2021.07.02

「土木施工管理技士」学科試験問題を解いて仕事力アップ!【第3回:法規】 土木施工管理技術検定学科試験から、項目ごとに、2級と1級の問題を1問ずつ取り上げて、解説します。既に資格を取得されている方は復習に、これから試験を受ける方には勉強の補強として、チャレンジしていただければ幸いです。今回は港則法について取り上げ、法規に関する理解を問います。(問題選定と解説/井上國博=株式会社住環境再生研究所所長)

「土木施工管理技士」学科試験問題を解いて仕事力アップ!【第3回:法規】

問題1

港内の船舶の航路及び航法に関する次の記述のうち、港則法上、誤っているものはどれか。

  1. 港内または港の境界付近における船舶の交通の妨げとなるおそれのある強力な灯火をみだりに使用してはならない。
  2. 船舶は、航路内において、他の船舶と行き合うときは、左側を航行しなければならない。
  3. 汽艇等以外の船舶は、特定港に出入りし、又は特定港を通過するときは、原則として規則で定める航路を通らなければならない。
  4. 船舶は、航路内においては、他の船舶を追い越してはならない。


(令和元年度 2級土木施工管理技術検定学科試験 No.42より)




問題2

船舶に関する次の記述のうち、港則法上、誤っているものはどれか。

  1. 船舶は、港内においては、ふとう、さん橋、岸壁、けい船浮標及びドラックの付近にみだりにびょう泊又は停留してはならない。
  2. 特定港内においては、汽艇等以外の船舶を修繕し、又はけい船しようとする者は、その旨を港長に届け出て指定された場所に停泊しなければならない。
  3. 汽艇等以外の船舶が特定港から出航する場合、その旨を港長に届け出を行い、停泊した区域から移動するための許可を受けなければならない。
  4. 港内に停泊する船舶は、異常な気象などにより安全の確保に支障が生ずる恐れがあるときは、適当な予備びょうを投下する準備をしなければならない。


(平成24年度 1級土木施工管理技術検定学科試験 問題A・No.61より)




解説:港内における船舶交通のルール「港則法」

港則法は、港内における船舶交通の安全及び港内の整とんを図ることを目的とした法律です。港則法を理解するには、まず用語の意味を知る必要があります。「汽艇等」「特定港」「投びょう」「右舷・左舷」「びょう地」「係船」「航路」などです。


学科試験でよく取り上げられる項目は、入出港及び停泊における港長への入出港の許可・届出、びょう地、修繕及び係船等について、航路内における投びょうや曳航について、航路外から航路へ又は航路から航路外への船舶の航行について、危険物を積載する船舶の航行、水路の安全、灯火等(汽笛、サイレン、私設信号)についてです。
では、それぞれの用語や項目について説明していきます。



●航路及び航法

〈航路〉
港内においては、下記の場合を除いては、投びょうし、又は曳航している船舶を放してはいけません。
・海難を避けようとするとき、運転の自由を失ったとき、人命又は急迫した危険のある船舶の救助に従事するとき。
・港長の許可を受けて工事または作業に従事するとき。


〈航法〉
港内での船舶の航路や航行の仕方については細かくルールが決められており、順守する必要があります。
・航路外から航路に入り、又は航路から航路外に出ようとする船舶は、航路を航行する他の船舶の進路を避けなればならない。
・船舶は、航路内においては、並列して航行してはならない。(図1参照)
航路内で並列での航行禁止図1 航路内で並列での航行禁止

・船舶は、航路内において、他の船舶と行き合うときは、右側を航行しなければならない。(図2参照)
船舶と行き合うときは右側を航行図2 船舶と行き合うときは右側を航行

・船舶は、航路内においては、他の船舶を追い越してはならない。(図3参照)
航路内で追い越し禁止図3 航路内で追い越し禁止

・汽船が港の防波堤の入り口又は入り口付近で他の汽船と出合うおそれのあるときは、入港する汽船は、防波堤外で出航する汽船の進路を避けなければならない。


〈その他〉
そのほか、汽笛に使用や、喫煙などについてもルールがあります。
・船舶は、港内においては、みだりに汽笛やサイレンを吹き鳴らしてはならない。
・何人も、港内においては、相当の注意をしないで油送船の付近で喫煙し、又は火気を取り扱ってはならない。



●用語解説

汽艇等 総トン数が20トン未満の汽船をいい、はしけ及び端舟(たんしゅう)その他ろかい(櫓や櫂)のみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する船舶。2016年の港則法改正までは「雑種船」と呼ばれていたが、20トン以上で港内で活動する汽船を除いて「汽艇等」と呼ばれることになった(図4参照)。
図4 港則法における「汽艇等」の対象範囲図4 港則法における「汽艇等」の対象範囲


端舟(たんしゅう)
航行推進力としてモーターやエンジンなどの機関や、帆を使わない小舟、ボート。


特定港
喫水(きっすい。水に浮かんでいる船舶の水面から船体最下部までの距離)の深い船舶が出入りできる港又は外国船舶が常時出入りする港であって、政令で定めるもの。2020年2月現在、特定港として定められている港は、函館港、京浜港、阪神港、関門港、長崎港、佐世保港など87港。


投びょう
船が停泊などのために、錨をおろすこと。


右舷、左舷
右舷は船尾から船首に向かって右側の方向を指し、左舷は左側の方向を指す。


びょう地
船が停泊する場所のことで、停泊する際には錨をおろす必要がある。


係船
港や岸壁などに船をつなぎ留めること。


航路
船舶などが海上又は河川を航行するための通路。



●入出港及び停泊の許認可

港湾の入出港及び停泊に関しては、船舶の種類や利用条件に応じて港長の許可や届出が必要となります。


〈港長の許可を要するもの〉
・特定港内での夜間入港
・特定港内での指定されたびょう地からの移動
・特定港内での危険物の荷役や運搬
・特定港内での竹木材の荷卸
・特定港内または特定法の境界付近での工事または作業
・特定港内での端艇競争その他の行事
・特定港内での私設信号の使用など


〈港長に届出を要するもの〉
・特定港への入出港・特定港内での係留施設への係留
・特定港内での修繕
・特定港内での定められた長さ以上の船舶の進水やドッグへの出入りなど


〈手続きの必要がないもの〉
・総トン数20トン未満の船舶などの入出港
・緊急避難等の場合の措置など




今回の設問の答え

問題1:2
船舶は航路内において、他の船舶と行き合うときは、右側を航行しなくてはなりません。よって、答え(誤っているもの)は2です


問題2:3
特定港から出港するときは、遅滞なく、港長に出港届を提出しなければなりませんが、停泊した区域から移動するための許可は、受ける必要がありません。よって、答え(誤っているもの)は3です。


※記事の情報は2021年7月2日時点のものです。

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