2022.07.28

〈ウェビナーレポート〉建設業のSDGs~推進のコツ~ レンサルティングマガジンの人気企画「建設業の未来インタビュー」から派生したウェビナーの第2弾「建設業のSDGs~推進のコツ~」が6月1日に開催された。建設業界も避けては通れないSDGsの推進について、専門家の基調講演のほか、脱炭素社会の実現に貢献するオフグリッドアイテムや次世代コンクリートなど、実際の取り組みのヒントとなる具体的な事例を紹介する。司会進行役はジャーナリストの茂木俊輔(もてぎ・しゅんすけ)氏。アクティオ本社(東京・日本橋)1階の「AKTIO Rensulting Studio」から放送されたウェビナーのサマリーをお伝えする。

〈ウェビナーレポート〉建設業のSDGs~推進のコツ~

基調講演:建設業界が取り組むべきSDGsとその進め方

基調講演では、法政大学デザイン工学部建築学科の川久保俊(かわくぼ・しゅん)教授に「建設業のSDGs」をテーマに、建設業界がなぜSDGsに取り組むべきか、また、具体的にどう取り組んでいけばよいかを解説してもらった。


法政大学デザイン工学部建築学科 川久保俊教授法政大学デザイン工学部建築学科 川久保俊教授


川久保教授は前提として「そもそもSDGsは国際条例ではなく、順守すべき法律でもない。しかし取り組むことによって多くのメリットがあり、さまざまなリスクを回避することもできる」とし、「激しい変化、不確実性、複雑性、曖昧さのあるVUCA(ブーカ)時代に建設業界が生き残りをかけて、SDGsを理解して取り組む意義は大きい」と説明した。


持続可能な開発目標(SDGs)



■すべてのゴールが我々に関係のあること

いっぽうで、「17のゴールを表面的になぞっても何をすべきかは見えてこない。関係ないと勘違いされがち」であることを、具体的な例をあげて解説。例えばゴール2の「飢餓をゼロに」は戦後すぐならまだしも、今の時代には関係ないと思われがちだ。しかし、17のゴールの一つひとつに続きがあり、ゴール2の続き(詳細)には「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」とある。


持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴール詳細


「日本では農業のあり方が非常に大きな問題で、農業従事者の平均年齢が60歳を超えていることで、持続可能な農業が脅かされています。現在のウクライナ国際紛争も、激化するとフードサプライチェーンが脅かされます。ですからゴール2も我々にとっては非常に重要な課題です」と川久保教授は話す。このように、すべてのゴールが我々に関係のあることとして捉えることが重要になる。


さらに、建設業界でSDGsを実践するには、「まずSDGsの構造を理解することが必要」として、SDGsの3層構造を図で示した。


持続可能な開発目標(SDGs)の三層構造


17のゴールはビジョンであり、その下により具体的な169のターゲット(行動目標)がある。さらにその下に、ターゲットごとに定められた約230のインディケーター(指標)があり、ターゲットの進み具合を評価するための尺度になる。このように、SDGsの推進には、ゴールだけではなく、ターゲットとインディケーターまで深掘りして、理解することが取り組みの前提になる。



■SDGsは共通言語。ストーリーを伝えることが重要

建設業界に対しては「設計、建設、運用、そして解体まで、各ステージでSDGsはさまざまに関係してきます」と述べ、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」やゴール13の「気候変動に具体的な対策を」などに貢献するアクションもあるとした。建設産業では、さまざまな業界関係者と協業していくのが常だ。「そこでSDGsという共通言語を活用すると、より友好的な関係性が築けます」と川久保教授は強調する。


他に最近では、地方創生SDGs金融のシステムができていることからも、企業がSDGsに取り組むメリットが多くなってきている。ではどう取り組んでいけばよいのか。


その一例として、川久保教授は企業の過去の取り組みをリストアップして関連するSDGsに紐づける「後づけマッピング」という方法を紹介。「後づけマッピング」を行うことで、自社の長所や課題の洗い出しが可能になるという。


SDGsの達成に向けて取り組む具体的な方法(例)


ただし「後づけマッピングはあくまでもファーストステップにすぎない」と強調する。次のステップとしては、以下に示す「建築環境SDGsチェックリスト」などを活用した、SDGsの達成に向けた取り組み状況の確認がある。SDGsのチェックツールはさまざまなタイプのものが出てきており、それらを使って、自社の取り組みを評価することが必要だ。


