2019.03.26

i-Constructionが解る!【2】i-Constructionを支える技術 土木の現場を大きく進化させるi-Construction。今回はこの新しい施工を支える先端技術について見ていこう。

i-Constructionが解る!【2】i-Constructionを支える技術

3次元測量がすべてのベースになる

土木工事の現場を大きく変えるi-Construction。それを支えるのが「ICT施工」だ。その中で使われているテクノロジーの中で、最も重要なものが3次元データを扱う技術だ。ICT施工では、現場の現況を測量した3次元の地形データ、図面の替わりになる3次元設計データ、施工の進捗を確認するための3次元データ、そして、施工終了後に測量する出来形の3次元データなど、さまざまな局面で3次元データが活躍する。これらを使ってコンピュータの中に現場を仮想的に再現することで、さまざまな作業を効率化できるのだ。まず、施工現場を3次元データ化する技術から見ていこう。

施工現場をPC内に再現するためには、まず測量をして詳細な地形データを手に入れなければならない。これを容易にしたのが、このところ進化がめざましい3次元測量技術だ。特にドローン=UAV( Unmanned aerial vehicle)を使って地形を広く、スピーディに3次元測量する技術の発展がめざましく、さまざまな場面で活躍している。

カメラを積んだ写真測量用ドローン

カメラを積んだ写真測量用ドローン


従来工法では二人一組の作業員が地形を測量しながら、木の杭などでできた「丁張り」で施工高さや方向の目印を作っていた。これは大変に手間がかかる作業で、幅10メートル、長さ5キロの道路ならおよそ一週間がかり。これをドローン測量に置き換えれば、作業時間はたったの日に短縮される。空中から広い範囲をいっぺんに測量できるからだ。大幅な生産性の向上が実現する。

ドローンを使った測量にもいくつか種類がある。測量方法としては歴史が古い「空中写真測量」も、ドローンによって最新テクノロジーに生まれ変わった。カメラを搭載したドローンを飛ばし、空中から地形の写真を大量に撮影。その写真をコンピュータ上で解析、合成して地形の3次元データを得る。

他に、レーザースキャナを用いる方法もある。これは周囲の地形にレーザー光線を照射して、光線が跳ね返ってくる時間を計測する。その時間差からレーザー光線があたった部分の3次元座標を求めるものだ。地上で使用することもできるが、ドローンに搭載して空中から測量することも可能だ。

こうして集めた3次元データをコンピュータで解析、補正して得られるのが「点群データ」だ。数多くの「点」で構成された地形データで、点の一つ一つが正確な3次元座標を持っている。従来の測量方法より遙かに精密なデータが得られるのだ。これは現場の地形の正確な模型のようなもので、あらゆる角度から確認できる。
3次元測量を行い、座標を持った点で構成された「点群」データ日南茂雄(アクティオ ICT施工推進課):ドローンで3次元測量する方法は、いくつかあります。空中写真測量もその一つですし、レーザースキャナをドローンに積んで測量する方法もあります。写真測量だと、草や木が茂っているようなところでは正確な地形は測量できませんが、レーザースキャナの場合は木が茂っていても、いくつかのポイントでレーザーが地面に届く隙間があれば、地形を測ることができます。秒間100万から200万ポイントを得られるので精度も高いです。ただ、得られたデータが細かすぎて後処理が大変なのと、価格が高いのがネックではありますね。




3次元設計データの作成

ICT施工では、設計図も3次元データを使用する。あらかじめ発注者側が3次元で設計し、そのデータを支給してくれれば簡単なのだが、現状では一般的な2次元の設計図面が支給される場合がほとんどだ。現在のところ2次元の設計図を元に、新たに3次元データを作成しなければならない場合が多い。といっても、いちからデータを作るわけではなく、支給された平面図、横断図、縦断図、線形図などをPCに読み込み、専門のソフトを使って組み合わせ、自動的に立体形状を作り出していく。

2次元の三面図を立体的に組み立てる事で3次元設計データが作成される2次元の三面図を立体的に組み立てることで3次元設計データが作成される


3次元の現況地形データと設計データがそろうと、さまざまなことが可能になる。それぞれコンピュータ上であらゆる角度から確認したり、比較したりすることができるので、とてもわかりやすいのだ。まるで精巧なジオラマを眺めるように、立体構造が把握できるようになる。

日南:3次元データがあれば、切り土、盛り土の位置もすぐにわかりますし、土量計算も自動で行えます。ただ、3次元の設計データを作る作業は、実はちょっとコツがいる作業で、しかも、これまで施工会社様の側にはなかった追加作業なんです。なのでここでつまずいてしまわれるケースがあります。ただ、これができるようになると、あとの施工も確認も格段に効率化するので、施工会社様には、ぜひノウハウを手にいれていただきたいですね。アクティオでは、研修などを通じてそのためのお手伝いも行っています。ピンポイントでお客様が知りたいところだけを研修する事もできるので、ご好評いただいています。

