2019.06.14

i-Constructionが解る!【6】進化した3次元出来形計測 i-Constructionでは、施工後の出来形計測も従来の手法とは大幅に異なる。3次元測量によってさまざまな効率化がはかられているのだ。連載最終回では、i-Constructionにおける出来形管理と施工完了後の検査について見ていこう。

i-Constructionが解る!【6】進化した3次元出来形計測

3次元出来形計測

従来の出来形管理では、定められた断面を巻き尺やレベルで計測し、その値をその場でメモ、写真を撮り、後に事務所で出来形管理資料を作成していた。手作業が多く、データの転記ミスや計算ミスのリスクも起こりがち、もちろん時間もかかる。

i-Constructionの出来形計測では、さまざまな面で効率化がはかられている。キーになるのは、ここでもやはり3次元測量だ。測量には、現場の状況に応じて、ドローン(UAV)やレーザースキャナーが使われる。出来形計測では起工測量よりも高い精度が要求されるが、行う作業はさほど変わらない。現場の3次元計測データを短時間で取得できるため、効率よく計測を行うことができる。



施工精度の見える化「ヒートマップ」

ドローン(UAV)やレーザースキャナーで取得した現場の3次元計測データを専用ソフトに読み込み、発注元に報告する帳票を作る。i-Constructionの帳票では、施工の精度をわかりやすく可視化したデータを提出することになっている。これは「ヒートマップ」と呼ばれる。施工に使用した3次元設計データと、施工後の3次元計測データの結果を重ね合わせ、その高さの差分がどれだけあるかを色分けしたものだ。これなら、施工精度が一目で確認できる。3次元データの大きな利点である「見える化」がここでも活躍しているのだ。もちろん、差分の計算は専用ソフトが自動で行う。

起工測量と3次元設計データを重ね合わせ、その差分を色分けした「ヒートマップ」施工場所による精度の様子が一目でわかる(訓練施工のデータなので異常値が目立つ)。起工測量と3次元設計データを重ね合わせ、その差分を色分けした「ヒートマップ」施工場所による精度の様子が一目でわかる(訓練施工のデータなので異常値が目立つ)。

専用ソフトには、ヒートマップの作成の他、必要な帳票への数値の記入や、納品データを規定通りのフォルダー分けを行って保存するなど、便利な機能が備わっている。



締固め回数管理システム

i-Constructionでは、盛り土の品質管理においてもICTが活用される。それが締固め回数管理システムだ。トータルステーションやGNSSによって、締固め機械の位置を取得し、締固めの軌跡や、締固め回数をリアルタイムに運転者にガイダンスする機能を持つ。これによって、締固め不足や過転圧を防止するとともに均一な品質の高い施工ができるようになる。また、試験施工で得られた締固め回数を目標値として入力しておくので確実に施工でき、施工後の密度試験を省略することができるのだ。

GNSSを利用して締固めルートや締固め回数をガイダンスしてくれる締固め回数管理システム。GNSSを利用して締固めルートや締固め回数をガイダンスしてくれる締固め回数管理システム。




検査の効率化

施工終了後には、起工測量の3次元計測データや3次元設計データ、3次元出来形計測データを専用ソフトに読み込ませ、各種帳票と電子納品物を作成する。これらのデータを発注元に納品するとともに、書面検査と実地検査を受けることになる。i-Constructionにおいては施工後の発注者による検査も大きく省力化されている。

・書面検査時
書面検査では、施工終了後に納院した出来形管理データをパソコンに表示させて、3次元データ上で施工の精度を確認する。ヒートマップ上で視覚的に確認が可能だ。

・実地検査時
実地検査では出来形用トータルステーションや、GNSSローバーを使い、実際の現場で出来形計測を行う。施工に使用した3次元設計データと実測値の差分が規格値範囲内であるかどうかを検査するのだ。この時トータルステーションやGNSSローバーに3次元設計データを取り込んでおくことで、自動的に設計と現況との差分が表示される。ここでも3次元データを使った省力化がなされている。

GNSSローバー。設計データと現況との差分をその場で確認できる。GNSSローバー。設計データと現況との差分をその場で確認できる。

i-Constructionでは、図面をベースに点と線で管理されていた工事が3次元データによって「面」で管理できるようになった。3次元上の面は組み合わされて立体形状になり、それをあらゆる方向から確認することが可能になる。さらに、3次元起工測量によって得られた現況の地形と設計データ、そして施工後の3次元出来形計測のデータがあれば、どのような現場をどのように施工し、どのような精度で完成したかをあとでトレースすることも可能になる。こうしたデータを蓄積し分析し続けることで未来の現場がより効率よく、安全になっていくのだ。



i-Constructionで現場も人材も変わる

これまで6回にわたってi-Constructionの実際を見てきた。少子高齢化が進む建設現場を守る施策、i-Construction。ICTで現場を大きく進化させ、土木建設を製造業に近いものに変貌させつつある。国の公共工事から始まったi-Construction工事は、地方自治体へ、そして徐々に民間へと広がりをみせている。土木建設のICT化は待ったなしだ。これからは、現場の姿も、業界の構造も、人材の育成もICTを前提としたものに変わっていかざるを得ないだろう。

日南茂雄(アクティオ ICT施工推進課):この先、i-ConstructionをはじめとしたICT化の流れは基本路線としてこのまま続いていくでしょう。新しい技術も次々に開発されています。i-Construction適用の工種についても、新しい技術の登場とともに、広がりを見せています。アクティオではi-Construction、BIM/CIM含めてさまざまな支援体制を整え、現場のICT化に貢献していきたいと考えています。導入の際にはぜひご相談いただければと思います。

6回シリーズで、i-Constructionの実際を見てきた。アクティオ・レンサルティングマガジンでは、これからも土木建設とICTのさまざまな情報をお届けしていく予定だ。


※記事の情報は2019年6月14日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

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