SDGsの達成に向けて取り組めているか確認する方法



■ストーリーで伝えることで共感を生み協働を促す

さらに川久保教授は、「ここからが重要」とした上で、「SDGsというのは言語です。ですからSDGsへの取り組みは、共感を生み、協働を促すストーリーとして伝えないといけない」と話す。


その成功例として、北海道・下川町の取り組みを例示。この自治体は、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」を目標に設定して、SDGsの取り組みをスタートした。取り組みの成果として、資源を循環させる循環型森林経営システムを開発したことで、ゴール12の「つくる責任 つかう責任」も同時に推進することとなり、当初はその2つに注力していた。


共感を生み、協働を促すSDGs取組ストーリーの構築(自治体の例)


そうして豊かな森を守ったことが、森林セラピーという形で町民や観光客の健康(癒し)につながり、ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」に貢献。また、環境教育のフィールドとしての活用も広がり、ゴール4の「質の高い教育をみんなに」などの推進に結びついた。


さらに、ゴール8「働きがいも 経済成長も」、ゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」といった雇用や新しいエネルギー開発にも連動していくことで、イノベーティブなまちづくりが進められている。


このようにSDGsに取り組むストーリーを作ると、そこに人や情報、お金が集まってくる。そして、ストーリーで伝えることで、共感を生んで協働を促す仕組みだ。



■自らの取り組みを発信するプラットフォーム

川久保教授を中心に開発・運営を行っているWebサイト「Platform Clover(プラットフォーム・クローバー)」では、さまざまなSDGs事例を検索することができ、マイページを作って自分たちの取り組みを発表することが可能。川久保教授は「SDGsという共通言語を使って国内外へ発信していただければ」と話す。


オンラインSDGsプラットフォーム:Platform Clover


最後に「SDGsというのは、今後何をすればいいのかを我々に教えてくれるコンパスのような役割と、関係者の皆さんと一緒に取り組んでいく時の共通言語としての役割を持っています。持続的な取り組みの推進剤として、時には企業風土の改革や事業機会の増加ももたらします。SDGsをうまく活用して、社会に貢献する、持続可能な世界を構築する、自社の利益を追求するなど、さまざまな角度から取り組んでいただきたいと思います」として基調講演を締めくくった。




セッション1:SDGsに貢献するアクティオの商品

続くセッション1では、株式会社アクティオ 産業機械事業部の川上修明(かわかみ・やすあき)氏がSDGsへの取り組み、環境に配慮したアクティオの商品ラインナップの中から、脱炭素社会に貢献する「オフグリッドハウス」や「オフグリッドカー」などを紹介した。


株式会社アクティオ 産業機械事業部 川上修明氏株式会社アクティオ 産業機械事業部 川上修明氏


川上氏は、「環境や社会との協調を前提とした持続的発展が、企業の成長の道と考えています。その点からも、アクティオにとって、SDGsへの取り組みは慈善や奉仕ではなく、"未来への投資"なのです」と語る。そして、建設機械レンタルというアクティオが取り組む循環型ビジネスの側面についても言及した。


アクティオのSDGs



■ハウスとカーでチャレンジ

お客様からも「アクティオが保有している機械の中で、SDGsにマッチするものはないか」「SDGs関連の商品を独自に開発しないのか」と多数の問い合わせや意見が寄せられることから、「建設業界でもSDGsへの関心や意識の高まりを感じると同時に、SDGsを現場にどう落とし込むか、という部分で、アクティオのレンサルティングの真価が問われている」という。


アクティオではさまざまな角度から検証した結果、課題解決のキーワードとして、脱炭素(ゼロカーボン)・クリーンエネルギー・環境対策の3つにフォーカスを当て、商品の開発を進めた。


「最も効果が分かりやすく、レンタル需要の即効性のあるハウスと車でチャレンジすることにした」と川上氏は話す。そしてアクティオのSDGsの中心アイテムとなったのが「オフグリッドハウス」や「オフグリッドカー」を含む「オフグリッドシリーズ」である。


SDGs関連商品開発の経緯


アクティオのオフグリッドシリーズ



■電力を「自給自足」するオフグリッドハウス

オフグリッドとは、電力会社の送電網につながっていない状態で、電力会社に頼らず電力を自給自足している状態を指す。オフグリッドハウスは、夏季の熱中症対策として、現場作業員の休憩室・緊急処置室の需要に応えること、カーボンニュートラルやSDGsの観点から自然エネルギーを利用すること、お客様の満足度向上に向け新たな付加価値を見出すことを目的に開発された。


