2020.01.16

バッテリー工具 1個のバッテリーから広がる世界 2019年のノーベル化学賞は、わが国の吉野博士を含むリチウムイオンバッテリーの開発者に贈られた。バッテリーは近年急速にその性能を伸ばしている。かつての「非力」で短命、といったイメージはもう過去のものだ。現在のリチウムイオンバッテリーのパワーは大きく向上し、エンジン駆動が標準だったチェーンソーでさえバッテリーで動く時代になっている。

バッテリー工具 1個のバッテリーから広がる世界

バッテリーから広がる世界

マキタのリチウムイオンバッテリー(18V)。このバッテリーを使って80種もの工具や機器が動く。マキタのリチウムイオンバッテリー(18V)。このバッテリーを使って80種もの工具や機器が動く。


プラント関連の機器やコンベアなどを扱ってきたアクティオ小型機械事業部が、充電式バッテリー工具のレンタルに力をいれはじめた。近年、バッテリーの性能が飛躍的に高まり、バッテリーで動く工具が爆発的に増えているからだ。また、現場としても、コードレスならではの軽快な取り回しや、脱エンジンへのニーズが高まっている。さらに、作業者の高齢化や人材不足から、より簡便で性能の良い機材が必要とされ、それに応えるバッテリー工具が次々に開発されているのだ。

一昔前にバッテリー工具と言えばニッカド電池を使ったものが主流だったが、最近では高性能なリチウムイオンバッテリーにとって代わられている。リチウムイオンバッテリーは軽量で高電圧、大容量、さらに自然に電圧が下がってしまう自己放電も少ない優秀なバッテリーだ。現在のコードレス工具の標準的なバッテリーになっている。

今回、アクティオが注目したのは、工具メーカー大手のマキタが展開する「リチウムイオンバッテリーシリーズ」だ。同一のバッテリーで動く工具がシリーズでなんと80種以上もリリースされているのだ。



バッテリー工具展示場オープン

工種ごとに仕分けされたバッテリー工具がずらり並ぶ展示場。工種ごとに仕分けされたバッテリー工具がずらり並ぶ展示場。


2019年4月、千葉県野田市の小型機械事業部では、このマキタのバッテリー工具シリーズを大量に揃えた展示場をオープンさせた。全80種の工具のうち70種以上を展示している。うれしいのは、単に展示するだけではなく、実際に工具を試せる設備を揃えているところだ。バッテリーチェーンソーで丸太を切ったり、ドリルでコンクリートに穴をあけたり、ソーカッターで鉄板を切ったりと、実際に試してバッテリー工具の良さを実感できる空間になっている。

実際にバッテリー工具を試せる設備を用意している。実際にバッテリー工具を試せる設備を用意している。


この展示場、現在はアクティオの各支店の営業社員を対象に、バッテリー工具を体験してもらう場となっているが、ゆくゆくはユーザーにも解放する予定だ。この展示場を体験した営業社員からは「こんなに多くの種類があるとは!」「エンジンと遜色ないパワー」「静か」「自信を持っておすすめできる」といった声がよせられているという。




電気をレンタル

バッテリー4個と充電器のセット。この他、バッテリー1個、2個のセットがある。バッテリー4個と充電器のセット。この他、バッテリー1個、2個のセットがある。


小型機械事業部の取り組みの大きなポイントは、従来工具とセットで貸し出していたバッテリーと充電器を単独でレンタルするという点。バッテリー工具のメリットのひとつは、必要な個数のバッテリーを準備しておけば、バッテリーを取り換えるだけで作業が続行できるという点だ。本体を充電する必要も燃料を補給する必要もない。バッテリーのレンタルとは「電気(エネルギー)」をレンタルすることに他ならないのだ。

バッテリー工具を借りたい場合は、まず必要な個数のバッテリーと充電器を借り、必要な工具を選ぶ。もちろんバッテリーだけのレンタルも可能だ。

では、さっそく展示場にある実際の工具を動かしてみながら、バッテリー工具のメリットを見ていこう。



【パワフルで静か】 バッテリー式チェーンソー

バッテリーで動いているとは思えないほどパワフルなチェーンソー。23mlエンジンと同等のパワーでかつ3kgと軽量。エンジン始動のトラブルともサヨナラだバッテリーで動いているとは思えないほどパワフルなチェーンソー。23mlエンジンと同等のパワーでかつ3kgと軽量。エンジン始動のトラブルともサヨナラだ

バッテリー工具の良さには、パワフルかつ「静か」であることが上げられる。これを実証するために、バッテリーチェーンソーを動かしてみた。ご存じのように、従来のチェーンソーはエンジン駆動で、バイク並みの騒音が出る。しかし、バッテリー式のチェーンソーの動作音は実に静か。それでいて、展示場に用意された丸太をあっという間にバサリ切ることができた。これなら伐採現場の作業環境は大きく向上するだろう。



