2022.03.25

〈ウェビナーレポート〉建設業の未来スペシャル「建設DXの現状とこれから」 1月27日、「レンサルティングマガジン」の好評連載「建設業の未来インタビュー」のスペシャル版としてウェビナー「建設DXの現状とこれから」が開催された。司会進行役を務めたのは、「建設業の未来インタビュー」でおなじみの茂木俊輔(もてぎ・しゅんすけ)氏。建設DXの専門家がDXのメリットや推進のコツなどについて講演した。アクティオ本社(東京・日本橋)1階にオープンした「AKTIO Rensulting Studio」で収録されたウェビナーの概要をお伝えする。

〈ウェビナーレポート〉建設業の未来スペシャル「建設DXの現状とこれから」

基調講演:「中小建設業のDX~建設DXの実現は『人手不足』の見える化から~」

まず基調講演として、建設ITジャーナリストの家入龍太(いえいり・りょうた)氏に中小建設業がDXを推進するメリットとコツについて解説してもらった。日本の生産人口が減少する中、建設業でも人手不足が続くと予想されるが、今後は「いかに労働生産性を高めるか」が鍵になるという。

建設ITジャーナリストの家入龍太


重要なのは、徹底的に無駄を省くこと。「さまざまな機器を使ってスピーディーに仕事をする。さらに人間以外のロボットやAIに仕事を任せて、一つひとつの作業にかかる人員も削減する。要するに、肉体労働はロボットやAIに任せて、頭脳労働を人間が行う」。これが、家入氏の考える「これからの建設業の基本戦略」だ。

人手不足、コロナ禍での生産性向上戦略とは?クリックで拡大表示


テレワークの導入も、重要な戦略の一つ。すでに行政機関では立会検査のオンライン化が進められているほか、現場ではバックホーやクレーンなどの重機の遠隔操作の導入も進んでいる。

(左)発注者の立会検査をテレワーク化!エコモット(右)テレワークのための重機遠隔操作システムクリックで拡大表示




■人手不足に機器設置ロボの活用

人手不足対策としては、ドローンやプレハブ工法のほか、機器設置ロボの活用も有効な手段だ。例えば、アクティオがJFEエンジニアリング株式会社、岡谷鋼機株式会社と共同で開発した建設現場用施工ロボットを導入すれば、仮設・運搬に必要な人員を大幅に削減でき、クレーン作業に必要な玉掛け、クレーン免許も不要となる。人手を圧倒的に省エネ化することができる。

機器設置用ロボットの人手不足対策効果とは?クリックで拡大表示




■人的リソース不足の見える化

家入氏は、建設DXを進める上で最も大切なのは「人的リソース不足の見える化」だと言う。DXにより作業が効率化しても、待ち時間が増えては意味がない。ネットワーク工程表で必要人員のピークを見極め、ピークの山を崩すために必要な技術や工法を使う。こういった取り組みの末に「建設DX」は少しずつ実現されていく。

ネットワーク工程表と山崩しで人的リソース不足を見える化クリックで拡大表示




セッション1:アクティオのICT施工戦略

続くセッション1では、株式会社アクティオ レンサルティング本部 日南茂雄(ひなみ・しげお)氏に「アクティオのICT施工戦略」について語ってもらった。

株式会社アクティオ レンサルティング本部 日南茂雄氏株式会社アクティオ レンサルティング本部 日南茂雄氏


「一口に『建設DXの推進』と言っても、特定の企業、特定の業界だけで推進しても全体には広がりません。そこでさまざまな協業、協調を行い、世の中に建設DXを広めたいと考えています」として、アクティオが参加した建設DXのプロジェクトを紹介。


国土交通省関東地方整備局による2020年度の公募案件「建設現場における無人化・省人化技術の開発・導入・活用に関するプロジェクト」は、業界横断的に建設DXを推進するプロジェクトで、アクティオが中心的な役割を担った。「非衛星測位環境下におけるUAV計測及びAPIによる現場計測の省人化技術」を活用し、国立研究開発法人土木研究所の建屋内というGNSS(GPSなどの衛星測位システム)による位置情報が取得できない環境下でドローンを自律飛行させ、空中写真測量を行った。