電気工事が不要で、設置するだけで室内電源がすべて使用可能な連棟対応可能型オフグリッドハウスは、現場に合わせて連棟仕様が可能で、安全・長寿命・大容量のバッテリーを搭載しており、万が一蓄電不足になった場合は外部給電もできる。詳細は動画を見ていただきたい。


「オフグリットハウスは騒音対策や環境対策が必要な現場、短工期の現場、定期巡回の現場、燃料配達が困難な狭所、へき地の現場、SDGsへの取り組みを積極的に推進したい現場でより効果が発揮される」と川上氏。1カ月あたりのCO2排出量を比較すると、オフグリッドハウスがほぼゼロなのに対して、一般的な仮設ハウスでは約56kgとなる。年間に換算すると1棟あたり約670kgのCO2の削減ができる。


ご参考:CO<sub>2</sub>排出量の削減について▲画像クリックで拡大します



■車内で仕事が完結できるオフグリッドカー

オフグリッドカーは、移動するオフィスと位置づけて、車内で仕事が完結できることをコンセプトに開発された商品だ。ソーラーパネルとリチウムバッテリーで独立稼働できるオフグリッド仕様で、エンジンが停止した状態でも、備え付けのルームエアコン、冷蔵庫、AC100Vなどが使える。車両スペースがあればどこでも使えるため、短期間工事の現場や事務所の設置が難しい現場の打ち合わせスペースに最適で、真夏の熱中症対策として、休憩室や緊急救命室にも使用可能だ。


「営業車両の運転席でパソコンを使用している方を多く目にし、もっと快適に仕事ができるスペースを設けたいと思っていた」と現場での需要から、ビジネスの機会を見出した。オフグリッドカーはハイエース(トヨタ)仕様のオフィスカー、NV200(日産)仕様のレストカー、N-VAN(ホンダ)仕様のオフィスカー、トイレ付休憩車のバスがあり、現場や用途に合わせて選べる。


ハイエース仕様のオフィスカーの最大の特徴はポップアップルーフを採用し、車内で仕事や休憩をする際、屋根の圧迫感がなく快適に過ごせることだ。 屋根に太陽光パネルを装備、車内のバッテリーに蓄電させることで、エンジンを切っても100V電源を使用できる。バージョン2として、ポップアップルーフが水平に持ち上がり、より開放感のあるタイプも開発。今後はこちらのタイプを増産していく予定だ。


オフグリッドオフィスカー/ハイエース仕様 Ver2



■お客様の声を第一にSDGsに対応した商品を開発

いっぽう、NV200をベースにしたレストカーはトイレを搭載。N-VAN仕様のオフィスカーの車両は「車両サイズは小さくてもいい。レンタル料が安い車両はないか」というお客様の要望から制作した車両である。大型バスをベース車両としたトイレ付休憩車も、特定のお客様の要望によって開発した。ベッド、トイレ、テレビなどを完備しており、長期レンタルのスキームを組み、複数年の契約で出庫中だ。


「お客様の声を第一に、柔軟に、今後もいろいろな車両を展開していく予定です。さらに今回ご紹介した商品以外にもSDGs推進が図れるような商品を開発していきます」と川上氏はセッション1を締めくくった。



■視聴者からの質問

Q:今後アクティオではこのようなSDGs商品を増やしていきますか?


A:もちろんです。SDGsにつながる商品の開発やレンタル化は弊社にとって非常に重要な使命だと思って開発を進めてまいります。個人的にはオフィスカーの新車種の開発や、風力発電、水力発電をミックスしたレンタル商品の開発にもチャレンジしていきたいです。




セッション2:最先端の「次世代コンクリート」

セッション2では、東京大学生産技術研究所の酒井雄也(さかい・ゆうや)准教授をゲストに迎え、酒井准教授の研究テーマ、専門の1つでもある 「次世代コンクリート」について解説してもらった。


東京大学生産技術研究所 酒井雄也准教授東京大学生産技術研究所 酒井雄也准教授


現在さまざまな「次世代コンクリート」と呼ばれる、新しいコンクリートが開発されている。次世代コンクリートに共通するのは製造時に多くのCO2を排出するセメントをできるだけ使わないようにする、という発想だ。ウェビナーではまず酒井准教授が開発に取り組む次世代コンクリートの中でもユニークな、植物を用いた「ボタニカルコンクリート」について語ってもらった。