【コードレス化】 バッテリー式背負いクリーナー

フットワーク良く仕事ができる背負い式クリーナー。標準モードで2時間20分動作するフットワーク良く仕事ができる背負い式クリーナー。標準モードで2時間20分動作する

ビルメンテナンスの現場で、床の清掃にはクリーナー(掃除機)が欠かせない。清掃しながら動き回る必要があるため、最もコードレス化が望まれるもののひとつだろう。展示場にあったバッテリー式の背負いクリーナーも試してみた。本体を背負うため手元が軽く、もちろんコードレスなので自由かつ軽快に動き回ることができる。



【パワーアシスト】 バッテリー式運搬台

最大積載量130kg、最高速度3.5km/h。LEDライトも搭載している。この写真はパイプフレーム仕様だが、バケット仕様もある最大積載量130kg、最高速度3.5km/h。LEDライトも搭載している。この写真はパイプフレーム仕様だが、バケット仕様もある

高齢化や人手不足が進む作業現場。バッテリー機器には、「力を補う」パワーアシストの役割も期待されている。展示場を見渡すと、運搬車、いわゆる「ねこ」が眼についた。これもバッテリーで動くのだろうか? その通り、手で押す力をバッテリーで動くモーターが支援するものだった。これも、コードレスかつパワフルなバッテリーならではのものだ。



【技術アシスト】 バッテリー式鉄筋結束機

鉄筋結束の救世主、鉄筋結束機。満充電で3周巻きを6400回こなす鉄筋結束の救世主、鉄筋結束機。満充電で3周巻きを6400回こなす

建設現場の「ベテラン不足」が言われて久しい。職人さんが高齢化し、技術が継承されないままリタイアしてしまうことから、一定の技術水準が求められる作業も初心者を頼ることになってしまうのだ。そんな現場を支援するバッテリー工具も存在する。そのひとつが鉄筋結束機だ。従来手動で行っていた鉄筋の結束を、ワンタッチで行う工具だ。スピードも速く、仕上がりも均一にできる。



【電動ならではの機能】 バッテリー式草刈り機

25mlエンジンと同等のパフォーマンスを発揮。手元のコントローラのスイッチひとつで絡まった草を除去できる。アタッチメントが豊富なのもウリのひとつ25mlエンジンと同等のパフォーマンスを発揮。手元のコントローラのスイッチひとつで絡まった草を除去できる。アタッチメントが豊富なのもウリのひとつ

チェーンソーと同じく、エンジン駆動が一般的な草刈り機もバッテリー化の波が。パワフルで静かなのはチェーンソーと同じだが、注目すべきは「カラミトリ機能」だ。草刈り機の刃は、たびたび草が絡まり使用不能となる。エンジン駆動の場合、そのたびに作業を中断し、手作業で絡まった草を取り除かなければならなかった。しかし、この草刈り機はボタンひとつで逆回転させる機能がついている。これを使うことで絡まった草が取り除かれ、難なく作業を続けることができるのだ。



【災害対応】 USB充電用アダプター

アクティオオリジナルの充電器ケース。被災地に発電機が到着するまでの「つなぎ」という位置づけで、手で運べる軽さを優先して段ボール製としたアクティオオリジナルの充電器ケース。被災地に発電機が到着するまでの「つなぎ」という位置づけで、手で運べる軽さを優先して段ボール製とした

2019年、関東を襲った台風15号により大規模な停電が発生したことは記憶に新しい。災害と停電はつきものだが、バッテリーには災害時のバックアップ電源としての役割もある。展示場の中央に、見慣れない段ボールケースがあった。中にバッテリーが4個並んで収納されている。最近発売された、バッテリーからUSB充電するアダプターを使うためのセットで、アクティオ小型機械事業部で考案したものだという。これを避難所などに設置すれば、一度に8台のUSB機器が充電できるのだ。実際、前述の台風停電時にも活躍したという。他にも、バッテリー式のラジオや、送風機、ライトなど、災害時に活躍しそうな機器が多数あった。



バッテリーの良さをPR

バッテリーの健康診断を行うバッテリーチェッカー。バッテリーの健康診断を行うバッテリーチェッカー。

まだまだご紹介したいバッテリー工具があるが、キリがないので、残りはまたの機会としよう。最後に見せていただいたのがバッテリーチェッカーだ。バッテリーは充電を繰り返すと次第に劣化してくる。アクティオではレンタルしたバッテリーが返却されると、直ちにバッテリーチェッカーでチェックを行い、常に万全な状態で貸し出すことをモットーにしている。バッテリーも人間も健康診断が重要なのだ。

今回展示場を案内いただき、お話を伺ったのは、アクティオ小型機械事業部業務課の、高梁章友課長と貴志知朗課長。
今回展示場を案内いただき、お話を伺ったのは、アクティオ小型機械事業部業務課の、高梁章友課長と貴志知朗課長。

お二人とも、実に楽しそうにバッテリー工具の説明をしてくださった。最新のバッテリー機器のパワーとクオリティについては、まだまだ周知がゆきとどいておらず、今後この展示場を核に、PRに努めていく計画だという。


※記事の情報は2020年1月16日時点のものです。


※2024年1月の組織改編に伴い「支店」は「支社」に改編されています。



〈ご参考までに...〉

充電式バッテリー工具(アクティオ公式サイト)

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