このプロジェクトのキモは、それぞれの業界で競合関係にある建機メーカー、建機レンタル企業、ソフトウェア企業などの計11社が、業種・業界の垣根を越え建設DX推進のためにコンソーシアムを結成して協業し、取得した測量データを各企業が提供するクラウドサービスとAPI連携したことである。これにより、取得データをダウンロードして各企業のクラウドサービスにアップロードする手間が省け、ユーザーの利便性向上に大きく貢献した。

アクティオのICT施工戦略クリックで拡大表示


さらにアクティオは、2021年度に「施工データのAPI連携に関する協議会」にも参加。当初16社だった参加企業は現在、21社まで増えたという。

各協議会等に参画クリックで拡大表示


【会員一覧(令和4年1月1日時点・〔50音順〕)】
株式会社アカサカテック、株式会社アクティオ、株式会社EARTHBRAIN、エアロセンス株式会社、株式会社オプティム、株式会社カナモト、キャタピラージャパン合同会社、株式会社建設システム、コベルコ建機株式会社、サイテックジャパン株式会社、住友建機株式会社、株式会社ソーキ、ソフトバンク株式会社、株式会社トプコン、株式会社トプコンポジショニングアジア、株式会社ニコン・トリンブル、西尾レントオール株式会社、日立建機株式会社、福井コンピュータ株式会社、ライカジオシステムズ株式会社、株式会社レンタルのニッケン(計21社・団体、50音順)

【オブサーバー(令和3年10月22日時点)】
国土交通省総合政策局公共事業企画調整課
国土交通省国土技術政策総合研究所社会資本マネジメント研究センター 社会資本施工高度化研究室
国立研究開発法人土木研究所技術推進本部先端技術チーム




■施工主に最適なサービスを「レンサルティング」して提供する

一方、ICTの活用には課題もある。一般的にICT活用工事は、①起工測量 ②3D設計データ作成 ③ICT建設機械による施工 ④3次元出来形管理 ⑤3次元データの納品の5ステップで行われるが、日南氏は「この工程全てを業社に委託する施工主様が多く、施工主様側の技術が育たないケースが目立つ」と指摘する。

建設DXに向けたサービスクリックで拡大表示 出典:国土交通省「ICT活用工事の監督・検査について」(関東地方整備局) を加工して作成


そこでアクティオでは、サービスを細分化して提供することでこの課題解決に取り組んでいる。例えば、「起工測量は自社でやるが、ICT建機はレンタルしたい」というニーズには、3Dマシンコントロールや3Dレーザースキャナーなどを、コンサルティングと共にレンタルする。まさに「レンサルティング」するのだ。

ICT機器 レンタルラインナップクリックで拡大表示




■共同プロジェクト「BIM×ドローン」

アクティオは、株式会社竹中工務店、株式会社カナモト、株式会社センシンロボティクスと「BIM×ドローン」の共同開発も行っている。これはBIM上に設定した経路の通りにドローンを飛行させるプロジェクトで、3D飛行が可能なため、例えば階段の吹き抜けを通過する際に高度を数m上げることもできる。さらにドローンには障害物センサーなどさまざまなセンサーが搭載されているため、障害物の影響を受けずに自己位置の確定が可能。今後は建物の出来形管理や建築資材搬入後の資材管理や安全管理への活用が想定されているという。

共同開発クリックで拡大表示




セッション2:建設DXの現状とこれから~建設ドローンの今~

セッション2ではエアロセンス株式会社の佐部浩太郎(さべ・こうたろう)代表取締役社長をゲストに迎え、「建設DXの現状とこれから~建設ドローンの今~」をテーマに語ってもらった。

エアロセンス株式会社 代表取締役社長 佐部浩太郎氏エアロセンス株式会社 代表取締役社長 佐部浩太郎氏


エアロセンスはドローンのコア技術から生み出されるユニークなハードウェアとソフトウェアを一気通貫させ、「測量」「点検」「有線」「広域」の4つの分野で事業を展開している。本ウェビナーではこのうち、「有線」と「点検」についてご紹介いただいた。

エアロセンスのソリューションクリックで拡大表示




■1日中飛行可能で30倍ズーム撮影ができる有線ドローン

エアロセンスの有線ドローンには2つの特徴がある。1つは、ほぼ1日中の飛行が可能なこと。有線であることで電源供給に制限がない。通常の無線ドローンの飛行時間が約20分であることを考えれば、これがどれほど優れているかは言うまでもない。なお、断線などのトラブルがあった場合は瞬時にドローンに搭載されたバッテリーに切り替わり、5分ほどの飛行が可能な安全設計となっている。

