オリジナル・共同開発商品
2020.07.03
現場マッチングアプリ「助太刀」とアクティオが協業 見えてくる新しい建機レンタルとは? 2020年6月、アクティオは建設現場に特化したマッチングアプリ「助太刀」を提供する株式会社助太刀と初の協業を発表した。この夏には助太刀アプリ内からワンストップの建機レンタルを開始する。これまでにはなかった、新しい建機レンタルのスタートだ。
スマートフォンが現場を変える
もはや、日常生活に無くてはならないスマートフォン(以下、スマホ)。スマホアプリによって、私たちのコミュニケーションも「出会い」も大きく変化した。人と仕事との出会いもまたしかり。紙媒体を使った求人、電話や書面での応募、そして面接といった手間を省き、アプリを通じてワンストップのマッチングが行われるようになった。
土木、建築の現場でもその流れは止まらない。その大きな潮流を担っているのが、株式会社助太刀(東京都渋谷区)が提供するマッチングアプリ「助太刀(すけだち)」だ。施工会社がこのアプリに求人を登録し、それを見た職人さんが応募する。チャットでの簡単なやりとりのあと、マッチングが成立、仕事が始まる。単に仕事を紹介するだけではなく、SNS感覚で会員同士が情報交換できるのも特徴だ。また、施工に必要な道具や資材を販売するショップ機能や、報酬の支払いを代行する機能までも提供している。サービスを開始して2年ほどの現在、アプリユーザー数13万事業者を突破している。
助太刀アプリとアクティオが協業
2020年6月9日、株式会社助太刀と株式会社アクティオが共同でオンライン記者発表会を開催した。アクティオと助太刀が協業し、助太刀アプリを通じて建機レンタルを提供することになったのだ。助太刀アプリ上で、レンタルの申し込みから決済までが完結する仕組みだ。これにより、レンタル建機と人との新しい出会いの場ができあがる。まずは横浜を中心とした関東圏で、宅配可能な小型機械のレンタルを開始する予定だ。
助太刀の目標は「建設業の課題を解決するワンストッププラットフォーム」になること。工事現場に必要なあらゆるヒト・モノ・コトのマッチングを行おうとしている。その大きな選択肢として現れたのがアクティオの手がける建機レンタルだったのだ。
建機レンタルのBtoC市場へ
今回の協業はアクティオにとってどんな意味があるのだろうか。このプロジェクトに関わるキーマン3人に話を聞いた。
プロジェクトを主導する、レンサルティング本部長 中湖秀典専務はこう語る。
中湖「今年の2月のことですが、News Picksというオンライン媒体で助太刀さんと鼎談(ていだん)したのが出会いです。もう、すぐに意気投合したという感じでした。協業を決めてからプレス発表までも1ヵ月ほどです。アクティオ内でも前例のないほどのスピード感でした。我々としては、現場の職人さんと直接やりとりできるのは大きな魅力です。これまであまりアプローチできなかったリテール層へしっかり切り込んでいけると思っています」
プロジェクトチームの一員で、レンサルティング本部 IoT事業推進部の藤澤剛課長も大きな可能性を感じているようだ。
藤澤「アクティオにとっては、まさにパラダイムシフトになる可能性があると思います。これまで典型的なBtoBのビジネスでしたが、アプリを使ってBtoCへとマーケットを広げることができるわけですから」
アクティオはこれまで比較的大規模な施工会社様を顧客としてシェアを広げてきたが、いわゆる一人親方や、個人の職人さんといったリテール市場は、まだほとんど手つかずの状態だった。今回の協業によって、この層をターゲットにすることが可能になるというのだ。助太刀アプリの登録者の中にこのような潜在顧客は8万人以上いると試算されている。
また、同じくプロジェクトチームに加わる、ICT施工推進課の日南茂雄課長は、業界の現状を踏まえてこう語った。
日南「土木・建築の業界は、他の製造業や流通業などに比べると色々な面で遅れている部分があります。スマホの発注や決済はどこの業界でも普通に行われていますよね。早くそこに追いつきたいという想いがありますし、建設業界の方々もみなさんそれを望んでいると思います」
デジタル技術を使った工事現場の合理化や最適化は、現場の高齢化も進む昨今、喫緊の課題になっている。助太刀アプリ+アクティオの取り組みもその大きな流れの中にあるのだ。
建機レンタルはアプリでどう変わるのか
アプリで建機をレンタルするというのは、実際のところ、何がどう変わるのだろうか。少し詳しく見ていこう。
■これまでの建設現場
従来、建設機械は現場を取り仕切る施工会社が発注し、用意していた。つまりアクティオが取り引きするのは現場をよく知る作業者ではなく、施工管理者なのだ。このため、大事をとって余分な機械を借りてしまうなどの無駄が発生するケースも多々あった。また電話やファックスによる受発注が主流のため、やりとりにも手間がかかる。
中湖専務の話によると、過去の例では500台の高所作業車を納品した現場に行ってみると、実際には半分も稼働していなかった、ということもあったという。現場監督が「足りなくなるよりは......」と過大な発注をしていたのだ。アプリによって「現場が必要な台数だけ借りる」ことができれば、このような無駄をなくせる。現場に合わせた機械の最適化が図れるのだ。
■建設現場のこれから
助太刀アプリを通してアクティオがやりとりするのは、施工会社ではなく機械を使う本人だ。何がどれだけ何日間必要かを熟知し、自分で必要な分だけ発注するため、無駄の生じる余地がない。またアプリ内で発注から決済まで完結するので、手間もかからず合理的だ。さらに現場に直接配送してもらう場合でも、発注時に現場の地理情報を共有できるため間違いがない上、住所のない現場にも配送依頼ができる。
アプリ+アクティオの未来の姿
良いことずくめの今回の取り組みだが、実はこれ、さらに大きな変化の入り口に過ぎないという。まずは地域限定で、レンタル品目数もひかえ目にスタートさせるが、その間にニーズ分析などを行い、次のステップにつなげていく予定だ。未来の話を聞いてみよう。
藤澤「次のフェーズは、全国展開をして現場に浸透させたいですね。その先はアクティオの配送や在庫管理を行う『基幹システム』とつなげていければと考えています。そうすれば、ユーザーが簡単に在庫状況を直接確認できるようになります。そして最終的にはエンジンを積んだ、より大型の機械類のレンタルを実現したいです」
日南「この試みが浸透していくと、他の建機レンタル会社さんも同じアプリ内で共存できるようになると思います。うちに在庫がなくても、他のレンタル会社をレコメンドできるとか。そうなってくると、レンタル建機の配送だけを請け負う新しい業態も誕生するかもしれません。業界全体が変わっていくと思います」
さらに先の未来を語るのが中湖専務だ。
中湖「例えば、アプリを通じて顧客の工程表が共有できると、今このタイミングでこの建機を借りているから、来週の半ばぐらいにはこれが必要になるのでは、といった先回りの提案も可能になります。またアクティオは建機を保有しているだけではなく、様々なレンサルティングの知見や技術、情報を持っていますし、教育施設もあります。建機のレンタルだけではなく、現場の方と『知識』『技術』のマッチングも可能になると思います。例を挙げると、建機をレンタルする感覚で施工書類の作成が依頼できる、という世界です」
アクティオではICT、IoTを使って現場を「見える化」するサービスや、様々な施工の自動化、最先端の測量のコンサルティングも行っている。これらのノウハウをアプリによって流通させる、新しいレンサルティングの世界が待っている。今回の小さなスタートは、未来のアクティオの姿を変える大きな一歩なのだ。
※記事の情報は2020年7月3日時点のものです。