アクティオ ICT施工推進課によるi-Constructionのワークショップ

今、注目されている技術に、3次元の設計データを作成して、施工管理から施工、メンテナンスまで一貫して活用するBIM(ビム)=Building Information Modelingというものがある(日本では土工に適用する場合はCIM(シム)=Construction Information Modelingという名称を使うことが多い)。これは、設計段階から図面を廃し、最初から3次元データとして設計する手法で、構造物の形状だけではなく、素材の種類や強度など、さまざまな属性をデータに埋め込んで徹底的に活用していく。建築の設計、配管や鉄筋の設計、施工計画、安全対策、さらにはメンテナンス計画などさまざまな作業が一気通貫に効率化される。この手法が広まればi-Constructionの工程にシームレスに活用でき、i-Constructionによる生産性のアップも飛躍的に進むはずだ。



ICT建機が施工を効率化する

i-Constructionにおいて、製造業における産業用ロボットに相当するのが、ICT建機だ。従来ならオペレータの経験と勘を駆使しながら現場あわせをしてきた施工が、デジタル技術で楽に、スピーディに行えるようになる。これには二つのアプローチがある。マシンコントロールとマシンガイダンスだ。

マシンコントロール
マシンコントロールとは、建機の動きを半自動的に行う技術だ。例えばバックホーなら、まず、アームやバケットに指示を出すコントロールボックスに、3次元設計データを入力。これでバックホーのコントロールが半自動的に行えるようになる。そしてここでも、前述の3次元測量技術がカギを握っている。重機自身の位置をリアルタイムに把握する3次元の測位技術が重要なのだ。測位衛星(GNSS)を使って、動くバックホーをリアルタイムに測量し続け、今、3次元データ上のどの地点にいるのかを把握。即座にコントロールに反映するのだ。オペレータ―は、バケット位置を設計値近くに合わせ、コントロールボタンを押し、アームを前後に動かすだけで設計図通りに施工できる。難しい仕上げ作業も、初心者オペレータ―に任せることができるのだ。

オペレーションを圧倒的に簡易化するマシンコントロール重機(バックホー)単純なレバー操作だけで施工ができるオペレーションを圧倒的に簡易化するマシンコントロール重機(バックホー)単純なレバー操作だけで施工ができる


マシンガイダンス

ICT建機のもう一つの形として、マシンガイダンスがある。マシンコントロールでは、半自動的に重機が施工をしていくが、マシンガイダンスは、オペレータ―の操作を支援する、というイメージだ。例えば、バックホーなら、ブーム、アーム、バケットの操作の様子がモニターにリアルタイムに示され、設計値との差分を表示し、次にどうオペレーションすれば良いかを教えてくれる。この方法でも、正確な施工ができる上、丁張りも補助員も必要なく、大きく生産性がアップする。
丁張りも補助員も存在しない、マシンガイダンスによるバックホーの法面施工風景。コントローラーのガイドに従って施工していく丁張りも補助員も存在しない、マシンガイダンスによるバックホーの法面施工風景。コントローラーのガイドに従って施工していく


日南:マシンコントロールは高価なICT建機を使用しますが、マシンガイダンスなら、現在所有の一般的な建機に後付けできる機材もありますので、導入しやすいのではないでしょうか。弊社でも、外付け可能なマシンガイダンスの機材のレンタル、コンサルを行っていますが、丁張りが必要ない上に、現場敷地内に補助員が立つ必要がないので、安全管理面でも非常に有益だと、ご評価をいただいています。



出来形も3次元測量で

3次元データを元に施工するi-Constructionでは、施工後の仕上がりの管理も大幅に効率化される。工事の仕上がった現場を、再びドローンなどで3次元測量し、そのデータを3次元設計データと重ね合わせる事で、瞬時に施工の精度がはじき出されるのだ。また、出来形の実地検査においても、3次元設計データを入力した計測機器で測量することで、たちどころに施工精度が確認できる。

出来形測量の3次元データ(右)と設計データ(左)。この二つを重ね合わせ比較する出来形測量の3次元データ(右)と設計データ(左)。この二つを重ね合わせ比較する


3次元データを活用したICT施工を行うことで、工事を受注する側も発注する側も双方が効率化され、i-Constructionのメリットを享受することができる。しかし、従来施工からICT施工への移行には、コスト面やノウハウの蓄積など、施工会社様にとっては不安要素も多くあるに違いない。そこはどう捉えるべきなのだろうか。

日南:ICT施工では、i-Construction以外の工事でも十分効率化が図れます。また、すべてをICTで行う必要もないと思います。実際、施工は人力で行って、出来形の確認だけICTを使う、といったケースもあります。すべてICT施工で行ったとしても、作業を外注に頼ってしまったのではかえって費用がかさみ儲からなかった、ということになってしまいますし、自社にノウハウも貯まりません。要は現場の状況、施工会社さんのスキル、そしてコストとのバランスをみながら、適材適所にICTを活用し、できるところから、利益を生めるところから始めていく、ということが重要だと思います。



3次元データで土木が変わる!

今回は、i-Constructionのキーになる技術について見てきた。ICT施工においては、すべてのプロセスにおいて「3次元データ」が活用され、使い倒されているのが、お分かり頂けたのではないだろうか。実際、3次元データの存在の重要性は強調してもしすぎることはない。ICTを土木や建築に活かす時、もっとも土台になるものが3次元データなのだ。

次回からは、i-Constructionのプロセスを具体的に見ていこう。


※記事の情報は2019年3月26日時点のものです。


i-Constructionが解る!【3】へ続く



〈ご参考までに...〉

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