「ボタニカルコンクリートの原料は、廃木材とコンクリートがれきです。まずはそれらを砕いて粉の状態にして混ぜ合わせ、水を加えながら、熱をかけてプレスして作ります」


ボタニカルコンクリートの製造



■コンクリートがれきを再利用したコンクリート

ボタニカルコンクリートはコンクリートがれきと木材が混ざったもの、ということだが、他にも次世代コンクリートとして、コンクリートがれきを再利用して固めたもの、砂同士を直接固めたもの、などの開発も進めているという。


「コンクリートがれきを再利用したコンクリートは、粉砕して、熱を加えずに圧力だけを加えて固める、という製法で、耐久性、強度とも通常のコンクリートと同等以上であることを確認しています。もう1つの砂同士を固めた次世代コンクリートは、砂をアルコールと触媒を用いて化学的に接着するという方法です。加熱して一晩ぐらい放っておくとくっついて塊になります」


がれきをまるごと原料にしたコンクリート


触媒を用いて砂の化学結合を切断&再生


酒井准教授によれば、コンクリートを100%リサイクルする技術が過去になかったため、リサイクル方法の研究を始めたところ、それが次世代コンクリート開発につながったという。現在進行形で長期的な耐久性や強度を検証中とのことだが「はじめは駐車場の車止めなどの小型のコンクリート製品から試していき、最終的には家や、大きな建造物などに使っていきたい」と話す。


今後の展開



■次世代コンクリートで環境負荷の軽減へ

今後の可能性については、「コンクリートがれきは砕いてプレスするだけなので、大型トラックにがれきとプレス機を積んでいけば、解体現場で新しいコンクリートに作り直すことも十分可能と考えています。材料や原料の運搬の際にかなりのCO2が排出されますので、それを削減できるのは大きいのではないか」と期待を込める。


さらに次世代コンクリート開発の背景には、コンクリートの原料が世界的に不足してきていることや石炭の輸入価格の上昇など、建設材料の価格がどんどん上がってきている現状がある。酒井准教授は「新しい建設材料の参入ハードルは下がっている。近い将来、価格面でも勝負できるようになる」と予測する。環境負荷の低減にはなるが、コストがかかるとなると、発注者側も二の足を踏むが、そこがクリアになれば発注もしやすくなる。


世界的に砂不足が進行している


通常のコンクリートは固まるのに1カ月程度かかるが、コンクリートがれきをリサイクルした次世代コンクリートの製造は数分単位で可能で、製造の工期短縮にもなるという。強度などまだ検証中のことがあるにしても、コストが変わらず、工期短縮、環境負荷が抑えられるという点で、将来的には有力な選択肢になりそうだ。



■今までのコンクリートにはできなかった使い方の可能性

コンクリートがれきを100%リサイクルする今回の手法は世界で初めてのことで、「論文発表後から、国内外から問い合わせがきています」と酒井准教授。今後は、コンクリートがれきをリサイクルしたものに置き換えていくほか、「木粉を混ぜたボタニカルコンクリートは、通常のコンクリートより引っ張りや曲げに強い特性があるので、例えば、鉄筋コンクリートの鉄筋がなくても耐えられる可能性があるなど、今までのコンクリートにはできなかった使い方ができるかもしれないと考えています」という。


酒井准教授は今後の抱負と目標について、「もともとコンクリートは環境負荷が高い分野ですので、そういった問題を解決しつつ、持続可能な社会の実現に貢献できるようにしたい。まずは材料から研究して、未来につながるものにすることが抱負です」と語り講演を締めくくった。



■視聴者からの質問

Q:ボタニカルコンクリートは経年劣化しやすいということはありませんか?


A:ボタニカルコンクリートは木粉とコンクリート紛を混ぜるのですが、接着剤側が木粉になっていますので、木材程度の耐久性となります。ただ、木材も撥水材やさまざまな薬剤を塗ることで、寿命を延ばすことができます。ボタニカルコンクリートも同じように必要な使用期間によって、必要な処理を行って寿命を延ばすということが必要になります。今は木粉とコンクリート紛以外の別の材料を混ぜて耐水性を上げる、ということも研究しています。そのうちの1つが木材に含まれる「リグニン」と呼ばれる成分で、製紙業界で紙をつくるときに廃棄物として大量に出ます。このリグニンを混ぜると耐水性が向上し寿命を延ばせることが分かっています。



〈ご参考までに...〉

オフグリッドハウス(アクティオ公式サイト)

オフグリッドシステム搭載移動オフィスカー・レストカー(アクティオ公式サイト)

太陽光パネル搭載オフグリッドオフィスカー(アクティオ公式サイト)

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