を取るため、傾斜地での使用も問題ない。


左:傾斜検出センサーはマグネットで荷台側面のアオリに装着。右:コントローラーは運転席に設置する左:傾斜検出センサーはマグネットで荷台側面のアオリに装着。右:コントローラーは運転席に設置する


充電式、配線不要、マグネット装着の「ダンプセンサー」は、あくまでも警告するシステムで、荷台の動きを止めるものではないが、架空線の切断事故を抑止する効果は大いに期待できる。また、大がかりな改造を必要としないため、レンタル車両向きのシステムとも言える。


本文中の主要都市の無電柱化の現状については、国土交通省のホームページ内の主な施策>無電柱化の推進>データ集に収録されている【欧米やアジアの主要都市と日本の無電柱化の現状】を参照した。
※1 海外電力調査会調べによる2004年の状況(ケーブル延長ベース)
※2 国際建設技術協会調べによる2004年の状況(ケーブル延長ベース)
※3 POWER QUALITY INITIATIVES IN SINGAPORE, CIRED2001, Singapore, 2001による2001年の状況(ケーブル延長ベース)
※4 台北市道路管線情報センター資料による台北市区の2015年の状況(ケーブル延長ベース)
※5 韓国電力統計2017による2017年の状況(ケーブル延長ベース)
※6 国土交通省調べによる2017年度末の状況(道路延長ベース)



▼傾斜検出システム ダンプセンサー


※記事の情報は2021年1月19日時点のものです。


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