AEROBO on Airクリックで拡大表示


もう1つが、30倍ズーム機能を持った防水・防塵仕様の4K高解像カメラを搭載していることだ。現場までドローンを飛行させなくても高解像度の画像を取得することができる。

有機ドローンの進化クリックで拡大表示




■有線ドローンで無人施工現場の安全を強化

アクティオと浅間山で行った共同プロジェクト「無人施工現場監視」では、これまでスポーツ中継やイベント中継などのエンターテインメント系の中継に活用してきた有線ドローン「エアロボオンエア(Aerobo on Air)」を、建設現場で活用した。


建機を遠隔操作する建設現場では、事故防止のために建機間の距離を適切に取る必要がある。しかし、無人施工現場において、コックピットからの映像だけではコントロールが難しい。そこで有線ドローンを上空90mの高さにまで上げて俯瞰映像を送り、建機同士の適切な距離を保ったのだ。


1日中作業が続く建設現場において、有線ドローンの有効性が改めて確認されたプロジェクトとなった。

無人施工現場監視(アクティオ)クリックで拡大表示




■「点検」には非GPS環境下でも自律航行するドローンを試作

エアロセンスは点検分野におけるドローンの活用も視野に入れており、複数のステレオカメラを装備してGPSが使えなくても自己位置を確認できるドローンを試作・開発中だ。屋内での設備点検では電波が遮蔽(しゃへい)されてGPSが使えず、自律航行が難しいという問題があり、それらを解決する必要がある。ドローン自体にLED照明も組み込み、真っ暗な環境でも周囲を照らしながら撮影を可能にしている。

屋内点検ドローン試作機クリックで拡大表示


すでにタンカーや倉庫内での点検テストを行っており、実用化されればトンネル、船舶、商業施設、ビルの外壁などの点検作業の効率化が進むことは間違いない。


「我々は、ドローンを使って現実世界をICTにつないでさまざまな作業を自動化していくことを目指しています。これはまさにDXのことです。我々の技術は土木・建設業界に大きく貢献できると思います」と佐部社長は言う。

建設現場で活躍するソリューションクリックで拡大表示




自社の目的にかなった「建設DX」を

本ウェビナーでは登壇者3名によって三者三様の視点から「建設DX」への取り組みが紹介された。それぞれの話題に共通して言えることは、点の技術を全体の流れの中に取り込み、少しずつ効率化を進めていくことが大事であるということ。ここで紹介した事例を参考にしながら、ぜひ自社の目的にかなった「建設DX」を推進していただきたい。




本ウェビナーに寄せられたご質問への回答

時間の関係で本番中にお答えできなかった質問について、こちらで回答させていただきます。


Q1:ICTを社内で推進していくために社員教育を行いたいが、どうしたらよいでしょうか? 重機メーカー系のセミナーなどには参加させているが、スキルアップしているのか不明。効果的な教育を行うことはできますか?


A:アクティオでは、お客様が身につけたい必要なスキルに応じて、教育を行うことが可能です。例えば、3Dデータ作成方法から、3D測量、ICT建機での施工方法や管理手法などについての教育プログラムをご提供いたします。


Q2:中小建設業におけるi-Construction、ICT施工の進め方について教えてください。具体的にどのような導入の方法があるのか知りたいです。


A:レンサルティングマガジンのこちらの記事でもご紹介しています。参考になれば幸いです。

▼小型建機をICT化した「ブレード3Dマシンコントロール仕様」
https://magazine.aktio.co.jp/news/20210907-1150.html

▼ICT化が着実に進む工事現場。3次元データの活用が普及のカギを握る
https://magazine.aktio.co.jp/trend/20210112-1657.html

▼《まとめ》i-Constructionが解る!
https://magazine.aktio.co.jp/trend/20200729-1542.html


※記事の情報は2022年3月25日時点のものです。



〈ご参考までに...〉

AKTIO Rensulting Studio(アクティオ公式サイト)

事業分野紹介「i-Construction(ICT施工)」(アクティオ公式サイト)

ブレード3Dマシンコントロール バックホー(アクティオ公式サイト)

3Dレーザースキャナー SX10(アクティオ公式サイト)

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